「古い戸籍を辿って取得していくと家系図を作ることができる」——このこと自体はご存じの方も多いと思います。ただ、戸籍は普段の生活で頻繁に取得するものではないため、実際にどう取得・請求していけばいいのかわからない、という方がほとんどではないでしょうか。
親の相続手続きで戸籍を取った経験がある、という方もいらっしゃるでしょう。しかし覚えておいていただきたいのは、相続手続きを目的とした戸籍の取り方と、家系図作りを目的とした取り方では、方法も難易度も大きく変わってくるということです。取得する戸籍の量がまるで違うため、家系図作りを目的とした戸籍収集の方が難しいことが大半です。
さらに、2024年3月からは戸籍を本籍地以外の窓口で取得できる「広域交付制度」が始まりました。明治19年式戸籍を含め、現在は全国のほとんどの戸籍が電子化されているため、家系図で遡る古い戸籍も、その多くを最寄りの窓口(広域交付)でまとめて取得できるようになっています。一方で、広域交付では取得できない書類(廃棄・焼失証明書、戸籍の附票、改製不適合戸籍など)や、窓口に行けない・役所ごとの独自制限で使いにくい場面もあり、その場合は郵送請求が必要になります。この記事では、家系図作成専門会社である私たちが、広域交付との使い分けを踏まえた戸籍の郵送請求の方法を、最新情報にあわせて解説していきます。
目次
戸籍を辿って家系図を作るとは?
「戸籍を辿って家系図を作る」作業は、以下の「取る」「読む」「書く」3つに分類できます。解説ページも作業ごとに分かれており、この記事で解説するのは「1.【取る】役所から戸籍を取得する」作業です。他の作業はそれぞれの解説ページをご覧ください。家系図作りはどの工程もボリュームが多いので、ページをお気に入り登録して辞書代わりに活用することをおすすめします。
<戸籍から作る家系図>3つの作業の分類
1.【取る】役所から戸籍を取得する

【2026年版】家系図の調べ方・戸籍の取り方をプロが徹底解説!
2.【読む】取得した戸籍を読み込む(判読)
3.【書く】戸籍から得た情報を元に家系図を書く(描画)
この3つを反復継続することで家系図ができあがるため、すべてをセットで考えてください。なぜ反復が必要かというと、自分の先祖の戸籍は1ヵ所の役所に集まっていることはほとんどなく、全国各地の役場に散らばって保管されているからです。これこそが戸籍取得を難しくしている根本的な原因です。
事前準備も大切!
戸籍を取るうえで一番大切なのは、どの範囲の戸籍を取得していくのかを決めることです。どこまでの家系を調べるかによって作業量が大きく変わるため、私たちのような家系図作成業者の料金プランも、調べる家系の数によって分かれているのが通常です。
【動画あり】家系図セットの料金・プラン|家系図作成の家樹-Kaju-
「先祖は全部調べたい!」と思っても、はじめは欲張らず、自分が名乗っている名字の家系から辿り、順番に他の家系へ広げていく方法がスムーズです。小さなゴールを設定しながら、根気よく進めましょう。
戸籍取得には2つのルートがある(広域交付と郵送請求)
家系図のために戸籍を集める方法は、現在大きく分けて2つあります。①最寄りの役所の窓口で取得する「広域交付」と、②本籍地の役所に郵便で請求する「郵送請求」です。まずはこの違いを正しく押さえておきましょう。
広域交付制度とは(2024年3月開始)
広域交付制度は、令和元年の戸籍法改正を受けて2024年(令和6年)3月1日から始まった制度です。それまで戸籍は本籍地の役所でしか取得できませんでしたが、この制度により本籍地が遠方でも、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本をまとめて請求できるようになりました。本籍地が複数の自治体に分かれていても、一つの窓口で請求できるのが大きなメリットです。
現在は明治19年式戸籍を含め、全国のほとんどの戸籍が電子化(コンピュータ化)されているため、家系図で遡る古い除籍・改製原戸籍も、その多くが広域交付で取得できます。そのため家系図作りでも、まずは広域交付の活用を検討するのが効率的です。
ただし、便利な制度である一方、家系図作りの観点では見過ごせない制限もあります。
<広域交付の主な制限>
・窓口で請求者本人が出向く必要がある(郵送請求・代理人請求は不可)
・請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られる(兄弟姉妹などの傍系は不可)
・廃棄証明書・焼失証明書(いわゆる「ないこと証明」)は対象外
・戸籍の附票や、一部の事項のみ記載される「抄本」も対象外
・電子化されていない一部の戸籍(改製不適合戸籍)は対象外
・即時交付が難しく、後日や数週間待ちになることもある
・自治体(役所)ごとに独自の制限がある場合
広域交付と郵送請求の比較
家系図作りの視点で、2つのルートを比較すると次のようになります。
| 比較項目 | 広域交付 | 郵送請求 |
|---|---|---|
| 取得場所 | 最寄りの市区町村窓口(全国分をまとめて) | 本籍地の自治体ごとに個別に |
| 請求方法 | 窓口で本人が出向く必要あり | 自宅から郵送で完結 |
| 代理・委任 | 不可 | 可 |
| 取得できる書類 | 戸籍・除籍・改製原戸籍の「謄本」 | 左記に加え、附票・抄本なども可 |
| 古い除籍・改製原戸籍 | 電子化済みのものは取得可(明治19年式を含め大半が該当) | 取得可(改製不適合戸籍など広域交付の対象外分も) |
| 廃棄・焼失証明書/ 戸籍の附票/抄本 |
対象外 | 取得できる |
※請求できる範囲(本人・配偶者・直系尊属・直系卑属)は両方とも共通です。傍系の戸籍を取得したい場合は、郵送請求(または本籍の役場窓口)いずれかで、委任状(または相続手続等の正当な理由)などが必要になります。
広域交付の時代に、郵送請求が必要になる場面
前述のとおり、現在は多くの戸籍が電子化されており、家系図作りでも、まずは広域交付で直系の戸籍をまとめて取得するのが効率的です。一方で、広域交付だけでは家系図作りが完結しない場合や、自治体独自の利用制限もあり制度が使いづらいケースがあります。その場合はこれまで通りの郵送請求が必要になります。具体的には次のようなケースです。
<郵送請求が必要になる主な場面>
・広域交付で戸籍を取り漏れていたとき
・戸籍を限界まで辿れたか確認するための廃棄・焼失証明書(ないこと証明)が必要なとき
・先祖の住所の履歴を追う戸籍の附票が必要なとき
・電子化されていない改製不適合戸籍に当たったとき
・忙しくて平日の昼間に窓口へ行けないとき
・広域交付で取り切れなかった分を補完するとき
・役所ごとの独自制限で広域交付が使いにくいとき
このように、郵送請求が必要なケースは様々ですが、一般の方にとっては役所ごとの独自制限が一番の障害になっていることが多く、プロの先祖調査の現場では、廃棄・焼失証明書が取れないことが一番のネックになっています。広域交付が主軸になった今でも、戸籍の郵送請求は家系図の完成度を高めるためには必要な手段となっています。この記事では戸籍の郵送請求の具体的なやり方を解説していきますが、広域交付制度そのものの使い方・当日の流れ・自治体ごとの注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。
<ステップ1>郵送請求の事前知識
1.自分の本籍地を確認する
戸籍は自分の本籍地の役所に請求するため、まず自分の「本籍」がある自治体を把握しておく必要があります。少し前までは免許証に本籍が記載されていましたが、今は記載されなくなった(ICチップ内の情報になった)ため、自分の本籍地がわからないという方が増えています。
大抵は現住所か実家が本籍になっていますが、本籍をどこに置くかにルールはないため、住所表記が微妙に違っていたり、見当違いの場所が本籍になっている可能性もあります。本籍がわからない場合は、自分の「住民票(の写し)」を取得して確認するのが最も手軽です。住民票は住所地の役所で取得でき、申請時に本籍地の記載にチェックを入れれば、本籍地が記載された住民票が取得できます。
2.実際に自分の戸籍謄本を請求してみる
自分の本籍がわかったら、まず自分の戸籍を取り寄せてみましょう。先祖の戸籍を取得したい場合でも、自分の戸籍は参考資料として必要になるため、確実に取得しておきます。なお自分の最新の戸籍であれば、前述の広域交付を使って最寄り窓口で取得することも、マイナンバーカードがあればコンビニで交付を受けることもできます。
本籍地が遠方の場合に郵送請求を利用する
父方の実家や自分の実家に本籍を置いていて今住んでいるところから遠い、というケースはよくあります。しかし、時間と交通費をかけてその役所まで直接出向く必要はありません。こんな場合に、戸籍の郵送請求を利用すれば効率的です。戸籍の郵送請求は一般にはあまりしられていませんが、これは自治体ごとのサービスではなく、法律で定められた全国共通のルールです。
<戸籍法第10条第3項>
第1項の請求をしようとする者は、郵便その他の法務省令で定める方法により、戸籍謄本等の送付を求めることができる。
このように法律で定められているため、郵送請求に対応していない役所はありません。大きな自治体では「郵送請求係」という独立した係になっていることも多いです。窓口で直接やりとりできない不安はありますが、申請書の書き方は役所のホームページに案内がありますし、直接出向く時間や交通費を考えれば、やはり郵送の方が効率的です。
戸籍の郵送請求の方法やルール等は、基本的に各役所のホームページに載っています。検索で「〇〇市 戸籍 郵送」と調べれば、その役所の郵送請求のページをすぐ見つけられるはずです。ただ、どの役所も必要最低限の情報にとどまり、手順を丁寧に解説しているところは多くありません。
戸籍の窓口請求と郵送請求のメリット・デメリット
ここでいう「窓口請求」は、広域交付に限らず本籍地の窓口に出向く方法を含みます。郵送請求との違いを整理すると次の通りです。
| 取得方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 窓口請求 | 担当者と直接やりとりができて安心 | ・時間と交通費などの経費がかかる ・窓口で待たされることも |
| 郵送請求 | 時間と交通費が節約できる | ・役所担当者への説明が難しい ・切手・小為替などの準備が手間 |
家系図作りは戸籍を取得すれば終わりではなく、読む・書く作業も控えているため、取得作業に時間はかけられません。実際に私たちのような専門業者も、現地まで行って取ることはなく、基本的に郵送で取得します。多くのお客様の家系図作成を同時並行で進めており、毎日大量の戸籍を取得するため、役所に出向いて待たされていては仕事にならないからです。
<ステップ2>戸籍の郵送請求書を書いてみよう
次に、郵送請求の際の請求書について解説します。請求書を書く段階になると、戸籍に関する基本的な知識が少し必要になります。1つずつ解説しますので、ぜひ挑戦してみてください。
戸籍の請求書はどこで手に入れる?
請求書は役所の窓口に備え置いてありますが、郵送請求の場合は各市区町村のホームページから所定の書式をダウンロードできる場合もあります。これも「〇〇市 戸籍 郵送」で検索すればすぐ見つかります。
自治体ごとに書式が用意されていると、役所ごとに専用の請求書を使わなければいけない気がしてしまいますが、必要事項がきちんと書いてあれば、自分で作ったワープロ印字の請求書でも、他の役場の請求書を流用しても構いません。全国統一の書式が存在しないため、各自治体が独自に様式を作成しているのが実情です。
<オリジナル戸籍請求書の書式をダウンロード!>
家系図作りのために最適化された家樹オリジナルの戸籍請求書を無料でプレゼントしています。以下のリンクからダウンロードしてください。この請求書をそのまま使って戸籍の請求を行うことができます。
戸籍の請求書に書く必要事項
ここからはオリジナル請求書の見本をもとに解説します。各自治体の請求書は見出し等が若干異なりますが、内容は基本的に同じなので、見本にしたがって記入すれば完成できます。見本の緑色の字の部分が自分で記入する箇所です。
1.【宛名】欄
戸籍謄本の請求は「自治体の長」宛に行うものなので、宛名欄には自治体名(中央区・八王子市・日の出村 等)を記入します。日付も記入しますが厳格なルールはなく、「書類を記入した日」でも「役所に届く予定の日」でも受け付けてもらえます。すぐ郵送するものなので、記入した日を書くのが無難です。
2.【請求者】欄
請求者欄には、自分の住所・氏名・生年月日と、“筆頭者から見た”請求者との関係を記入します。見本では田中太郎(子)が田中一郎(父)の戸籍を請求しています。筆頭者(田中一郎)から見て請求者(田中太郎)は子にあたるため「子」に丸印をつけます。
昼間連絡可能な電話番号の欄には自分の携帯番号を書いておきましょう。家系図作りを目的とした請求では、請求範囲を確認するために役所から電話がくる可能性が結構高いです。電話で話した方がスムーズな場合も多いので、忘れずに記入しておきましょう。
3.【必要な戸籍】欄
必要な戸籍欄には、本籍・筆頭者の氏名・生年月日(わかる場合)を記入します。役所では「本籍」と「筆頭者」の名前で検索するため、ここが請求で最も重要な情報になります。電話での問い合わせの際も、本籍と筆頭者の情報で照会します。この1枚で数世代分をまとめて取りたいときは、最も新しい戸籍の筆頭者の欄に「他」も付け加えておきましょう。これで、筆頭者よりさらに上の世代まで請求しているということが担当者に伝わります。
<戸主と筆頭者について>
少し勉強されている方は「戦前の戸籍の表記は『筆頭者』ではなく『戸主』だったはずだ」と気づくと思いますが、この請求書の記入欄では、筆頭者も戸主も同じように記載して大丈夫です。戸主と筆頭者の違いが気になる方は関連記事をご覧ください。
4.【証明書の種類】欄
証明書の種類欄は、①戸籍謄本、②除籍謄本、③改製原戸籍などの専門用語が並び、一般の方にはわかりづらい部分ですが、正確に理解していなくても請求自体はできますので心配いりません。
家系図作りでは古い戸籍を多く取得するため、請求対象のほとんどが「除籍」「改製原戸籍」になります。何が対象かわからない場合は、深く考えず戸籍・除籍・改製原戸籍の謄本に「各1通」と記入しておけば大丈夫です。また家系図作りでは、一部の事項だけが記載される「抄本(しょうほん)」ではなく、必ずすべての事項が記載される「謄本(とうほん)」を取得しましょう。
なお発行手数料は全国共通で、戸籍謄本(全部事項証明書)が1通450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本が1通750円が標準です。戸籍の種類の区別は、実際に戸籍を読む段階で重要になります。詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧ください。
5.【使い道・提出先】欄
使い道・提出先欄に何を書くかは、いちばん悩ましい部分かもしれません。正直に「家系図作成」と書いて戸籍が取得できるのか、不安になる方も多いでしょう。結論からいうと、使い道・請求理由には「家系図作成のため」と明確に書くべきです(理由は後述します)。
さらに「(筆頭者氏名)のもの及び、その田中姓の直系尊属のもの(出生から死亡まで)を全てお願いします」とわかりやすく書いておくのがおすすめです。廃棄(焼失)証明書を請求する場合は、「その他の証明書」の欄に必ずその旨を書きます。私たち専門業者の場合は、この欄に臨機応変に「戦災や保存期間経過による破棄で戸籍を出せない場合は、その旨の証明書を下さい」とさらに書き添えます。
私達のような専門業者の場合は、お客様に説明する必要があるため、戸籍がない場合は「ないこと」を文書で証明してほしい、という趣旨です。さらに末尾に「不明な点がある場合は携帯電話に連絡して下さい」と自分の氏名と携帯番号を書いておくと、役所から確認の連絡をもらいやすくなります。
戸籍の請求理由について
請求理由には正直に「家系図作成」と書くべきと解説しましたが、家系図作成を理由にして請求が却下されることはあり得るのか、という点について。私たちはこれまで何百もの市区町村に家系図作成を理由に請求してきましたが、拒否されたことは一度もありません(ただ、少し怪訝そうな反応をされることはあります)。
そもそもなぜ請求理由を書くのかというと、戸籍法第10条第2項に「市町村長は、前項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる」という定めがあり、その確認のためです。この「不当な目的」とは、単純な身辺調査や、離婚歴を探る目的などが該当します。
家系図作成は請求理由として認められている!?
家系図作成は個人的な動機にはなりますが、不当な目的ではないと考えられているため、正々堂々と書いて問題ありません。直系の先祖の戸籍を取得できることは法律上も明らかなので「不当な目的」でなければ問題ないのです。むしろ「家系図作成だと取れないかも?」と疑って請求理由を偽って書く方が問題です。最悪の場合、不正請求とみなされて刑罰(戸籍法第135条・30万円以下の罰金)の対象になる可能性もありますので気をつけましょう。
戸籍はどこまで請求できるのか?
戸籍をどの範囲まで請求できるのか、つまり「戸籍の請求権者」は、戸籍法第10条第1項で定められています。
<戸籍法第10条第1項>
戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第24条第2項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書の交付の請求をすることができる。
このように、戸籍を請求できるのは①その戸籍に記載されている本人、②その配偶者、③直系の関係にある者に限られています。つまり、自分と血のつながった直系の先祖の戸籍はすべて取れますが、直系先祖の兄弟姉妹(傍系)の戸籍は取れないことになります。
※傍系の戸籍は取れなくても、直系先祖の兄弟姉妹は直系先祖と同じ戸籍に入っていた期間があるため、名前と生年月日は最低限知ることができます。
戸籍は個人情報の塊なので、無制限に取れるわけではありません。叔父叔母やいとこなど傍系の親族も含めた壮大な家系図を作りたい場合は、傍系の親戚に委任状を書いてもらうなどの協力が必要です。
戸籍を取得するうえで、この直系と傍系の違いは必ず理解しておかなければなりません。この違いについては関連記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
<養子縁組をしている場合>
昔は「家」を引き継ぐために養子縁組が日常的に行われていました。養子縁組をしている場合、実親と養親のどちらを辿れるのか迷うかもしれませんが、先祖が養子縁組をしていても、離縁していなければ養親も直系尊属にあたるため、実親・養親の両方の戸籍を辿ることができます。
<配偶者の先祖の戸籍は辿れるのか>
上の養子縁組とセットで「配偶者の先祖の戸籍は取れる?」とよく質問がありますが、配偶者の先祖は“自分の”直系の尊属にはあたらない(あくまで“配偶者の”直系の尊属)ため、結論として配偶者側の戸籍は取ることはできません。そのため、必ず配偶者の方が申請するか、配偶者の方から委任状をもらう必要があります。これも関連知識として覚えておきましょう。
<ステップ3>戸籍の請求書を郵送する
請求書を書き終えたら、本籍地の役所へ郵送します。
請求書に同封するものは何?
郵送請求の際に同封するものは以下のとおりです。不備があると役所から電話で教えてもらえますが、二度手間になるので、送る前にチェックしましょう。順番に解説します。
1.戸籍謄本等郵送請求書
2.定額小為替
3.本人確認書類のコピー
4.返信用封筒
5.返信用切手
6.ご先祖との関係が確認できる戸籍等(コピー可)
※自分が載っていない戸籍を請求する場合のみ
1.戸籍謄本等郵送請求書
請求書の呼び方は自治体によって変わりますが、内容はどこもほぼ同じです。見本のとおり、記載に漏れや間違いがないかチェックしましょう。印鑑の押印は不要です。
2.定額小為替
戸籍に関する証明書の発行手数料を支払うため、定額小為替を封入します。定額小為替はお近くのゆうちょ銀行(郵便局)の窓口で購入できます。小為替には氏名を書く欄がありますが、何も書かずにそのまま送ります。
定額小為替は発行時に1枚あたり200円(2022年2月1日に100円から値上げ)の手数料がかかるため、手数料を抑えるには最大額面1000円の小為替を購入するのがおすすめです。何通の謄本が取れるか事前にはわからないので、最初の請求では多めに小為替を同封しておくと安心です。
多めに入れておくと、残金分が定額小為替で返送されてきます。足りない場合は役所から電話で連絡がきますので、必要に応じて追送なども行いましょう。
3.本人確認書類のコピー
本人確認書類は、マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど、官公庁発行の顔写真付きの書類が確実です。原本を郵送するわけにはいかないので、オモテ面(裏面に記載がある場合は裏面も)をコピーして同封します。コンビニ等でまとめてコピーしておくと便利です。
なお、健康保険証は顔写真がないため単独では本人確認書類として認められず、通常はもう1点の書類が必要になります。健康保険証は2024年12月以降、新規発行が停止されている点にも注意が必要です。顔写真付きの書類がない場合は、必要書類を自治体のホームページや電話で確認してから送ると確実です。
4.返信用封筒
返信用封筒は、役所が戸籍を返送する際に使う封筒です。役所が自前の封筒で送ってくれるわけではないのでご注意ください。返信用なので、自分の住所を宛名として書き、かつ宛名は本人確認書類の住所と一致している必要があります(不正請求防止のため)。戸籍は何通取れるか請求してみないとわからず、量が多くて封筒に入りきらないことも少なくないので、なるべく大きめの封筒(角形2号)を送りましょう。
私たち(家系図専門業者)の場合、戸籍に折り目が付かないよう、必ず大きめの封筒(角形2号)にA4のクリアファイルごと封入し、ファイルごと返送してもらいます。急ぎの案件では「レターパックライト」を使うこともあります。
<封筒宛名の書き方>
封筒の宛名は、必ず役所の指定する宛先を確認しましょう。自治体によっては郵送請求の窓口が役所ではないこともあるためです(横浜市等)。これも「〇〇市 戸籍 郵送」で検索し、確認してから記入してください。役所の部署名まで宛名に書いておくと、届いてからの処理がスムーズになります。
5.返信用切手
返信用切手の金額は、2024年10月1日の郵便料金改定で変わっています。A4のクリアファイルごと角形2号の封筒で返送してもらう場合、現在は定形外郵便(規格内)の料金が目安になります。重量の目安は次のとおりです(規格内・2024年10月以降)。
| 重量(規格内) | 料金 |
|---|---|
| 50g以内 | 140円 |
| 100g以内 | 180円 |
| 250g以内 | 320円 |
| 500g以内 | 510円 |
| 1kg以内 | 750円 |
戸籍の枚数が多いと不足しがちなので、迷ったら500g以内(510円)程度を見込んで切手を同封しておくと安心です。切手は封筒に貼らずに同封(書類にクリップ留め)すれば大丈夫で、余った分はその金額分の切手で返送されるため、内訳は気にする必要はありません。
注意したいのは、戸籍やクリアファイルを入れると封筒の厚さが3cmを超え、「規格外」扱いになって料金が変わる場合があることです。心配な場合は、追跡もできて全国一律料金のレターパックライト(430円)やレターパックプラス(600円)を返信用に使うと、料金計算で迷わずに済みます(レターパックの場合、別途切手は不要です)。
6.請求する対象の先祖との関係が確認できる戸籍(コピー)
実はこの「先祖との関係が確認できる戸籍」の準備が最も面倒です。現在有効な自分の戸籍や、自分の親の戸籍などを取得するときは不要ですが、2代3代以前の先祖の戸籍を取る場合、本籍地が変わっていたり別の自治体に転籍していたりすることも多く、その自治体が管理する戸籍だけでは、請求者が本当に請求権のある人(直系卑属)かどうか確認できないのです。この場合、これから請求する戸籍に自分の直系先祖が含まれていることを、戸籍のコピーや手書きの家系図などで証明する必要があります。
<ポイント>家系図をメモ書きしながら戸籍請求を進めること!
戸籍の請求は同じ作業の繰り返しになり、数回繰り返すとどの先祖の戸籍を請求しているのかわからなくなってきます。そのため、取得作業と同時並行で手書きの家系図を書きながら進めるべきです。家系図を同時に進めておけば、上記「先祖との関係が確認できる戸籍」の準備も簡単になります。
役所からの問い合わせの電話
請求に不十分な点があると、役所の担当者から電話がかかってきます。考えられるパターンを挙げておきます。
- 戸籍の請求書の書き方が間違っている
- 本人確認書類のコピーなど足りない書類がある
- 小為替・切手が足りないので追送してほしい
- 戸籍が入りきらないので、大きい封筒を追送してほしい
- 戸籍の請求範囲が請求書からわからないので確認したい
このような内容がほとんどです。請求書に細かい指示を書ききれなかったり、文書ではうまく伝わらなかったりすることもあるため、電話で説明することになります。戸籍をある程度理解し、要点をわかりやすく伝えるコミュニケーション能力も求められます。
役所から返送されてくるものとは
請求してから1週間から10日ほどで、役所から戸籍等の証明書が入った封筒が返送されてきます。
返送物の一覧
1.戸籍謄本・除籍・改製原戸籍・附票・廃棄証明書など
2.小為替の余り(お釣り)
3.切手の余り(お釣り)
4.手数料のレシート
請求した戸籍が思いどおり取得できたかを確認し、次の戸籍を請求するために手書き家系図に書き足していきます。①次に請求する直系先祖の名前、②本籍地、③筆頭者(戸主)が読み取れたら、また同じ要領で請求します。昔の先祖になるほど本籍地の表記が難しくなり、「先祖との関係が確認できる戸籍」の準備にも手間がかかります。この請求作業を繰り返し、明治19年式の戸籍まで取得できたら、戸籍請求作業はゴールです。明治19年式戸籍には、江戸時代生まれのご先祖様が載っているはずです。
広域交付も活用した最新の戸籍収集フロー
2024年に広域交付が始まったことで、家系図のための戸籍収集も「今どきの進め方」ができるようになりました。広域交付を主軸にしつつ、郵送請求で補う、効率的な流れを紹介します。
<おすすめの戸籍収集フロー>
①一括取得:最寄りの役所の窓口で広域交付を使い、直系尊属の戸籍を遡れるだけまとめて取得する(明治19年式まで取得できることも多い)
②読み解き:取得した戸籍を読み込み、取り漏れやさらに必要な書類がないかを確認する
③郵送請求で補完:広域交付で取れなかった分(廃棄・焼失証明書、附票、改製不適合戸籍など)を、本籍地に郵送請求する
④ゴール:廃棄・焼失証明書まで取得し、限界まで辿れたことを確認できたら「取る」作業は完了
ポイントは、広域交付で「全部出てきた」と思い込まないことです。広域交付で多くの戸籍が取得できるとはいえ、廃棄・焼失証明書や附票は対象外で、まれに改製不適合戸籍も残ります。窓口で「これで全部です」と言われても、必ず撮り漏れがないか確認するようにしましょう。より戸籍収集の完成度を高めるためには廃棄・焼失証明書まで取得する必要があります。この最後の仕上げは、郵送請求で行うことになります。
覚えておきたい作業のポイント
1.本籍地が昔の表記の場合
繰り返し戸籍を請求していると、本籍地の表記が現在は存在しない住所であるケースが頻繁に出てきます。この場合、現在の表記に直して請求すべきか迷うかもしれません。戸籍の本籍地の表記は、いわば見出しの意味しかないため、現在存在する表記である必要はないとされています。そのため、昔の表記のまま請求書に記載すれば問題ありません。無理に現在の住所表記に直すと、役所で戸籍を見つけてもらえないことになりかねないので、知識として覚えておきましょう。
2.市区町村が現存しない場合
住所表記だけでなく、市町村合併などの理由で、昔と現在で市区町村や都道府県が異なっていることもよくあります。東京でいえば昔は「東京府○○区」だったり、青梅市の一部には昔は神奈川県だった地域もあります。このような場合は、これから請求する本籍地をインターネットで一度検索してみるのがおすすめです。多くの場合、ウィキペディアなどで現在どの自治体に位置しているのか知ることができます。それでもわからない場合は、役所の戸籍係に電話で確認すればわかります。請求先の自治体を間違えると、戸籍は取得できずそのまま返送されてくるので、郵送前に一度確認することが大切です。
3.保存期間から取れない戸籍もある
戸籍法施行規則により、市区町村が戸籍(除籍簿・改製原戸籍簿)を保存する期間が定められています。現在は150年ですが、平成22年(2010年)6月1日の改正以前は80年でした。この改正前の保存期間(80年)を経過した時点で廃棄された戸籍は、残念ながら今からでは取得できません。計算上は、おおむね明治・大正期に除籍となった古い戸籍の一部が、廃棄の対象になり得たことになります。
ただし、保存期間は定められていても、実際に廃棄するかどうかの判断は各市区町村に委ねられているため、多くの自治体では廃棄されておらず、今でも明治時代の戸籍を取得できることが少なくありません。いずれにしても取れるかどうかは請求してみなければわからないので、まず請求してみることが大切です。
なお、最も古い明治19年式戸籍(1886年)が作られてから150年後にあたる2036年には、保存期間に関する更なる改正がなければ、再び古い戸籍の廃棄が始まる可能性が指摘されています(いわゆる「2036年問題」)。古い戸籍ほど早めに取得しておく方が安心です。保存期間と廃棄の詳しい仕組みは、以下の専用記事で解説しています。
4.戸籍取得の作業量は?
ここまで読むと「戸籍の郵送で一体どれくらい時間がかかるのか?」と思われることでしょう。作業量の目安をまとめておきます。
| 調べる家系(名字)の数 | 取得する戸籍の通数の目安 | 必要となる期間 |
|---|---|---|
| 1つの家系(名字) | 約5~10通 | 2カ月程度 |
| 全ての家系(名字) | 約20~40通 | 3~4カ月 |
必要な期間は個人差が大きく、どれだけ効率よく進められるかにもよるため、最低でもこの程度はかかると認識しておく方がよいでしょう。戸籍の郵送請求は1往復ごとに時間がかかるため、全体としては一朝一夕には完成しません。
冒頭で紹介した「1.【取る】役所から戸籍を取得する」が終わったら、次は「2.【読む】取得した戸籍を読み込む(判読)」「3.【書く】戸籍から得た情報を元に家系図を書く(描画)」に進みます。広域交付を入口に使えば効率的に揃いますが、戸籍取得が完了した時点で、家系図作り全体の3分の1程度の進捗、と理解しておきましょう。
まとめ
家系図作りは、私たちのような専門業者が取り組んでも、ある程度の期間と手間がかかります。作業に慣れていない方であればなおさらですから、取り組むにはある程度の覚悟が必要です。2024年に広域交付が始まり、戸籍収集はぐっと効率的になりましたが、廃棄・焼失証明書や附票の取得など、家系図の完成度を高めていきたい場合は、これまで通りの郵送請求が欠かせません。
行政書士などの士業は、かつて「職務上請求書」という、委任状や先祖とのつながりの証明なしに戸籍を請求できる特別な請求書を使って家系図作成を行っていました。しかし現在は、裁判所の判決により、家系図作成を目的とした職務上請求書の使用はできないことになっています。この経緯が気になる方は関連記事をご覧ください。
このように、行政書士や家系図作成業者も、実は一般の方と同じ方法で家系図作りを行っています。違いといえば、戸籍の取得や判読に関する専門的な知識・技術・経験だけです。家系図作りを自分の手で行うことはとても意義があり、楽しみながらできる方には非常におすすめです。
一方で、お忙しい方や作業に自信がない方、プロに正確な家系図を作ってもらいたいという方は、私たちのような専門業者の活用も選択肢に入れてみてください。戸籍の請求以外にも家系図作りには多くの作業がありますので、以下の記事から全体像を確認していただくことをおすすめします。








































