一般的な知識として「古い戸籍を辿って取得していくと家系図を作ることができる!」ということまではご存知の方も多いと思います。でも理屈では理解していても、戸籍は普段の生活で頻繁に取得するものではないですから、どのように取得・請求していったらいいのかわからない方がほとんどではないでしょうか。
家系図は初めてだけど、親の相続手続等で戸籍は取得した経験がある!という方も多いかと思います。しかし、覚えておいていただきたいことは、相続手続を目的とした戸籍の取り方と、家系図作りを目的としたものとでは方法や難易度が大きく変わってくるということです。単純に戸籍を取得する量が大きく変わってくるため、相続手続よりも家系図作りを目的とした戸籍取得の方が難しいことが大半です。そこでこの記事では、家系図作成専門会社である私たちが家系図作りに特化した戸籍の取り方を解説していきます。
目次
戸籍を辿って家系図を作るとは?
「戸籍を辿って家系図を作る」ということは、以下の「取る」「読む」「書く」3つの作業に分類できるため、解説ページも作業ごとに分かれています。この記事で解説するのは「1.【取る】市役所等の役所から戸籍を取得する」作業です。他の作業についてはそれぞれの解説ページをご覧ください。家系図作りは奥深く、どの記事もとてもボリュームが多いので、ページをお気に入り登録をして辞書代わりに活用することをオススメします。
<戸籍から作る家系図>3つの作業の分類
1.【取る】市役所等の役所から戸籍を取得する
家系図の調べ方・戸籍の取り方をプロが詳しく解説します!|家樹-Kaju-
2.【読む】取得した戸籍を読み込む(判読)
3.【書く】戸籍から得た情報を元に家系図を書く(描画)
この3つの作業を反復継続して行うことで、家系図ができることになるため全ての作業をセットで考えるようにしてください。なぜ反復継続しなければいけないのかというと、自分の先祖の戸籍は1ヵ所の役所で集まることはほとんどなく、全国の各地の役場に散らばって保管されてしまっているからです。そしてこのことが戸籍の取得を難しくしている根本的な原因になっています。
事前準備も大切!
家系図を作るためには準備も大切です。戸籍を取る上で一番大切なのは、どの範囲の戸籍を取得していくのかを決めることです。どの範囲までの家系を調べるかによって作業量が大きく変わってくるため、私たちのような家系図作成業者の料金プランも調べる家系の数によって分かれていることが通常です。
【動画あり】家系図セットの料金・プラン| 家系図作成の家樹-Kaju-
「自分の先祖は全部調べたい!」と思っても、はじめは欲張らずに自分の名乗っている名字の家系の戸籍を辿っていき、順番に他の家系の戸籍を取得していく方法がスムーズです。小さなゴールを設定しながら、根気よく作業を進めるようにしましょう。
<ステップ1>戸籍を取るための事前知識
1.自分の本籍地を確認する
戸籍で作る家系図の作業の内容を把握したら、さっそく戸籍を取る作業に挑戦してみましょう。自分の戸籍は、自分の本籍地の役所に請求する必要があるため、戸籍を取るためには、まず自分の「本籍地」の役所(自治体)を把握しておかなければなりません。少し前までは免許証に「本籍」が記載されていたため、自分の免許証を見るだけで本籍を確認することができましたが、今では記載されなくなった(ICチップの中の情報になった)のため自分の本籍がわからない方が増えているといわれています。
大抵の場合は自分の現住所か実家が本籍地になっているものですが、本籍地をどこに置くかルールがないため、微妙に住所表記が違っていたり、全然見当違いの場所が自分の本籍地である可能性もあります。本籍地がわからない場合は、自分の「住民票(の写し)」を取得して確認する方法が最も手軽です。住民票は自分の住所地の役所で取得することができるので、遠方まで行かなければいけないこともありません。自治体によって申請書の様式は異なりますが、一般的には必要な内容の記載について、本籍地にチェックをすれば、本籍地が記載された住民票を取得することができます。
2.実際に自分の戸籍謄本を請求してみる
自分の本籍地がわかったら、実際にまず自分の戸籍を取り寄せてみましょう。自分の先祖の戸籍を取得したい場合でも、自分の戸籍は参考資料として必要になりますので確実に取得しておきましょう。
本籍地が遠方の場合はどうする?
ここで問題となるのが、本籍地が遠方の場合です。戸籍は本籍地のある市区町村の役所で取得するわけですが、父方の実家や自分にとっての実家に本籍地があって、今住んでいるところから遠いケースはよくあります。だからといって、時間をかけ、交通費を負担してその役所に直接請求しなくてはいけないわけではありません。
戸籍は郵送でも請求できる!
一般の方にはそこまで知られていないことですが、実は戸籍は郵便で取り寄せることができます。これは自治体ごとに異なるサービスというわけではなく、法律で定められた全国的なルールです。
<戸籍法10条3項>
第一項の請求(戸籍の請求)をしようとする者は、郵便その他の法務省令で定める方法により、戸籍謄本等の送付を求めることができる。
このように法律で決まっていることなので、郵送請求できない役所はなく、必ず対応しています。大きい市役所等の場合は、郵送請求係という一つの係になっていることも多いです。ただ、市役所で直接窓口の人と会うことができないため、郵送で戸籍を請求するのは少し不安なことと思います。
- 一体何を郵送したらいいの?
- 一体何を郵送したらいいの?
- どうやって戸籍を返送してもらうの?
等が代表的なものです。申請書の書き方等は役所の窓口に行けば親切に教えてもらえるようなことですし、手数料の支払いや返信用封筒等は郵送請求ならではの手間といえます。しかし直接役所に出向く時間や交通費を考えればやはり郵送で請求した方が効率的といえます。
戸籍の郵送請求の方法については、実は役所のホームページに詳しく載っています。インターネットの検索で「〇〇市 戸籍 郵送」と調べれば、これから請求する役所の郵送請求のページをすぐ見つけることができるはずです。しかし、どの役所も必要最低限の情報だけで、請求の手順等を丁寧にわかりやすく載せている役所のホームページは少ないです。
戸籍の窓口請求と郵送請求のメリット&デメリット
窓口請求と郵送請求との比較
取得方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
窓口請求 | 役所の担当者と直接やりとりができるので安心 | ・時間と交通費などの経費がかかる ・窓口で待たされることも |
郵送請求 | 時間と交通費が節約できる | ・役所担当者への説明が難しい ・切手・小為替などの準備が手間 |
上の表の通り、それぞれ一長一短といっていいと思います。冒頭でご紹介した通り、家系図作りは戸籍を取得すれば終わりということではなく、他にも多くの手間がかかりますので、そこまで時間はかけられません。そのため取得作業は効率よく進められる郵送請求をオススメします。最初の自分の戸籍は近くの役所で取れたとしても、明治時代まで遡ると本籍地が遠方になっていることが判明することもあるからです。
全国の役所に散らばって保管されている戸籍を全て窓口まで出向いて集めていると、莫大な費用と時間がかかってしまうことになりますので、郵送請求の方法は必ず覚えておくべきといえます。
<プロの戸籍の取り方>
実際に私たちのような専門業者は現地まで行って戸籍を取ることはなく、基本的に郵送で取得します。多くのお客様の家系図作成を請け負っているため、同時並行作業で毎日大量の戸籍を取らなければならず、役所まで出向いたり窓口で待たされたりすると全く仕事にならないためです。
<ステップ2>戸籍の請求書を書いてみよう
役所の窓口に出向いて申請するか、郵送で請求するか、2通りの方法があることを<ステップ1>で解説しました。次に郵送請求の際の戸籍の請求書について解説をしていきます。請求書を書く段階になると、ある程度の戸籍に関する基本的な知識が必要になってきます。1つ1つ解説していきますのでぜひ挑戦してみて下さい。
戸籍の請求書はどこで手に入れる?
戸籍の請求書は役所の窓口に行けば備え置いてありますが、郵送で請求する場合は各市区町村のホームページから所定の書式がダウンロードできるようになっています。これも「○○市 戸籍 郵送」というワードで検索すると、すぐ見つけることができます。
自治体ごとにそれぞれ請求書の書式が用意されているとなると、請求する役所ごとに所定の請求書を使わなければいけないような気になってしまいますが、実際には必要事項がきちんと書いてあれば自分で作ったワープロ印字の請求書を使っても、他の役場の請求書を流用しても構いません。自治体ごとに事務の規則が若干異なることや、全国単位の統一された書式が存在しないため、各自治体が独自に請求書の様式を作成しているのが実情です。
<オリジナル戸籍請求書の書式をダウンロード!>
家系図作りのために最適化された家樹オリジナルの戸籍請求書を無料でプレゼントします。以下のリンクからダウンロードしてください。この請求書を使ってそのまま戸籍の請求を行うことができます。
戸籍の請求書に書く必要事項
ここからはオリジナルの請求書の見本を元に解説を行います。各自治体の配布している請求書は自治体ごとに若干様式・見出し等が異なっていますが、内容は基本的に同じなので見本にしたがって記入していけば完成させることができるはずです。見本の緑色の字の部分が自分で記入する部分ですので、確認しておいて下さい。
1.【宛名】欄
戸籍謄本の請求は「自治体の長」宛に請求するものなので、宛名の欄には自治体名(中央区・八王子市・日の出村 等)を記入します。日付も記入しますが、ここはそこまで厳格なルールはないため、「書類を記入した日」でも「請求書が役所に届く予定の日」でもどちらでも受け付けてもらえます。すぐ郵送するものなので、書類を記入した日を記入するのが無難でしょう。
2.【請求者】欄
請求者欄には、自分の住所・氏名・生年月日・“筆頭者から見た”請求者との関係を記入します。見本では田中太郎(子)が田中一郎(父)の戸籍を請求しています。筆頭者(田中一郎)からみて請求者(田中太郎)は子にあたるため「子」に丸印をつけます。
昼間連絡可能な電話番号の欄には自分の携帯番号を書いておきましょう。家系図作りを目的とした戸籍の請求の場合は、請求範囲を確認するために役所から電話がくる可能性は結構高いです。電話で話して伝えた方がスムーズな場合も多いので、忘れずに電話番号は書いておきましょう。
3.【必要な戸籍】欄
必要な戸籍欄には本籍・筆頭者の氏名・生年月日(わかる場合)を記入します。役所では「本籍」と「筆頭者」の名前で情報を検索するため、ここの情報が戸籍請求を行う上で一番重要な情報になります。電話で問い合わせを行う際にも本籍と筆頭者の情報で照会をかけます。この1枚の請求書で数世代の戸籍をまとめて取りたいときは、最も新しい戸籍の筆頭者の欄に「他」も付け加えておきましょう。この表記にしておくことで、役場の戸籍担当者に筆頭者のさらに上の世代まで戸籍を請求しているということが伝わります。
<戸主と筆頭者について>
少し勉強されている方だと「戦前の戸籍の表記は「筆頭者」ではなく「戸主」だったはずだ!」と気付くと思いますが、この請求書の記入欄については筆頭者も戸主も同じように記載して大丈夫です。戸主と筆頭者の違いについて気になる方は関連記事をご覧ください。
4.【証明書の種類】欄
証明書の種類欄は①戸籍、②除籍謄本、③改製原戸籍 等の専門用語が出てくるため、一般の方にとっては相当わかりづらい部分ですが、正確に理解していなくても戸籍の請求自体はできますので心配いりません。
家系図作りの場合は、古い戸籍を多く取得していくことになるため、請求対象のほとんどが「除籍」「改製原戸籍」になります。何が請求対象なのかわからない場合は、深く考えず戸籍・除籍・改製原戸籍の謄本に「各1通」と記入しておけば大丈夫です。また家系図作りでは一部の事項だけが記載される「抄本(しょうほん)」ではなく、必ず全て事項が記載される「謄本(とうほん)」を取得しましょう。
戸籍を実際に読む段階になると、戸籍の種類の区別も重要になってきます。戸籍の種類について詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧ください。
5.【使い道・提出先】欄
使い道・提出先欄に何を書くかは、実は一番悩ましい部分でないでしょうか。正直に「家系図作成」と書いて戸籍が取得できるのかどうか考えてしまうと思います。結論からいうと、使い道・請求理由の部分には「家系図作成のため」と明確に書くべきです(理由は後述)。
さらに「(筆頭者氏名)のもの及び、その田中性の直系尊属のもの(出生から死亡まで)を全てお願いします」とわかりやすく書いておくことをオススメします。私たちのような専門業者の場合、さらにこの欄には臨機応変に「戦災や保存期間経過による破棄により戸籍を出せない場合は、その旨の証明書を下さい」と書いておくこともあります。
私たちの場合は、お客様に説明しなければいけないため、戸籍がない場合は「ないこと」を文書で証明してほしいということを求めています。さらに末尾に「不明な点がある場合は携帯電話に連絡して下さい」と書いておくことも大切です。この欄にあらためて自分の氏名と携帯番号を書いておくと、先方の役所で何か不明な点や報告がある際に連絡してもらいやすいからです。
戸籍の請求理由について
戸籍の請求理由を書く欄には、正直に「家系図作成」と書くべきと解説しましたが、家系図作成を請求理由にして請求が却下されることはあり得るのか?という点について。私たちは今まで何百もの市区町村に家系図作成を理由に戸籍の請求を行ってきていますが、請求が拒否されたことは1度もありません。
もっとも、なぜ請求理由を書かなければいけないのかというと、法律によって「市町村長は、(戸籍の請求が)不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる」という定めがあり、その確認を目的としています。この「不当な目的」というのは単純な身辺調査目的や、離婚歴を探る目的等がそれにあたります。
家系図作成は請求理由として認められている!?
家系図作成は不当な目的ではないと考えられているため、正々堂々書いて問題ありません。直系の先祖の戸籍が取得できることは法律によっても明らかです。家系図作成だと戸籍が取れないかも!と疑って請求理由を偽って書いてしまうことの方が問題です。最悪の場合、不当請求とみられて刑罰(30万円以下の罰金)の対象になる可能性もありますので気を付けましょう。
戸籍はどこまで請求できるのか?
戸籍はどの範囲まで請求できるのか、つまり「戸籍の請求権者」については、戸籍法第10条1項で定められています。
<戸籍法10条3項>
戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によって訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書の交付の請求をすることができる。
このように、戸籍を請求することができるのは、①その戸籍に記載されている本人、②その配偶者、③直系の関係にある者、に限定されています。つまり自分と血がつながった直系の先祖の戸籍は全て取ることができても、自分の直系の先祖の兄弟姉妹(傍系先祖)の戸籍は取れないことになります。
※傍系の戸籍は取れないといっても、直系先祖の兄弟姉妹については直系先祖と同じ戸籍に入っていた期間があるため、名前と生年月日は最低限知ることができます
戸籍は個人情報の塊なので、どこまでも制限なく取れるわけではありません。自分や直系先祖の兄弟姉妹・叔父叔母は傍系の親族にあたりますが、傍系も含めた壮大な家系図を作りたい場合は、傍系の親戚に委任状を書いてもらったり、戸籍の請求を手伝ってもらう必要があります。
戸籍を取得する上で、この直系と傍系の違いは必ず理解しておかなければならないことです。関連記事に詳しく解説してありますので、是非ご一読ください。
<養子縁組をしている場合>
昔は今と違い「家」を引き継いでいくために養子縁組が日常的に行われていました。養子縁組をしている場合に実親と養親のどちらの戸籍を辿れるのかわからなくなってしまうかもしれませんが、自分の先祖が養子縁組をしていても、離縁していなければ養親は直系尊属にあたるため、実親も養親も両方の戸籍を辿ることができます。
<ステップ3>戸籍の請求書を郵送する
戸籍の請求書を書き終えたら、遠方にある役所に郵送します。
請求書に同封するものは何?
郵送請求する際に同封するものは以下のとおりです。不備・不足があると役所の担当者から電話がきて教えてくれますが、二度手間になってしまいますので、郵送する前に同封物をチェックしましょう。順番に詳しく解説をしていきます。
1.戸籍謄本等郵送請求書
2.定額小為替
3.身分証のコピー
4.返信用封筒
5.返信用切手
6.ご先祖との関係が確認できる戸籍等(コピー可)
※自分が載っていない戸籍を請求する場合のみ
1.戸籍謄本等郵送請求書
請求書の呼び方は自治体によって変わりますが、内容はどの役所でもほとんど同じです。上でご紹介した見本の通り、請求書の記載に漏れや間違いがないかどうかチェックしましょう。印鑑の押印は不要です。
2.定額小為替
戸籍に関する証明書の発行手数料を支払うため、定額小為替を封入します。定額小為替はお近くのゆうちょ銀行(郵便局)の窓口で購入できます。小為替には氏名を書く欄がありますが、何も書かずにそのまま送ります。
定額小為替は発行の際に1枚あたり100円(2022 年 2 月 1 日から200円に値上げ)の手数料が発生するため、手数料を最低限に抑えるために最大額面の1000円の小為替を10枚程度(1万分)購入することをオススメします。どれだけの部数の謄本が取れるかわからないので、最初に請求する際には1万円分を同封するのがオススメです。
多めに入れておくと、残金分が定額小為替で返送されてきます。足りなかった場合は役所から電話で連絡がきます。2回目以降の請求では取れる戸籍の通数も少なくなってくるため、5000円くらいを同封すれば足りることが多いです。
3.身分証のコピー
運転免許証・パスポート・健康保険証・写真付き住民基本台帳カードの写しなどです。行政機関から発行されている写真付きの身分証であれば、どの役所でも受け付けてもらえます。身分証の原本を郵送するわけないはいかないので、オモテを(ウラに記載がある場合はウラ面も)コピーして郵送します。コンビニ等でまとめてコピーをとっておくとよいです。ちょうどいい身分証がない場合は自治体のホームページや電話で確認してから送った方が確実です。
4.返信用封筒
返信用封筒は役所が戸籍を返送する際に使用する封筒です。役所が自前で持っている封筒で郵送してくれるわけではないのでご注意ください。返信用の封筒なので、自分の住所を宛名として書き、かつ宛名は自分の身分証の住所と一致してなければいけません(不正請求防止のため)。戸籍の請求は、実は請求してみないとどれだけの通数が取れるのかわかりません。戸籍の量が多く、封筒に入りきらないことも少なくないので、なるべく大きめの封筒(角形2号)を送った方がいいでしょう。
私たちの場合、お客様の戸籍に折り目が付かないように必ず大きめの封筒(角形2号)にA4のクリアファイルごと封入してファイルごと返送してもらいます。急ぎの案件の場合は若干割高な「レターパックライト」を使うこともあります。
<封筒宛名の書き方>
封筒の宛名については、必ず役所の指定する宛先を確認しましょう。自治体によっては郵送請求の窓口が役所でないこともあるためです(横浜市等)。これも「〇〇市 戸籍 郵送」で検索し、確認してから宛名を記入してください。役所の部署まで宛名に書いておくと、役所に届いてからの郵便物の処理がスムーズになります。
5.返信用切手
郵便の定形外郵便の規格に収まる角形2号の封筒を返信用として送る場合には、定形外郵便の500g以内となる380円分を封筒に貼らずに同封(書類にクリップ留め)すれば大丈夫です。切手が余る分はその金額分の切手を返送してくれるので、切手の内訳は気にする必要はなく、足りる金額分の切手を同封しておけば問題ありません。
※レターパックを返信用封筒として送る場合、切手は必要ありません。
6.請求する対象の先祖との関係が確認できる戸籍(コピー)
実はこの「先祖との関係が確認できる戸籍」の準備が最も面倒です。現在有効な戸籍謄本や、以前に自分が記載されていた戸籍、自分の親の戸籍等を取得するときには郵送する必要がありませんが、2代3代以前のご先祖の戸籍を取るような場合、本籍地が変わっていたり、別の自治体に転籍していたりすることも多いため、その自治体が管理している戸籍だけでは請求者が本当に請求する権利がある人(直系卑属)なのか確認できないのです。この場合、これから請求しようとしている戸籍に自分の直系先祖が含まれていることを戸籍のコピーや手書きの家系図等の資料で証明する必要があります。
<ポイント>家系図をメモ書きしながら戸籍請求を進めること!
戸籍の請求も、同じ作業の繰り返しになり、数回繰り返すとどの先祖の戸籍を請求しているのかわからなくなってきてしまいます。そのため、戸籍の取得作業と同時並行で手書きで家系図を書きながら作業を進めていくべきです。家系図も同時に進めておけば、上の「先祖との関係が確認できる戸籍」の準備も簡単にできるはずです。
役所からの問い合わせの電話
請求に関して何か不十分な点があると役所の担当者から電話がかかってきます。考えられるパターンを挙げておきます。
- 戸籍の請求書の書き方が間違っている
- 身分証のコピーなど足りない書類がある
- 小為替・切手が足りないので追送してほしい
- 戸籍が入りきらないので、大きい封筒を追送してほしい
- 戸籍の請求範囲が請求書からわからないので確認したい
このような内容がほとんどです。請求書の欄では細かい指示や要望が書ききれなかったり、文書だとうまく伝わらなかったりすることもあるため、こうした場合は役所の担当者に電話で説明しなければなりません。戸籍のことをある程度理解して、要点をわかりやすく伝えられるようなコミュニケーション能力も求められます。
役所から返送されてくるものとは
請求してから1週間から10日位すると、役所から戸籍が入った封筒が返送されてきます。
返送物の一覧
1.戸籍謄本・除籍・原戸籍・附票・廃棄証明書など
2.小為替の余り(お釣り)
3.切手の余り(お釣り)
4.手数料のレシート
請求した戸籍が思い通り請求できていたかを確認して、次の戸籍を請求するために手書きで家系図に書き足していきます。①次に請求する直系先祖の名前、②本籍地、③筆頭者(戸主)が読み取れたら、また戸籍の請求書を書いて同じ要領で役所に請求します。昔の先祖になればなるほど、本籍地の表記が難しかったり、「先祖との関係が確認できる戸籍」の準備に手間がかかります。戸籍を何度請求しなければいけないかは個人差が大きいですが、この請求作業を何度も繰り返し、明治19年式の戸籍まで取得できたら戸籍請求作業についてはゴールになります。明治19年式戸籍には江戸時代生まれのご先祖様が載っているはずです。
覚えておきたい作業のポイント
1.本籍地が昔の表記の場合
繰り返し戸籍を請求していると、本籍地の表記が現在存在しない住所表記であるケースが頻繁に出てきます。この場合、現在の表記に変更して請求しなければいけないのか迷うかもしれません。戸籍の本籍地の表記は、いわば見出しの意味しかありませんので、現在存在している表記である必要がないとされています。そのため、昔の表記のまま戸籍の請求書に記載すれば問題ありません。無理に現在の住所表記に直して請求すると、役所で戸籍を見つけてもらえないことになってしまいますので、知識として覚えておきましょう。
2.市区町村が現存しない場合
住所表記だけならまだしも、市町村合併等の理由で昔と現在とで市区町村や都道府県が異なっていることもよくあります。東京でいえば昔は「東京府○○区」だったり、青梅市の一部では昔は神奈川県だった地域もあります。このような場合は、これから請求しようとしている本籍地をインターネットで一度検索してみる方法がオススメです。大抵の場合ウィキペディア等で現在どの自治体に位置しているのかは知ることができます。それでもわからない場合は役所の戸籍係に電話で確認してみればわかります。請求する自治体を間違えてしまうと、戸籍は請求できずにそのまま返送されてきてしまいますので、郵送する前に一度確認することが大切です。
3.保存期間から取れない謄本もある
戸籍法という法律によって、市区町村役所において戸籍を保存する期間を定めています。現在は150年となっている保存期間ですが、平成22(2010)年6月1日の戸籍法施行規則の改正以前は80年とされていました。その保存期間を踏まえて計算してみると、昭和5(1930)年までに除籍となった謄本、原戸籍は廃棄されてしまっていることになります。
では、それ以前の大正時代や明治時代の除籍や原戸籍は取れないのかというと、そんなことはありません。保存期間は定められていますが、実際に廃棄するかどうかの判断は市区町村にされているため、多くの自治体で廃棄はされておらず、今でも明治時代の戸籍を取ることができます。いずれにしても取れるかどうかは請求してみなければわからないことなので、まず請求してみることが大切です。
4.戸籍取得の作業量は?
ここまで読み進めていただくと「戸籍請求だけで一体どの位時間がかかるのだろう?」と思われることでしょう。戸籍請求にかかる作業量についてまとめておきます。
調べる家系(名字)の数 | 取得する戸籍の通数の目安 | 必要となる期間 |
---|---|---|
1つの家系(名字) | 約5~10通 | 2カ月程度 |
全ての家系(名字) | 約15~30通 | 3~4カ月 |
作業に必要となる期間については、個人差もとても大きいですし、どれだけ効率よく作業を進められるかにもよるため、最低この位の期間はかかってしまうと認識しておいた方がいいです。調べる範囲によって大きく手間は変わりますが、いずれにしても家系図作りが一朝一夕には完成しないことがわかると思います。
冒頭でご紹介した「1.【取る】市役所等の役所から戸籍を取得する」作業が終わったら、次の「2.【読む】取得した戸籍を読み込む(判読)」「3.【書く】戸籍から得た情報を元に家系図を書く(描画)」作業を進めていくことになります。戸籍取得が完了した時点で、家系図作りの作業の全体の3分の1程度の進捗状況だと理解しておきましょう。
まとめ
家系図作りは、私たちのような家系図専門業者が取り組んでも、ある程度の期間・手間はかかってしまいます。作業に慣れていない方にとっては尚更手間がかかることでしょうから、取り組むにあたってはある程度の覚悟が必要です。
士業といわれる行政書士などは「職務上請求書」といわれる、委任状や先祖とのつながりを証明しなくても戸籍を請求できる特別な請求書を持っていて、かつてはその請求書を使って家系図作成を行う行政書士も多く存在していました。しかし現在では、裁判所の判決によって家系図作成を目的とした職務上請求書の使用はできないことになっています。この経緯が気になる方は関連記事をご覧ください。
こうしたことから、行政書士や家系図作成業者も実は一般の方と同じ方法で家系図作りを行っていることになります。あと違いといえば、戸籍の取得や判読に関する専門的知識と技術・経験だけです。家系図作りを自分の手で行うことはとても意義があることですし、楽しみながらできる方であれば非常にオススメです。
一方で、ここまで読み進めていただいて、お忙しい方や作業に自信がない方、プロに正確な家系図を作ってもらいたい!と思う方は私たちのような専門業者の活用も選択肢に入れてみてください。また戸籍の請求ばかりやっていると作業に飽きてしまう可能性もあります。家系図作りは戸籍の請求以外にも多くの手段がありますので、以下の記事から全体の作業を確認していただくことをオススメします!