家系図を書いてみよう!と思い立って、まず自分の記憶を辿って順番に親族を書き始めると、「家系図の書き方にルールってあるのだろうか?」と思うはずです。家族のカタチは十人十色、世の中に一つとして同じ家系図がないように、実は家系図に正確な書き方というものはなく、自分が思うがまま自由に書いていいものなのです。

…とはいっても、キレイに書くための合理的な書き方というものは存在します。さらに、家系図は自分ひとりのものではなく、家族全員のものであることが多いでしょう。そうすると、“誰にでもわかりやすい書き方”や“家族に配慮した書き方”が求められます。

この記事では、家系図の書き方の基本ルールと、家族への配慮がされた、どこに出しても恥ずかしくない、合理的で美しく、わかりやすい家系図の書き方について解説します。家系図は家族の中でつないでいくバトンリレーのバトンそのものであると共に、家族が織りなす一つの芸術作品なのです。ぜひ芸術家になった気分で、楽しみながら取り組んでみて下さい。美しい家系図ができたら、きっと大切な家宝になるはずです!

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はじめに

まず、“良い家系図”と“悪い家系図”というものを整理しておきましょう。

<良い家系図とは>
・パっと見た目が美しい
・誰が見てもわかりやすい
・機能美が感じられる
・合理的に家族が配置されている
・家族や先祖に対する配慮がある

<悪い家系図とは>
・パっと見がゴチャゴチャしている
・家族の配置に統一性がなくわかりづらい
・家族や先祖に対して失礼?な書き方

ご理解いただけたでしょうか。家族関係が複雑だと、どうしても分かりづらくなってしまうこともあると思いますが、理想は上のようなものなのです。

家系図の種類・様式

和室

家系図を書く前に決めておきたいことは、家系図の種類・様式です。家系図にも種類があるの?と思う方もいると思いますが、大きく分けて3つの種類があります。

  1. 横系図
  2. 縦系図(縦型)
  3. 縦系図(横型)

の3つです。もちろんどの様式で書いても問題ありません。しかしどの様式で書くのかが、家系図の仕上げの方法に直接関わってきます。家系図はやっぱり巻物でしょ!と考えている方は、①横系図。家系図は掛け軸にして床の間に飾りたい!と考えている方は、②縦系図(縦型)。たくさん家族や先祖を載せて、壮大な家系図を描きたい!と考えている方は、③縦系図(横型)。といった具合です。

家系図の種類 家系の数 仕上げの方法
横系図 1家系が基本 横長の巻物が最適
縦系図(縦型) 1家系が基本 縦長の掛け軸が最適
縦系図(横型) 1~4家系位まで 一般的な用紙AB版に収まるもの全て

上の中から、自分のお好みで家系図の種類を検討してみて下さい。
この記事では、最も一般的な③縦系図(横型)の書き方について解説させていただきます。

どの範囲の家族まで載せるのか?という問題

家系図を書き進めると、一体どの範囲の家族まで載せればいいの?という問題に突き当たります。

  • 何代前までの先祖を載せたらいい?
  • 両親の兄弟は載せた方がいい?
  • 祖父母の兄弟(叔父母)は載せる?
  • 叔父母の子供(叔従父)は?

といった具合に、これが少し悩ましい問題になります。もちろん家系図に載せる人物の範囲に決まりはありませんし、なるべく多くのご先祖を載せたい気持ちもわかりますが、どうしてもスペース上の制約、見やすい家系図にする上での限界はあります。そのため、家系図にどの範囲のご先祖さまを載せるのか、一定のルールが必要になってきます。

以下は基本のルールで掲載すべき優先順位が高い順になっています。必ずしもこのルールに則る必要はありませんが、参考にしてみてください。

先祖・家族の属性 載せるかどうかの判断基準
1.直系の先祖・子孫 最も重要な関係なので必ず載せたい
2.直系の先祖の兄弟姉妹 基本的に載せる。ここまで載せないと、やせた物足りない感じの家系図になってしまう
3.直系先祖の兄弟姉妹の配偶者・子供 家系図に余ったスペースやバランスをみて臨機応変に考える。直接面識のある同世代の従兄弟は載せたい
4.実子と養子 養子縁組の関係を優先的に載せて、実親子は補足的に載せる。名字を同じくする集団が「家」のため、養子関係を優先するのが原則
5.戸籍でわかる範囲以外の親族 家系図を書き始める前に、同じ家系図に載せたい家族・親戚がいないかを前もって考えておくとよい

このように、あらかじめ基本のルールを決めておくと、先々混乱せずに家系図を描いていくことができるはずです。家系図は家の数だけ、様々なケースがあるものです。そのため画一的なルールを敷くということは難しいといえます。一度決めたルールも場合によって変更する等、固く考えずに気軽に取り組みましょう。家系図に載せることのできなかった家族や先祖は、後ほどご紹介する「家系譜」に載せることで、情報を書き残すことができます。

肉親以外は載せちゃダメ?

ダメ?と問いかける犬

家系図は、同じ名字の一族を載せるのが基本ルールですが、肉親以外は家系図に載せてはいけないのでしょうか。家系図は、やっぱり「家族」のものです。一方で、今では「家族」の形も様々です。自分には肉親よりも大切に思える、本当の家族のような人がいる!ウチではペットも家族の一員だ!という方も多いことでしょう。そんな方は、是非その肉親以外の家族も載せてあげましょう。肉親以外で構成される家系図も、きっとオリジナリティのある素敵な家系図になるはずです。家系図に厳格なルールがないということも、自由でとても素晴らしいことなのです。

家系図を書く基本ルールと記号

ここから、実際の家系図の書き方のルールと記号の意味について解説をしていきます。まず書き方の基本的なルールをご紹介します。

<家系図の基本ルール・記号>
1.夫婦関係は二重線を引く
2.タテとヨコの世代を揃えて人物を並べる
3.親子関係は一本線で表す
4.養子はタテ二重線で表す
5.兄弟姉妹は右から順番に書く
6.前妻後妻は、書き方に配慮が必要
7.男女・世代で平等に書く

結婚している夫婦の書き方

結婚している夫婦の書き方

結婚している夫婦は、上のとおり二重線で結んで表します。

親子関係の書き方

親子関係の書き方

親子関係は、夫婦を結ぶ二重線の間から下に線を伸ばして表します。上下の先の延長線上に子供を載せると、線が下にまっすぐ伸びるのできれいに見えます。

養子縁組の書き方

養子縁組の書き方

養子縁組の関係は、上のように上下の線だけを二重線にする方法がおすすめです。

点線か二重線か?

養子縁組の書き方は、上の二重線の表し方と別に、点線で表す方法もあります。しかし点線で表すと、親子関係が希薄な印象を与えてしまうこともあるため、家族への配慮の点からおすすめできません。あくまで目印程度の二重線で表す方が無難です。目印も不要な場合は、他の兄弟と同じような表し方でも問題ありません。

兄弟姉妹の書き方

兄弟姉妹の書き方の見本

兄弟姉妹は、男か女か養子かは関係なく年長者から右から順番に書くのがおすすめです。続柄(つづきがら)を書くかどうかは、お好み次第で構いません。昔は生まれてからすぐに亡くなってしまう子供も多かったため、調査の程度によっては続柄の表示が飛んでしまう(長男・次男・?・四男など)こともあり、続柄ない方が見た目がすっきりする場合もあるためです。続柄を書く場合は、兄弟姉妹の順番をレイアウト次第で柔軟に変更しても構いません。

再婚(前妻後妻)の書き方

再婚している場合の書き方の見本

配偶者と離婚または死別した後、再婚している場合は、複数の配偶者を書き表すことになります。結婚している夫婦は二重線で表したので、離婚した元配偶者は一本線か点線で表すのがオススメです。しかし前妻後妻のどのように載せるかについては個人的な感情も生まれがちな部分です。家族への配慮をしながら、一切載せないということも検討するべきでしょう。以下に一定の指標になるルールを挙げておきます。このルールを元にして、自分の家族に当てはめてみて、自分にとってよりよい書き方を探してみて下さい。

<参考:離婚に関するルール>
・死別している配偶者は載せる
・子供がなく、離婚した配偶者は載せない
 →離婚して子供もいない場合は、もう家とは無関係の人になるため
・離婚した配偶者でも、子供がいる場合は載せる
 →生まれた子供から見ればお母さんが載っていないことになるため

再々婚している場合

再々婚している場合の書き方の見本

珍しいケースですが、(元)配偶者を3人以上書かないといけない場合もあり得ます。そんな場合の書き方の参考例を上に紹介しておきます。

離婚したらバツを入れる?

離婚したらバツをつける例

離婚した関係の表し方で、一本線の上にバツ印を書く方法もありますが、家族への配慮の点からおすすめできません。バツ印の下に生まれた子供の心情にも配慮しなくてはいけないためです。家系図の見た目についても、バツ印がついていると変にその部分が目立ってしまい、家系図の見た目も悪くなってしまいます。後述する相続関係説明図の場合はバツを書くケースが多いですが、家系図では書かない方が無難です。

 亡くなっている方の書き方

家系図では、亡くなっている方に印等はつけないのが通常です。一方、後述する相続関係説明図では、機能を重視するため、死亡している人物にはバツ印をつけます。家系図の場合、既にお亡くなりになっている先祖の割合が多いので、バツ印だらけの家系図になってしまいます。どうしても亡くなった先祖に印をつけたい場合は、バツ印はつけず、名前の横に没年月日を書く方法がおすすめです。

跨ぎ線(またぎせん)の書き方

跨ぎ線の書き方の見本

ご先祖の家族関係によっては、どうしても線を交差させないと家系図を書けない場合も出てきます。これは家族の中で実子と養子が混在したときに起こりやすいといえます。そんなときは、跨ぎ線(またぎせん)を活用すると便利です。しかし跨ぎ線を使わない方が家系図の見た目はよくなるため、レイアウト変更で収まるように工夫したり、無理に線で結ぶをやめることも検討した方がいいといえます。

単線と二重線の考え方

→血縁関係がある=単線(親子関係)
→法律上の家族関係=二重線(夫婦関係・養子縁組の関係)
と考えるとわかりやすいです。

家系図の書き方の見本

家系図の書き方の見本

※クリックすると拡大表示されます。

美しい家系図を書くために

美しい家系図をスムーズに書くためのポイントを整理しておきます。

  1. まず直系から書く
  2. 下書きを書く、下書きを書かない場合はパソコン(エクセル)で書く
  3. 紙に最初から本番で書くと、キレイに書くことが難しい

上下左右の間隔を均等にすることが、すっきりと整った家系図に仕上げるコツです。エクセルで家系図を書く方法だと、何度も自由に編集ができて、間隔の調整もしやすいのでオススメです。以下の関連記事で無料のテンプレートを配布して、実際の作業の手順もご紹介していますので、活用してみて下さい。

家系図に追加する情報等

家系図に載せる情報として最低限名前を載せれば家系図が完成します。しかし、名前だけが載った家系図ではなんとなく寂しく感じてしまうこともあると思います。そんな場合は、お好みに合わせて以下のような情報を追加してみましょう。

<家系図に追加する情報の例>
生年月日・没年月日・本籍地・戒名・家族の写真・家紋・◯代目の表記・続柄・名字・旧姓・性別

上のような情報を加えれば、自分好みの凝った家系図に仕上げられるはずです。最後の仕上げに検討してみて下さい。

相続関係説明図(相関図)との違い

家系図と混同しがちなものとして、相続関係説明図(通称:相関図)があります。家系図は親族関係を図にした、いわば観賞用のものですが、相続関係説明図は相続手続きの際に法務局や金融機関に提出するための、実用的な家系図のようなものです。観賞用の家系図とは目的が違うので、書き方にも以下のような違いが出てきます。

  • 先祖は相続手続に必要な範囲までしか遡らない
  • 相続関係を表すのに必要な範囲の人物しか載せない
  • 書き方はあくまで実用性重視
  • 家族や先祖に対する配慮は特にしない

このように、家系図と相続関係説明図は別のものなので、書き方を混同しないように気をつけましょう。

プロの家系図の書き方

家系図を書く専門業者は、クオリティの高い美しい家系図を書くため、Adobe Illustrator等のグラフィックソフトを使って家系図を書いているケースが多いです。専門業者はお客様の希望に合わせてあらゆる家系図の体裁に対応しなければならず、背景に家紋を描いたり、家系図に載せる情報を増やしたりする等、家系図のデザインにも自由度が求められるためです。中にはエクセルで作っている業者も存在しているかもしれませんが、完成品としての家系図の仕上がりの自由度に限界が出てきてしまうでしょう。

家系譜のススメ

家系譜

この記事で書き方を解説しているのは、ビジュアル重視の家系“図”です。家系図は見やすさを重視して描くため、記載できる人物や情報に限りが出てきます。そこで検討したいのが、家系“譜”の作成です。家系譜はいわばご先祖や家族の名簿のようなもので、ご先祖の生没年月日や、結婚、家族相続、隠居等のライフイベントを詳細に書き残すことができます。通常冊子で作るものなので、ページ数を増やすだけでたくさんの情報を残すことができます。家系図が完成したら、難易度の高い家系譜の作成も検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

これまで、家系図の書き方について解説させていただきました。家系図は家族だけのものですし、書き方のルールについても厳格なものはありませんので、家族に配慮しながら自由な発想で取り組んで下さい。この記事を参考にしながら、自分で納得できる“世界に一つだけの家系図”を描いてみて下さい。