家系図を作る下準備の方法や心構えについてご紹介した『事前準備・知識編』を読んでいただき、「よしっ!自分の力で家系図を作ろう!」と強く決意を固めた方。「自力で作るのにはちょっと自信がないので、家系図作成業者にお任せしようかな」と心が揺れている方。家系図作りに対してさまざまな思いを抱いたことでしょう。

さあ!、ここからが家系図作成の醍醐味です。ご先祖様の戸籍を取り寄せ、どんなことが書かれているかを読む時こそが、自分のルーツへの知的体験が得られる瞬間でもあります。ただし家系図を作るために戸籍を線で結んでいく作業は、プロでも決して簡単な道のりではありません。専門的な知識や独特のテクニックも必要となってきます。それでもドキドキワクワクを味わいながら作ってみたい、という方のために、この回では戸籍の取り方、読み方についてご紹介していきましょう。

はじめに

戸籍を基に家系図を作るためには、戸籍を手元に集めなければなりません。家系図を作るために集まる戸籍の数とは、いったい何部くらいになるのでしょうか。これはどの範囲の家系図を作るかや、それぞれの家系の事情によって個人差が大きくあるので、あくまでも目安として理解していただきたいのですが、自分の名字だけという1家系の家系図を求めていれば5〜10部くらい。自分のルーツすべての全家系で家系図を作りたければ、30部くらいになることもあります。

必要とするすべての戸籍を入手できるまでには、一般的に2〜3カ月は要すると考えておいてください。これは、家系図が完成するまでにかかる全行程の内の3分の1くらいになります。戸籍を集めたところでホッとしてはいられません。それらを読み解いて実際の家系図に仕立てていくことの方が大変な作業となります。まだ3合目にたどり着いたところ、という感じです。

戸籍を読むということは、宝探しのようなものです。今目の前にある戸籍の次にどの戸籍が必要なのか、戸籍を読みながらラフに家系図をスケッチしながら進めていかなければ、頭の中がごちゃごちゃになってしまいます。最初は自分の名字を辿っていって、のちに調べる家系を増やしたい時、誰の戸籍が必要なのかをメモしながら進めていくのがセオリーです。遡っていってある世代で養子として入っていたご先祖さまがいたとすれば、そこから戸籍が一気に広がっていくことになるでしょう。このワクワク感も醍醐味の一つと言えます。自分の家系について知らなかったことが目の前で明かされていく。この感動を味わいながら戸籍に向き合っていってください。

それでは、戸籍をどうやって手に入れたらいいのか、どの戸籍を手に入れたらいいのか、戸籍にはどんな種類があるのか、戸籍には何が書かれているのか、といった戸籍に関するあれこれを1ステップずつご紹介していきましょう。

【ステップ1】戸籍を手に入れるための下準備をしよう

まず、現在の自分の戸籍とはどこにあるのでしょうか? そこがスタートラインとなります。「住んでいる場所の役所?」と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。あなたの戸籍はあなたの「本籍地」がある市区町村の役所にあります。本籍地がわからないという場合には、「住民票」の写しを住んでいる場所の役所で取得しましょう。自治体によって申請書のフォーマットは異なりますが、一般的には必要な内容の記載について、本籍地に丸をすれば、本籍地が記載された住民票を手に入れることができます。

・戸籍と住民票って何が違う?

「戸籍」とは親子関係や姻族関係などを公的に証明するもので本籍地に置かれています。「住民票」は居住地に設定するもので、親子関係と連動させるために本籍地が記載されています。

・本籍地とはどこ?

日本国内で番地がある場所であれば、どこでも自由に設定することができます。実際に皇居を本籍地にする人は多く、他にも歌舞伎座であったり、熱烈に応援するプロ野球チームの本拠地スタジアムであったりしても構わないのです。一般的には親の戸籍で設定されていた場所のままになっているケースが多いのではないでしょうか。もしその後に持ち家を手に入れた場合には、その場所を本籍地とするのが自然な流れだと思います。

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戸籍はどうやって手に入れられる

戸籍は本籍地のある市区町村の役所で取得するわけですが、父方の実家や自分にとっての実家に本籍地があって、今住んでいるところからとても遠いということはよくあります。だからといってその役所に取りに行かなくてはいけないということはありません。郵便で取り寄せることができます。これは、自治体ごとに異なるサービスではなく、戸籍法で定められた全国画一のシステムとなります。

<戸籍法10条三項>
第一項の請求をしようとする者は、郵便その他の法務省令で定める方法により、戸籍謄本等の送付を求めることができる。

戸籍の取得、役所窓口or郵送のメリット&デメリット

「戸籍は取りに行く?送ってもらう?」

取得方法 メリット デメリット
役所窓口 役所の担当者と直接やりとりができる 時間と交通費などの経費がかかる。説明や確認が足りないと二度手間になる
郵便 時間と交通費が節約できる 役所担当者への説明が難しい。必要書類や切手・小為替などの準備が手間

上の表の通り、一長一短といっていいと思いますが、忙しい日常の中で、できるだけ戸籍の取得は効率よく早くやってしまいたいものです。そのため、ここは事務的に郵送という手段を使った方がオススメです。実際にプロも現地に足を運ぶことはなく、郵送で取得しています。

本籍地のある場所を把握

特に地方においては、市区町村合併・再編成などで本籍地がどこにあるのかわからなくなってしまうことが多くあります。戦前や、もっと古い戸籍の本籍地は県以下がまったく見当つかないという事態にも。こういう場合は、戸籍に記載されている本籍地をインターネットで検索してみましょう。現在どの市にあるかということまでわかればいいのですから、意外とすんなり解明できるはずです。ネットの検索で苦戦するようであれば、本籍地の都道府県庁に問い合わせるのが間違いありません。

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【ステップ2】戸籍の請求書を書いてみよう

役所の窓口に出向いて申請するか郵送で請求するか、2通りの方法があることをステップ1で解説しましたが、ここでは郵送の請求書を見ていきましょう。請求書を書く段階になると、戸籍に関する基本的な知識が必要になってきます。一つ一つ解説していきますのでぜひ覚えてください。

戸籍の請求書はここで手に入れられる

各市区町村で請求書のフォーマットがあり、役所のホームページからダウンロードできるようになっています。「○○市 戸籍 郵送」というワードで検索すると、ほとんどの場合すぐにヒットするはずです。実際にはどうしてもそれぞれのフォーマットでなければならないよいうことはなく、必要事項がだいたい同じ順序に書かれていれば自分で作った請求書を使っても大丈夫となっています。公式な統一フォーマットが存在しないので各自治体が独自に作成していると思っていただければいいでしょう。

戸籍を請求できる人は誰か

戸籍法第10条一項で定められています。戸籍に記載されている者、その戸籍から除かれた者、その配偶者、直系尊属の者、直系卑属の者とされています。兄弟姉妹・伯父伯母・叔父叔母は直系に対して傍系と言います。傍系の戸籍が必要な場合は、委任状を作成してもらって申請しなければなりません。

<戸籍法10条三項>
戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書の交付の請求をすることができる。

戸籍の請求書に書く必要事項とは

基本的な項目としては、

  • 「請求者」の住所・氏名・生年月日・筆頭者から見た関係・昼間連絡可能な電話番号、これは携帯の番号を書いておきましょう。
  • 「必要な戸籍」として本籍・筆頭者の氏名・生年月日、この請求でいくつかの戸籍を取りたいときは、最も新しい戸籍の筆頭者の「氏名 他」と書いておきましょう。
  • 「証明書の種類」は、下記の図を参照して何が取得できるかわからない場合、戸籍・除籍・改製原戸籍の謄本に各1通・附票に1通と記入します。「抄本」ではなく、必ず「謄本」を取得しましょう。
  • 「使い道」「請求理由」という項目には「家系図作成のため」と明確に書いた方がいいです。さらに「そちらにある(筆頭者氏名)のものおよび、その直系尊属のもの(出生から死亡まで)をすべてください」「戦災や保存期間経過による破棄により戸籍を出せない場合は、その旨の証明書をください」と書いておきましょう。この欄にあらためて請求者の氏名と携帯番号を書いておくと、先方の役所で何か不明な点や報告がある際に連絡しやすいと思います。

覚えておきたい戸籍の種類と附票

家系図を作成するために必要となる戸籍は常に「謄本」です。全部事項証明書が「謄本」であるのに対して「抄本」は一個人のみを証明する個人事項証明書となります。

家系図作りでは除籍謄本と改製原戸籍を取得していくことになるのですが、両者の違いは戸籍の終わり方で呼び名が変わってきます。除籍となる原因については除籍謄本の最後に書いてあります。例えば、戸主が隠居して家督を相続した新しい戸主の戸籍謄本が新たに編製されるといったことです。改製原戸籍は法改正で新しいフォーマットに書き換わることで閉鎖された戸籍ですが、実際に書き換わるタイミングはそれぞれの役所の事情によってさまざまです。改製年から10年以上経って書き換わるといったケースもあります。

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「3種類の戸籍と附票」

通称 正確な名称 内容 取得手数料
戸籍謄本 (戸籍の)全部事項証明書 現在有効な戸籍(コンピューター管理)の内容の写し 450円
除籍 除籍謄本 (死亡・転籍等で)戸籍から誰もいなくなって閉鎖された戸籍謄本 750円
原戸籍 改製原戸籍 戸籍の形式を変更する法律の改正によって閉鎖された古い戸籍謄本 750円
附票 戸籍の附票 戸籍の附票で住所の移動などが記載。保存期間が5年、捨てられていることが多い 300円(郵送の場合400円となることも)

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保存期間から取れない謄本もある

戸籍法は市区町村役所において戸籍を保存する期間を定めています。現在は150年となっている保存期間ですが、平成22(2010)年6月1日の戸籍法施行規則の改正以前は80年とされていました。その保存期間を踏まえて計算してみると、昭和5(1930)年までに除籍となった謄本、原戸籍は廃棄されてしまっていることになります。

では、それ以前の大正時代や明治時代の除籍や原戸籍は取れないのかというと、そうでもありません。保存期間は定められていますが、廃棄するかどうかは市区町村に委任されているため、廃棄されていないければ保存期間が延長されたことで請求にも応じてくれるようになっています。正確に実態は把握されていませんが、かなり多くの自治体において廃棄はされておらず、明治時代の謄本も取れるようになっています。

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【ステップ3】戸籍の請求書を郵送しよう

「戸籍謄本等郵送請求書」を書いたら、遠方にある役所に郵送しましょう。

請求書と一緒に何を送ればいいか

郵送請求する際一緒に封筒に入れるものは以下のものとなります。不備があると役所の担当者から電話がかかってきて足りないものがあった旨教えてくれますが、二度手間になる上、時間も余計に掛かってしまいますので、慎重にチェックしながら揃えてください。

①戸籍謄本等郵送請求書
記載に漏れや間違いがないかどうかしっかりチェックしましょう。
②定額小為替
戸籍謄本などを交付する際の手数料として掛かる費用です。ゆうちょ銀行(郵便局)の窓口で買い求めます。額面は最大1000円ですが、発行の際に1枚あたり100円の手数料が発生します。どれだけの部数の謄本が取れるかわからないので、最初に請求する際には1万円ほど同封するのがオススメです。これで足りてしまった場合は、残金分が定額小為替で返送されてきますし、足りなかった場合は電話で連絡が来るので追加分を送付します。2回目以降の請求では取れる謄本の部数も少なくなってくるため、5000円くらいを同封すればいいでしょう。
③身分証のコピー
運転免許証・パスポート・健康保険証・個人番号カード・写真付き住民基本台帳カードの写しなどです。請求先の自治体にによって求めている身分証が微妙に違いますので、ホームページや電話などで確認してから送付するようにしましょう。
④返信用封筒
役所から謄本を送る際の封筒です。どれだけの部数が送られて来るかわからないので、大きめの封筒を送った方がいいでしょう。例えば長3封筒だとA4の紙を三つ折りにしなければなりません。折り傷ができると、古い謄本を読む際に細かい字が読みにくくなってしまうこともあります。また封筒に入りきらなくて、大きい封筒を再度送ってほしいという連絡が来ることもあります。大は小を兼ねるということで、A4が折らずに入る「角2」以上の封筒を送るようにしましょう。宛名を正確に書いておくこともお忘れなく。
ちなみにプロは主に郵便局のレターパックライトを使います。全国統一360円で、A4サイズを厚さ3cm・4kgまで送れます。追跡番号で発送からお届けまで追跡ができるのも、安心でオススメです。
⑤返信用切手
角2の封筒を返信用として送る場合には、定形外郵便の500g以内となる380円分を送れば十分でしょう。その内最低料金分の120円(50g以内)を封筒に貼っておいてもいいです。レターパックライトを送る場合は切手は必要ありません。
⑥申請者との続柄がわかる戸籍のコピー
実はこれが最大の難関です。現在有効な戸籍謄本や、以前に自分が記載されていた戸籍、例えば親の戸籍であれば、取得する際には必要ありません。
古い戸籍を請求する際には、その戸籍に自分の直系先祖が入っていることを証明する必要があります。そのため、これまでに取得してきた戸籍のコピーを同封して、直系先祖との繋がりを明らかにしなければならないのです。戸籍は最近のものから順々に繋いでゆくわけですから、一世代ずつ正確に読んで直系の家系をスケッチしておけば、繋がりを証明するのも難しくないでしょう。

役所からの問い合わせの電話があったら

何か不十分な点があると役所の担当者から電話がかかってきます。よくあるパターンとしては、

  • 身分証のコピーなど足りない書類がある
  • 小為替・切手が足りないので追加で送ってほしい
  • 返信用の封筒に書類が入りきらないので、大きい封筒を送ってほしい
  • 内容の確認と報告
  • どの戸籍まで取るのか、請求書からわからないので確認したい

といった内容です。請求書の欄では細かい指示や要望が書ききれなかったり、文書だとうまく伝わらなかったりすることもあります。こうした場合は役所の担当者に電話で説明しなければなりません。戸籍のことをある程度理解して、要点をわかりやすく伝えられるようなコミュニケーション能力も求められます。

役所から返送されてくるものとは

待ちに待った見覚えのある封筒が役所から返送されてきました。その中身はどういったものでしょうか。

  • 戸籍謄本・除籍・原戸籍・附票・廃棄証明書など
  • 小為替のお釣りとなる小為替
  • 手数料のレシート
  • 切手の余り

それでは、送られてきた謄本などをじっくり読み込んでいきましょう。

まとめ

家系図作成業者は、戸籍の取得や判読に関する専門的知識と技術・経験を備えています。ただしプロとはいえ戸籍の取得は、一般の方と同じ条件で行なっていることをご理解ください。

ちなみに、司法書士・行政書士などは「職務上請求書」といわれる、先祖とのつながりを証明しなくても戸籍を請求できる用紙を持っています。しかしながら裁判所の判断では「家系図作成は司法書士・行政書士の業務ではない」とされているため、家系図作成を目的とした職務上請求書の使用は違法行為となっています。

また、相続手続きと家系図作成では戸籍の用途が違ってくるため、読むべきポイントも異なります。そのため司法書士や行政書士でも簡単な家系図を作ることはできますが、冊子状になっている詳細な系譜は専門業者でないと作ることはできないと断言していいでしょう。

こうしたことから、家系図作成業者も一般の方も司法書士や行政書士もスタートラインは同じ。戸籍の請求・取得はスキルの有無に限らずどなたでもできることなのです。

戸籍の請求・取得と判読は同時進行させていかなければなりません。戸籍を読み、ラフな家系図を描きつつ次に請求すべき戸籍を見極めていく作業が続いていきます。プロと一般の方との間には、作業を進めていく上での効率に大きな差が出てきてしまうものです。その差を産むのが専門的知識と技術・経験ということになります。

家系図作成のためにじっくり時間をかけられない、作成のプロセスを楽しむより結果を急ぎたいという方は、スタートから家系図作成業者に依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。