相続手続をするときや、家系図を作るとき、必ず必要になるのが、改製原戸籍・除籍謄本・戸籍謄本の3つの証明書です。戸籍がコンピューター化されている市区町村役場では、戸籍全部事項証明書、戸籍一部事項証明書とも呼ばれます。戸籍というもの自体、日常的に触れることが少ないものですから、どういったものなのかご存知でない方も多いと思います。

相続の際に集める戸籍は、相続人が確定できる範囲で取得すれば足りるため、必要な通数はそれほど多くありません。一方、戸籍を辿って家系図を作る場合は、現在取得できる最古の戸籍である明治19年戸籍につながるまで多くの原戸籍と除籍謄本を集めなければならないため、深い知識と技術が求められます。相続手続を日常的に行っている専門家でも、家系図を作るために戸籍を集めて読み込む、となると自信がない!という方も実は多いのです

そこでこの記事では、これまで家系図を作るために何千もの改製原戸籍・除籍謄本・戸籍謄本を取得してきた家系図のプロである私達が、それぞれの戸籍の種類の違いや、読み方を徹底解説します。

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戸籍と住民票の違い

住民票

戸籍と混同しがちな書類として「住民票」があります。住民票は戸籍に比べて、普段の生活でも取得して手に取る機会が多いものですから、よくご存知の方も多いと思います。まず最初に住民票と戸籍の違いについて簡単に整理しておきましょう。

戸籍と住民票の比較表

  戸籍 住民票
請求先の自治体 本籍地の市区町村役場 住所地の市区町村役場
証明する内容 家族との関係姓(親子・兄弟姉妹・出生・結婚・死亡等) 住所・世帯に関すること
外国人 載らない 載る

このように、戸籍と住民票は目的も完全に別モノです。本籍地と住所地が同じ市区町村にある方は、同じ役場で戸籍も住民票も取得することができるため、特に意識していないかもしれません。しかし戸籍と住民票は実は“連動”しています。戸籍の“附票”には住所が記載されますし、住民票にも本籍地が記載されます。人が亡くなった届出も2ヶ所に提出しなければいけないわけではありません。つまり、戸籍と住民票のどちらかの変更の手続を行うと、市区町村役場の間で連絡がされ、お互いの情報が共有される仕組みになっているのです

これは何とも複雑な仕組みといえますが、現状日本ではこの仕組みで運用されているため、細かいことは考えずにこれに沿って様々な手続きしなければいけません。私達からみても決して合理的な仕組みとは思いませんが、戸籍制度にも歴史があり、これまでの運用の積み重ねもあるため、簡単に変更できる状況ではありません。戸籍制度の歴史については関連記事に詳しく書いています。

「戸籍の歴史」の解説記事戸籍制度の歴史とは?いつから始まったものなのか。

住民票はあくまで住所を証明する書類のため、住民票で先祖を辿ることはできません。家系図作りにはほとんど使いませんが、唯一使う場面としては、「自分の本籍地がわからない場合」です。自分の戸籍は本籍地を管轄する市区町村役場に請求しますので、本籍地がわからないと家系図作りを始めることができません。最近では運転免許証にも本籍地が記載されなくなったので、自分の本籍地がわからない人も少なくありません。そんなとき、自分の本籍地を調べる目的で本籍地が記載された住民票を取得して、本籍地を確認するのです。

戸籍は実は3種類ある!?

驚く男性

戸籍の読み方を解説する前に、戸籍とは何なのか?きちんと知識をつけておくことが大切です。「戸籍」とは大きな意味では、以下の3種類のことをいいます。この記事中で「戸籍」という言葉が出てきたときは、この3つのいずれかを指すと考えて下さい

1.改製原戸籍(かいせいげんこせき・はらこせき)
2.除籍謄本(じょせきとうほん)
3.戸籍謄本(こせきとうほん)

この3種類です。同じ「戸籍」ということもあり似たようなものですから、この3つを厳格に区別できなくてもある程度の戸籍集めや家系図作りはできるかもしれません。しかし深く戸籍を読み込み、正確に家系図を作るためには、この3種類の戸籍の違いを把握しておく必要があり、家系図のプロはこの3つの違いを必ず把握しているものです。

戸籍を取得する先の市区町村役場とのやり取りでもこの3つの区別は大切です。役場の人は、専門知識がない一般の方にもお構いなく「原戸籍(はらこせき)」、「除籍(じょせき)」、さらに戸籍謄本のことを「全部事項」(コンピュータ化された戸籍から出力する証明書のこと)と呼んだりするからです。実際に戸籍の請求を行うときにも申請書にこの3種類のうち、どの証明書を請求するのか指定するチェックボックスがあります。役場を相手にスムーズに戸籍を取得していくためにも、この3つの区別は大切なのです。

「謄本」と「抄本」の区別もある

他に、戸籍“謄本(とうほん)”と“抄本(しょうほん)”という区別もありますが、謄本が全て人物が記載されたもの、抄本は一部の人物が記載されたものという区別ですから、家系図を作る上では抄本を取得することはなく、謄本だけ取得すれば問題ありません。

戸籍の3つの種類を理解する!

黒板と教師

1.改製原戸籍(かいせいげんこせき・はらこせき)

戸籍の1種である改製原戸籍は、「かいせいげんこせき」と読みます。一般的には「原戸籍(はらこせき)」と呼ばれることが多いです。この改製原戸籍は、名前で理解しようと思うと難しく感じますが、「改製される前の原(もと)の戸籍」という意味で、戸籍の様式の変更によって戸籍が新しいものに交換された場合の古い戸籍のことなのです

2.除籍謄本(じょせきとうほん)

除籍謄本も戸籍の1種です。専門家や役場の間では「除籍(じょせき)」と略して呼ぶことが多いです。除籍謄本はその呼び名の通り、「その戸籍に載っている人が全て抜けてしまい(除籍された)、誰もいなくなった戸籍」のことをいいます。「除籍」は、本籍地を変更した場合(転籍)、死亡した場合、結婚して新しい戸籍に移った場合に行われます。

<ポイント>閉鎖された理由によって呼び方が違う!

この改製原戸籍と除籍謄本の違いは、「どんな理由で戸籍が閉鎖されたのか」という違いです。全員がいなくなった戸籍が「除籍謄本」、新しい戸籍に切り替わった元の古い戸籍が「改製原戸籍」です。もう閉鎖されている戸籍のため、記載されている内容が変わることはなく、最新の改製原戸籍、最新の除籍謄本という概念はありません。相続手続に使う除籍謄本と改製原戸籍に有効期限がないことも、そのことが理由なのです。

3.戸籍謄本(こせきとうほん)

一方「戸籍謄本」は、改製原戸籍や除籍謄本のような“抜け殻”の戸籍ではなく、現在有効な読みやすい横書きの戸籍のことを戸籍謄本といいます。戸籍がコンピューター化されている市区町村では、戸籍謄本は「全部事項証明書」、戸籍抄本は「個人事項証明書」と読み替えられています。日本の戸籍に登載されることは、実は日本人であることの証明にもなっていて、結婚や相続手続の他にパスポートの申請をするときにも戸籍全部事項証明書が必要になります。日本人じゃないと家系図が作れないといわれるのもこれが理由です。今生きている人が載っていて、読みやすい横書きの一番新しい戸籍が戸籍謄本だと覚えておいてください。

そしてその戸籍から誰もいなくなったら除籍謄本、戸籍の改製によって切り替えられたら改製原戸籍に変わります。さらにポイントなのが、新しい戸籍には古い事柄は引き継がれないというルールです。4人家族の1人の兄弟が結婚して除籍になった後に、新しい戸籍へ切り替えられたら、その除籍になった兄弟は新しい戸籍には載りません。1通の戸籍では足りず、過去に遡ってたくさんの戸籍を集めないと先祖のことがわからないのは、このルールがあるからなのです。

戸籍の種類を一瞬で見破る方法とは

音速機

このように戸籍には3つの種類があり、家系図作りのために「戸籍」を集めるといっても実は上の3種類の戸籍を集めることになり、そのほとんどは改製原戸籍と除籍謄本です。実はこの種類を見分けるポイントがあります。その戸籍の種類を一瞬で見抜くコツとは「戸籍の末尾」の証明文を見ることです。すると、「この謄本は、“〇〇”の原本と相違ないことを認証する。」等と書かれ、すぐとなりに市区町村長の印があるはずです。「〇〇の原本」の部分を読めば、除籍謄本、改製原戸籍、戸籍なのかは一目でわかります。その戸籍がどのような理由で閉鎖されたのかがわかれば、その戸籍を詳細に読み込む際の参考になりますので、覚えておいてください。

戸籍の年式と種類を把握する

日本の戸籍制度は明治5(1872)年に始まりました。現在取得することができる最も古い戸籍は明治19(1886)年に法律が改正されたことによって書式が定められた「明治19年式戸籍」です。以降、4回の大きな法改正によって戸籍の書式が書き換えられ、現在まで5種類の年式が役所に保管されています。まずは、戸籍の年式とその特徴を覚えてしまいましょう。

現在取得することができる戸籍<年式別>

戸籍の種類 作られた期間 管理方法 様式 特徴
明治19年式 明治19年10月16日〜明治31年7月15日 「家」単位・戸主を中心とした一族全員 縦書・手書き 現在取得することができる最も古い年式
明治31年式 明治31年7月16日〜大正3年12月31日 「家」単位・戸主を中心とした一族全員 縦書・手書き 「戸主となりたる原因と年月日」が記載される
大正4年式 大正4年1月1日〜昭和22年12月31日 「家」単位・戸主を中心とした一族全員 縦書・手書き 終戦まで続いた家を単位とする最後の様式
昭和23年式 昭和23年1月1日〜平成6年12月1日以降データ化まで 夫婦と子供(2世代まで) 縦書・手書き・タイプ 夫婦と未婚の子を単位とした戦後の新憲法下で編製
平成6年式 平成6年12月1日以降順次データ化 夫婦と子供(2世代まで) 横書・データで管理 コンピュータ化された現行戸籍

以上の5種類の年式があり、縦書き・横書き・手書き・タイプ式の体裁の違いもあり、年式ごとに記載される内容も微妙に異なります。さらにいえば、取得できる最も古い戸籍である明治19年戸籍の前の明治5年式戸籍というものも存在していました。

封印された明治5年式戸籍の話

戸籍制度のスタートと共に編製された明治5年式戸籍、通称「壬申戸籍」と呼ばれる戸籍も実在しました。この壬申戸籍を現在取得することはできませんので、存在だけ知っておけば問題ありません。戸籍の記載にもよく「明治5年以前〇〇」等をいう記載が出てきます。その場合は、壬申戸籍が作られる前、はるか昔の出来事だったのだな!と理解しておけば大丈夫です。なぜ壬申戸籍が見られないのかが気になる方は以下の関連記事をお読み下さい。

「壬申戸籍」の解説記事国によって封印された「壬申戸籍」。閲覧できない理由とは?

戦前と戦後の戸籍の大きな違い

戦前の戸籍、つまり大正4年式までは「家」を単位にしていたのに対して、戦後の昭和23年式からは「個人」が単位となりました。

戦前は家長である「戸主」が筆頭となって戸籍が構成されていました。戸主には戸主権という権力があって、家にまつわる様々なことを決定する権限がありました。戸主が隠居して家督を次の世代に相続すると、新たに戸籍が編製されるシステムになっていました。戸籍を構成する者は家単位ということで自由度が高く、幅広く親戚までが一つの戸籍の中にいるということもありました。

一方、戦後の制度では「夫婦と未婚の子」という単位が基本となり、家督や隠居といった家制度は廃止されました。子が結婚するとその新しい夫婦で新たな戸籍を編成することになり、親の戸籍からは除籍されることになります。このように戦前と戦後では、戸籍の様式が変わったというだけではなく、家制度をもとにした日本の家族の在り方も変わっていったのです。戦前の戸籍を読む上で、この違いは非常に重要なので、その違いを意識した上で読むようにして下さい。

「家督相続」の解説記事家督相続や戸主権って何?戦前の制度をわかりやすく解説!

相続と家系図では集める戸籍の量が全然違う!

相続手続では亡くなった方の戸籍と、その相続人の現在有効な戸籍だけを集めれば足りるため、数通の戸籍で済むことが大半で、10通以上になるケースは少ないです。しかし家系図作りのための戸籍集めは明治19年の戸籍に辿り着くまで、何度も取得を繰り返さなければいけないため、複数の系統(名字)を辿ると多いケースで30通以上にもなります。家系図作りでは、閉鎖された古い戸籍である改製原戸籍謄本と除籍謄本を数十通取得して先祖を辿っていくことになり、その古い戸籍を正確に読み解いていかなければいけないのです。家系図作りのための戸籍の取得方法については下の記事を参考に進めてみて下さい。

「戸籍の取り方」の解説記事家系図の調べ方・戸籍の取り方をプロが詳しく解説します!

改製原戸籍と除籍謄本の読み方

戸籍の「字」が読めない!という大きなハードル

挫折する女性

昔の戸籍(改製原戸籍・除籍謄本)を読むときに必ずハードルになるのが、手書きで書かれた「文字」が読めないというものです。実は専門業者である私達でも読み込みに苦戦する場合もあります。というのも、タイプライターがない時代に書かれた昔の戸籍は手書きで書き込まれているので、書く人のクセや文字が潰れている等の理由によって読みづらいケースが多々あるからなのです。

読めない字をいつまでも眺めていても、読めるようにはなりません。読めない字にも①大字(だいじ)、②変体仮名(へんたいがな)、③崩し字、異体字、という種類があり、その読めない字の正体をきちんと把握しなければならないのです。戸籍の字の判読方法については、下の関連記事を参考にしながら何とかクリアして下さい

「古い戸籍の文字を読むコツ」の解説記事古い戸籍の読めない文字を読むコツ・裏技を大公開!

原戸籍・除籍謄本を読むコツ

家系図作成のプロは仕事として多くの戸籍を読み込んでいることから、戸籍判読における豊富な経験と知識を蓄積していて、組織のチーム力を活かして取り組むこともできます。一方で一般の方が戸籍を読み解いて家系図を作る作業というのは、おそらく一生の内に一度あるかどうか、というところでしょうから、経験を蓄積させるのが難しい作業だといえます。でもそんな不利な状況でも、なんとか作業を続けていかなければなりません。そこで、私達が戸籍を読む際のポイントを紹介します。

1.戸籍の年式ごとに読むポイントを把握する

戸籍の年式の違いは理解しておきたいものです。年式がわかると、どの部分に何が書いているのか見当がつくようになるからです。書いてあることにアテがつくと、格段に読みやすくなってきます。

2.読めない部分と同じ内容が書かれている場所を探す

もしひどい癖などで読めない部分が出てきたら、その戸籍の別の箇所や別の戸籍に同じ文字が書かれていないか確認してみるべきです。特に地名については住所表記が今と異なることがほとんどですから、他の戸籍の表記を確認したり、インターネットも活用することも大切になってきます。

3.戦前の時代背景も理解しておく

今は現代、読む戸籍は昭和・大正・明治時代に作られた戸籍です。現代の感覚で読むと理解できない事柄もたくさん出てきます。特に戦前と戦後では社会の根本的なルールが変わっていることに気づくはずです。現代の戸籍は親子が1つの単位ですが、戦前は「家」が一つの単位だったり、隠居や家督相続という聞き慣れない言葉が出てきたりします。戦前の家族の在り方についても知識をつけておくと、古い戸籍が読みやすくなります。

戸籍から最低限読み取らなければいけない情報とは?

本

戸籍を読むといっても、戸籍の1語1句を端から端まで読み込んでいくのは非効率的です。最初のうちは次の戸籍への「つながり」を意識して最低限必要な情報だけ読み取れるように心がけ、次の原戸籍・除籍謄本を取得していかなければ、家系図作りを進めていくことができません。戸籍から読み取らなければいけない最低限のことを3つご紹介します。

1.その戸籍がいつからいつまで有効だったかを把握する

2.その戸籍がどんな理由で作られて、どんな理由で閉鎖されたのかを把握する

この二つは表裏一体と言っていいでしょう。戸籍が作られたり閉鎖される理由は、法律の改正・婚姻・先代の隠居や死亡による家督相続などが考えられ、戸籍のはじめの方の「戸籍事項」の欄に記載されています。戸籍1つ1つの成り立ちと有効だった期間を把握することで、前後の戸籍とのつながりが見えてきます。

3.次の戸籍の請求先(本籍地・戸主または筆頭者)を把握する

「次」とは取得する順序によることで、より古い戸籍をとるための「次」ということですが、どこの本籍の誰につながっている戸籍なのかを把握し、次の戸籍の請求を行い、その作業を繰り返していく。その結果、戸籍がつながっていくのです。
この「戸籍がつながる」という言葉は業界用語のようなもの。戸籍調査の行程の中で頻繁に交わされるキーワードで、古い戸籍と新しい戸籍の有効期間(2つ戸籍の年月日)が繋がった時の表現です。ただし結婚や転籍・分家などで戸籍から出ている場合は、出た時から次の戸籍が作られた時の年月日が繋がった時のことを意味します。戸籍の有効期限と必ず一致するわけではありません。

この繰り返しの作業となるのですが、判読しつつメモとして簡単な家系図を作って複数の家系の戸籍を同時に効率よく取得申請してゆくのがプロの進め方です。業者に依頼せずに自力で取り組まれる方は、多少非効率でも自分のペースで最終的に完成させられればいいことになりますので、ライフワークのように進めていけばいいと思います。

戸籍を読む上で注意すべきポイント

注意

【ポイント1】改製された(新しく作られた)戸籍には記載されない人がいる

法改正に従って新しい戸籍の様式に移しかえられた戸籍には、それ以前の改製原戸籍に記載されていた人が抜け落ちてしまうことがあります。どういう人が新しい戸籍に記載されないのかというと、改製の際にすでに死亡・婚姻・養子縁組・転籍などの理由で以前の戸籍から抜けている人です。戸籍から抜けた人は、古い戸籍だと名前の欄にバツ印がつけられ、新しい戸籍だと「除籍」の表示がされ、現在戸籍に入っている人と区別されます。そのため、家族や先祖の全容を把握するためには、必ず複数の戸籍を照らし合わせなければなりません。改製原戸籍と新たな戸籍を必ず対比させて、記載内容を確認しましょう。

【ポイント2】戸籍にも誤字や間違いがある!?

国が管理する文書が間違っている!?なんて信じられないことかもしれませんが、戸籍を書く人も人間ですから間違えることも当然のようにあります。タイプライタ―や戸籍がコンピューター化されてからはほとんどなくなったとされていますが、手書きの時代には名前や住所の誤字・脱字という書き損じが時々ありました。

私達が家系図作りに携わる中で、戸籍の間違いを見つけるケースは数え切れません。そもそも明治時代は戸籍制度がまだ確立されておらず、戸籍の書き方や管理方法も地方によって違いがあったのです。実際に明治時代の戸籍は、国や地方の公務員ではなく「戸長」と呼ばれる民間の庄屋や名主等の地方の有力者が国の代わりに管理していました。

つまり戸籍の記載に違和感があった場合は、その戸籍自体が間違っている可能性も疑わなければいけないということになります。古い戸籍を申請する際には、自分と取りたい先祖の戸籍の繋がりを収集した戸籍のコピーを添付して証明しなければなりませんが、名前の誤字が原因で証明できず取得できないといった事態に陥ったことも過去にあります。

【ポイント3】戸籍が廃棄されてしまっている場合もある

戸籍には現在150年という保管期限が定められています。昔から150年の期限だったわけではなく、平成22年までは80年とされていました。そうすると、昭和5年までに除籍となった謄本、原戸籍は自治体の手で廃棄されてしまっている可能性があることになります。また保管期限とは無関係に戦争・天災・災害などで消失していることもあり得ます。

1.役場で戸籍を廃棄してしまっている
2.戸籍が災害等によって消失してしまっている

上のケースはともに東京・横浜・大阪等の都市部に多く見られます。関東大震災等の災害をはじめとして、戦争のときに都市部が空襲の標的になることも多かったこと等が原因と思われます。戸籍を廃棄してしまうケースが多いのも都市部が多い印象です(理由は不明)。また、地方の小さな町役場でも、昔火事があった等の事情で燃えてしまっているケースもあります。このように戸籍が廃棄や消失してしまっている場合は、たとえ自分の先祖の戸籍であっても残念ながら取得できません。捨てた証明である「廃棄証明書」を送ってもらい、気持ちを切り替えて別の系統の先祖を辿ってみましょう。戸籍から先祖が見つけられなかったら、墓石や過去帳を頼りに先祖を辿っていく方法も残されています。

まとめ

いかがだったでしょうか。家系図作りを目的として戸籍を読む場合、一筋縄ではいかないものだということがご理解いただけたと思います。自分の直系の先祖の戸籍を全て収集するだけでも相当な作業が必要ですが、原戸籍や除籍謄本を読み込むのも大変な作業になります。全ての戸籍を集めるためには戸籍を正確に読めなければいけませんので、戸籍の「収集」と「判読」は同時に進めていく作業です。以下の記事も参考にしながら、腰を据えて取り組んでみましょう!

「戸籍の取り方」の解説記事家系図の調べ方・戸籍の取り方をプロが詳しく解説します!