戸籍を辿って家系図は作ってみたはいいものの、何か物足りない…。
そう感じる方も多いのではないでしょうか。日本では、「戸籍制度」というルーツ探しに便利な制度があり、誰でも比較的簡単に幕末までの先祖の名前は見つけることができます。一方で、戸籍制度はご先祖調査のために作られたものではなく、国民が住んでいる場所や家族関係を把握するための国民管理の方法の一つなので、ご先祖探しに親切に作られているわけではありません。
戸籍調査でわかること
- ご先祖の名前
- ご先祖の生没年月日
- ご先祖の家族関係
- ご先祖の本籍地(ルーツの場所)
戸籍の情報は上が主で、もちろんこの情報からでもたくさんのご先祖・出来事を読み取ることができますので、これで十分と考える方もいらっしゃると思います。家系図作り・ルーツ探しの第一歩である戸籍調査が終わってない場合は、以下の記事を参考に戸籍調査をまず始めてみて下さい。
一方で、自分のルーツについて、戸籍以上にもっと調べてみたい!と思う方も多いはずです。
- 先祖のゆかりの場所がどんな場所だったのか?
- 先祖は一体どんな暮らしをしていたのか?
- 先祖はどんな職業だったのか?
もしこんなことがわかったら、家系図に書き加えていきたいですよね。上の情報は戸籍からハッキリと読み取ることはできませんが、戸籍以外の文献を調査することで、ある程度推測ができ、状況次第でより深く知ることもできます(個人差があります)。
ルーツ探しのゴールは自分の「氏」を見つけることですが、そのゴールに辿り着くためには文献調査が欠かせないものとなります。そこでこの記事では、戸籍調査の次のステップである、ご先祖探しのための文献調査の方法、資料の調べ方について解説します。
目次
ルーツ探しの事前知識
一言に文献調査といっても、2つのアプローチが存在します。
1.江戸時代以前の先祖を調べたい場合
明治時代に作られた戸籍より、もっと昔の先祖を調べたい、なるべく昔の先祖まで見つけたい場合は、戸籍から得られる情報を頼りに江戸時代以前の歴史的な文献を調査することになります。戸籍調査が完了していれば、以下の情報を得ることができるはずです。
- 江戸時代生まれの先祖の名前
- 最古の本籍地
より昔まで遡りたい、ルーツ調査の限界まで取り組みたい場合は、文献調査をしながら、この2つの情報と照らし合わせる作業が必要になります。
2.明治時代から今までの情報を充実させたい場合
一方、より多くご先祖様を探すことだけでなく、すでにわかっている先祖が生きた時代背景や生き様を調べたい場合もあると思います。そんな場合は明治以降の資料を調査して、家系図に時代背景やストーリーを付け足していく作業になります。ルーツ探しというと可能な限り昔まで遡ることに集中してしまいがちですが、幕末以降の歴史に関する情報を充実させると、家系図にストーリーが生まれ、よりよい家系図に生まれ変わります。
この2つのうちのどちらの作業も、家系図の意義や価値を高める上でとても大切なことですので、是非同時並行で進めていって下さい。
ルーツ探しの状況は人それぞれ違う!
文献調査を始める前に、戸籍以上のご先祖調査で絶対的な方法はない!ということを理解しておきましょう。なぜなら、自分の家や資料の保存状況や境遇がそれぞれ異なるからです。既に300年以上前から続く系譜をお持ちの家もあれば、祖父母の代から上は一切わからない方もいらっしゃいます。何となくの家の言い伝えだけは聞いている方もいれば、小さな頃に親と離れ離れになってしまって先祖に関する言い伝えや情報が何もない方もいるはずです。
これまでの家系図・系譜の作成は先祖が由緒正しい武士の家系で、立派な家系の系譜を綺麗に整理して残したいと考える方が作るものでした。しかし最近では由緒正しい家系でなくても、全く先祖のことがわからない方でも、自分の存在を見つめなおすため、つまり“自分のため”に先祖探しをする方が増えています。先祖が武士でも公家でも農民でも商人でも、それ以外の職業だったとしても、自分の先祖ということに変わりありませんし、「自分探し」の面でもどんな家系の方でもご先祖探し・家系図作りに取組む価値は高いといえます。
過去を誇るよりも、社会の中で自分が子孫に誇られるような生き方をすることの方が大切です。どんな家系の方でもチャレンジしていただきたい究極の自己研鑽がルーツ探しです。自分の先祖ことは何も知らない!という方にとって、ルーツ探しは新しい発見の連続で知的興奮が得られること間違いないですし、探してもらったご先祖もきっと喜ぶ最高の先祖供養になりますので、張り切って取り組んでいきましょう!
ルーツ探しに役立つ文献一覧
文献調査の方法について解説する前に、数あるルーツ探しに役立つ文献を一覧で整理し確認しておきます。それぞれの文書に特徴があり、保存状況や探し方、読み方も異なりますので、自分の用途にあった手に入りやすい資料を見つけて、ゆっくり調べてみるようにして下さい。
家にある資料・文献
図書館に行く前に、自分の家に手がかりとなる資料がないか必ず確認しておきましょう。自分の家が本家の場合は、何か引き継がれている資料が残っているかもしれませんし、倉庫や納戸の奥に人知れず保管されているケースもあります。家族に確認して、先祖からの言い伝えが何か残っていないかも確認しておきます。聞いたときはピンとこなくても、調査を進めていく上で点がつながってくることもあります。最も手軽で身近な自分の家の聞き取り調査も忘れないようにしましょう。
新聞
新聞は、誰でも馴染みのある、親しみやすい資料といえます。現在の新聞の前身は江戸時代の瓦版と呼ばれる木の板に文字を刷り込み版画のように大量に印刷する形式でした。その後印刷技術が発達すると共に、幕末から新聞が普及し始めました。今ではインターネットや動画コンテンツの普及によって活字離れが進み、かつてほど紙の新聞は読まれなくなりましたが、明治維新後の歴史を振り返る上では新聞はとても貴重で欠かせないものになっています。
主要紙の創刊年
新聞社 | 創刊年 |
---|---|
朝日新聞 | 明治12年(1879年) |
毎日新聞 | 明治4年(1872年) |
読売新聞 | 明治7年(1874年) |
図書館での新聞調査は、時間を忘れてしまうほど楽しめますし、活字で読みやすいので要領よく進めることができます。一番最初の文献調査としてもオススメです。戸籍調査で判明した家族の節目の新聞に何がニュースになっていたのか、一通り調べてみると面白いと思います。地方のことなら地方紙もチェックしておくべきでしょう。とても小さなことや、一見くだらないと思えるような出来事でも、時代が感じられて家族の歴史に彩を与えてくれます。新聞はご先祖探しに直接つながらないことがほとんどですが、先祖が生きていた時代の背景を知るためにも新聞はチェックしておきましょう。
軍歴証明書(兵籍簿)
一般的には知名度の低い軍歴証明書は、戦争に召集されたご先祖の生き様を辿る手がかりになります。ご先祖が所属していた軍隊と階級によって請求先が厚生労働省と各都道府県に分かれます。昭和は多くの戦争があった時代で、戦前は徴兵制がしかれていましたので、自分のご先祖が徴兵されていた可能性は相当あります。自分の先祖もその激動の昭和時代を通して命のバトンをつないできてくれているということです。
戸籍調査の段階で、ご先祖やご先祖の兄弟が戦死していたことがわかる場合も実は多いものです。でもそんな先祖の軍歴を照会できることができる軍歴証明書の存在は意外と知られていません。軍歴証明書を取得することで、ご先祖が国のために戦った記録を垣間見ることができるはずです。家系図作りを通して平和の尊さを感じることもできますので、ご先祖の軍歴証明書も是非取得してみて下さい。
旧土地台帳
旧土地台帳は、明治22年から昭和30年頃まで使われていた古い不動産の登記簿のことで、全国各地の法務局にまだ保存されています。戸籍調査を行うと、先祖の本籍地がわかるため、その本籍地の地番で旧土地台帳の閲覧請求をすることができます。旧土地台帳は今の不動産登記簿と同じように、親族でなくても誰でも閲覧請求することができます。先祖が土地を所有していた場合は、歴代の当主の名前が所有者として登載されていて、ご先祖の名前がなかったら、先祖が土地を所有していなかったことがわかります。遠方でも郵送でも請求できるので、戸籍調査が終わった流れで旧土地台帳まで一気に調べてみるのがオススメです。
郷土誌
郷土誌は市町村等の土地ごとにまとめられた歴史書のような文献で、その土地の履歴書のように時系列で書かれているものが多いです。内容は歴史だけでなく、その土地の地理、信仰、伝承、社会、生活、産業までにも及びます。「〇〇町史」のような題名で地域ごとに非常に多くの文献が出版されていて、全国のどの土地でも、その土地の郷土誌が出版されていて、郷土史家と呼ばれる方も全国各地にたくさんいます。
幕末まで先祖を辿ると、たくさんの先祖のゆかりの場所を知ることができます。今では制限なく簡単に住所変更ができますが、江戸・幕末時代は藩の許可や寺請証文が必要だったため、今ほど自由ではありませんでした。つまり、江戸幕末の先祖の本籍地(住所)というのは今の住所とは異なり、重要な意味を持つことになるのです。
ルーツ探しで必ずチェックしておきたいのが郷土誌で、いわば文献調査の王道といえます。県立等の大きな図書館で簡単に読むことができる手軽な資料ですし、郷土誌を読むだけで、自分の先祖が昔どのような場所でどのように生活していたのかは最低限知ることができるからです。自分の名乗っている名字の家系だけでなく、戸籍で辿れる範囲の全ての家系(名字)の先祖を調べると、ゆかりの場所もいくつか判明しているはずですから、数冊の郷土誌を読むだけでもかなりのボリュームになります。
さらに先祖のゆかりの場所だけでなく、自分の生まれ育った場所や今住んでいる場所の郷土誌も読んでみると様々な発見があって面白いはずです。ご先祖のことだけにとらわれず、自分にゆかりのある色々な土地の郷土史を読んでみて下さい。
藩政史・分限帳
郷土誌を読むと、土地に関する情報で先祖の職業の推測ができ、かつ江戸時代にその土地を治めていた藩主や藩を知ることができるはずです。そこで次に、その藩の藩政史や分限帳を調べます。資料の中に自分の先祖が見つかったら、自分の先祖は武士だった!ということになります。分限帳の調べ方については次の解説記事をご覧ください。
江戸時代の自分の先祖が武士でなかったとしても、その土地を治めていた藩の影響は少なからず受けて生活しているはずですので、先祖の職業いかんにかかわらず藩政史は調べておきたいところです。藩主は今でいう県知事・府知事ともいえますが、今でいう県知事と比べてはるかに大きな権限を持つその土地の領主で、当時の藩はいわば小さな国のようなものだったのです。江戸時代の藩の数は260~300程度存在していたといわれ、幕府の影響を受けながらもそれぞれ独立した政治を行っていました。
藩政史を調べるときは、大名だけでなくその家臣・家紋・名字に加えて、藩士系図も調査しておくべきです。自分の先祖が大名であるケースは相当なレアケースですが、その家臣と関連しているケースは少なくないからです。また分限帳は藩ごとに藩の主導で作られるものということもあり、資料の名前もそれぞれ違いますのでレファレンスで問い合わせる時には注意するようにしましょう。
宗門人別改帳
宗門人別改帳は江戸幕府が発布したキリスト教禁止令、寺請制度の確立のため、民衆の信仰を調査するために作られた台帳で、江戸時代後期になると、今でいう戸籍・住民票のような機能を果たすようになりました。閲覧できれば貴重な情報が得られる資料であることに間違いありませんが、調べる上では以下のような注意点もあります。
- そもそも存在しているのかがわからない
- どこに保管されているのかがハッキリしない
- 活字化されていないことが多く読みづらい
こんな特徴があるため図書館のレファレンスで念の為確認してもらい、閲覧できるのであれば御の字!程度に考えておきましょう。確認できない場合はこの段階では諦めて、現地の元庄屋の家やお寺に資料を探しに行くことになります。宗門人別改帳の調べ方については次の解説記事をご覧ください。
その他の重要文献・歴史資料
上に掲げた一般的なもの以外にも、先祖探しを行う上で、重要な文献は非常に多く存在します。ここで全てを解説することは困難ですので、代表的なものを紹介しておきます。
1.尊卑分脈(そんぴぶんみゃく)
尊卑分脈は室町時代の公卿である洞院公定(とういんきんさだ)が編集した初期の系図集です。平安・室町時代からの源平藤橘を始めとする諸氏の系図が記され、資料としての信憑性も高いため、家系研究の基本書とされている文書です。古い系図集の中で最も信頼できる資料のため、もし自分の家系がこの系図に辿り着いたら、そこが正にゴールであって、それ以上先祖を遡ることは無理!と心得ておきましょう。
2.新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)
新撰姓氏録は平安時代の京都・五畿出身の古代の氏を記した文献です。嵯峨天皇の命により万多親王・藤原園人の手により完成しました。1182氏が「皇別(天皇家から分かれた氏族)」、「神別(神々から分かれた氏族)、「諸蕃(渡来系の氏族)」の3つに分類されていて、古代研究の重要な史料となっています。自分の「氏」を見つけるための重要参考資料です。
3.寛永諸家系図伝(かんえいしょかけいずでん)
江戸幕府は2度にわたり系譜編纂を行っていて、その1度目、寛永20年に編纂されたのが寛永諸家系図伝です。諸大名・旗本以上の幕臣の各家(武家)が清和源氏・平氏・藤原氏・諸氏に4分類されています。新撰姓氏録は天皇家中心の氏族中心でしたが、こちらは武家の系図で、徳川幕府の視点で作られています。
寛永諸家系図伝が成立した170年後、再度幕府によって系譜編纂が行われ「寛政重修諸家譜(かんせいちょうしゅうしょかふ)」が成立します。どちらも江戸時代の武士の系図の代表的な文献ですので、江戸時代の先祖が武士であった場合は呼んでおきたい文献です。
4.姓氏家系大辞典(せいしかけいだいじてん)
姓氏家系大辞典は姓氏研究で著名な学者:太田亮(おおたあきら)氏が数多ある名字を体系的にまとめた、いわば名字の辞典です。姓氏研究者の間では知らないものはいないとされる名著とされていて、この辞典をもとに再編された名字の辞典も多く存在しています。姓氏家系大辞典ではなくとも、自分の先祖の名字を辞典で一つ一つあたってみる作業は簡単なので一度は取り組んで少しでも先祖の手がかりを得るべきといえます。
ポイントは、アタリをつけて文献を読むこと!
上で紹介した文献は著名なものなので、現代語訳やインターネットで公開されているものも多いです。文献の端から端まで読むことは困難ですので、郷土誌や藩政史等で自分の先祖と関連のありそうな名字・家系・家紋にアタリをつけてから、文献をあたってみるように心がけましょう。
先祖探しにオススメの図書館は?
国立国会図書館
運営者 | 国会(立法府) |
所在地 | <東京館>〒100-8924 東京都千代田区永田町 1-10-1 <関西館>〒619-0287 京都府相楽郡精華町精華台8-1-3 |
蔵書数 | 約4342万6450点(平成29年時点) |
HP | https://www.ndl.go.jp/ |
国立国会図書館は、いわずと知れた日本のキング・オブ図書館。なぜかというと、国立の中央図書館かつ巨大ということだけでなく、納本制度というものがあるからです。「国立国会図書館法」という法律によって、日本国内で発行された全ての出版物を国立国会図書館に納めることが義務付けられています。
蔵書数は随一!だが閉架なのが少しデメリット
国内のほとんどの出版物を網羅していますが、ほとんどのものが閉架で管理されているため、読みたい文献がある程度明確でないと探しづらいです。また出版物がメインの図書館のため、歴史上貴重な文献・資料の原本の所蔵は資料館等に比べて少ないというのも特徴です。
国会図書館は、一番最初にフラっと行く図書館ではなく“最後の砦”と考えておきましょう。インターネットで公開されている文献もあるので、ホームページから蔵書の検索をして、ある程度のアテをつけてから出向くのがオススメの利用方法です。地方在住で遠方の場合は、電話や郵送でもレファレンスに問い合わせてみる方法もあります。
都立中央図書館
運営者 | 東京都 |
所在地 | 〒106-8575 東京都港区南麻布5-7-13(有栖川宮記念公園内) |
蔵書数 | 約206万冊(平成30年3月時点) |
HP | https://www.library.metro.tokyo.jp/ |
都立中央図書館は全国単位で郷土誌が充実していて、かつ開架なので本が探しやすいのが特徴で、私たちが頻繁に活用している図書館の一つです。ポイントは、開架で書籍が探しやすく、図書館の方も非常に親切だからです(あくまで個人の印象です)。閲覧席も平日は空いていることが多いので、東京近郊にお住まいの方にとっては、一番最初に行く図書館の有力候補といえます。
国立公文書館
運営者 | 独立行政法人国立公文書館 |
所在地 | 〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園3番2号 |
蔵書数 | 約133万冊(平成25年3月時点) |
HP | http://www.archives.go.jp/ |
国立公文書館は、明治以降の公文書を保管して閲覧・公開している資料館です。明治時代からの歴史を学ぶ上で役立つ文書が当然多いのが特徴ですが、注目すべきは内閣文庫から移管された江戸幕府からの古文書をも所蔵している点です。他の図書館と異なり、季節ごとに企画展示等も行っていて、探し物がなくても楽しめる場所ですので、一度足を運んでみることをオススメします。
県立の中央図書館
これまでの図書館をご覧いただいて、東京の図書館ばかりじゃないか!とため息が出てしまった地方在住の方も多いのではないでしょうか。文献調査をする上で、東京の図書館が充実していることは確かですが、地方でも文献調査は十分にできるのでご安心いただければと思います。自分のルーツの場所が地元の場合は、地元の図書館の方が東京より郷土誌等は充実しているはずです。私達は本社が東京にあるため、上に挙げた東京の図書館に毎日通ってお客様のルーツ調査をすることが多いですが、地方に関する情報が(特に開架で)足りないと感じることもあります。
なるべく大きい図書館へ行くこと!
自分の家のルーツに関する調査は全国的な調査になるケースも多いため、全国の郷土誌や、歴史に関する文献を閲覧できなければはかどりません。そのため、なるべく蔵書数の多い都道府県立の大きい図書館(中央図書館)で調べ物をするようにし、遠方の図書館にしかない資料を閲覧したい場合は図書館の相互貸借の制度の活用も検討するようにして下さい(しかし貸出が行われていない資料もあります)。その上で、東京の図書館に行く必要があるか判断してください。
現地の郷土資料館・図書館
他にも、自分のルーツの場所(最古の本籍地)にある図書館や資料館は情報の宝庫です。こちらは現地まで行かないと詳しく調査できないため、現地調査の部類に含まれますが、遠方の場合は相互貸借の制度を活用できないかを確認してみましょう。もし現地の資料館や施設に行くのであれば、資料だけではなくその土地のことに詳しい方から話を聞くこともとても有益です。資料館の方はどの地域でも親切な方が多く「この土地の郷土史に詳しい方はいませんか?」と尋ねると、奥の部屋に案内され館長が色々な話を聞かせてくれることも多いです。
その他の図書館・史料館
東京大学史料編纂所
運営者 | 東京大学 |
所在地 | 〒113-0033 東京都文京区本郷7丁目3番1号(東京大学本郷キャンパス内) |
HP | https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/ |
特徴 | 貴重な歴史資料の多くが高い技術でデジタル化されており、WEB公開されている資料も多数。 |
宮内庁書陵部
運営者 | 宮内庁 |
所在地 | 〒100-8111 東京都千代田区千代田1-1(皇居内) |
HP | http://www.kunaicho.go.jp/culture/shoryobu/ |
特徴 | 皇室に伝わる重要な歴史的文書・史料が保存されている。 閲覧をするためには事前に郵送で申請が必要。資料の一部はWEBでも公開されている。 |
国文学研究資料館
運営者 | 大学共同利用機関法人 |
所在地 | 〒190-0014 東京都立川市緑町10-3 |
HP | https://www.nijl.ac.jp/ |
特徴 | 安土桃山・江戸時代以降の重要な古文書・古典、旧大名家や村町役場に関する資料を多数所蔵。 ルーツ探しだけでなく、くずし字を学ぶのにオススメの場所で、定期的な展示も行われている。 |
【番外編】出身大学の図書館
自分の出身大学が自宅の近くにある場合は、大学の図書館もオススメです。ルーツ探しに関する蔵書については都道府県立の図書館に比べると物足りないことが多いですが、一番のメリットは“土日空いている”という点です。ご家族や小さいお子さんがいる場合は、ゆっくり調べ物をする場所がなくて困ることも多く、公共の図書館に行っても、土日は混んでいてゆっくり閲覧席を使うことができないことも多いです。その点、大学の図書館の土日はガラガラで使い放題ということも。ほとんどの大学で卒業生向けに入館証を発行しているはずですから、是非卒業生のメリットを最大限活用してみて下さい。
文献調査の3つのコツ
1.レファレンスを最大限活用すること!
一般の方にとって、ルーツ探しの文献調査は初めて場合が大半だと思います。数えきれないほど大量に存在する文献の中で、自分のルーツに関する文献を探し出すのは至難の業といえます。そこで必ず活用したいのが図書館のレファレンスサービスです。レファレンスは図書館員が必要な資料を検索し、回答してくれるサービスで、どの図書館でも提供しています。問い合わせのコツは「自分のルーツが知りたいのですが…」ではなく、「〇〇藩の藩主・家臣がわかる文献」「〇〇町の郷土誌」等、探している資料を可能な限り具体的に伝えることです。私達のような専門業者でもレファレンスサービスを活用しながら文献を探しますので、一般の方も必ず活用するようにしましょう。
2.デジタルアーカイブを活用すること!
最近では、歴史上貴重な文書・資料のデジタル化が進んでいます。WEB上で公開されている文献も多く、先にご紹介した「尊卑分脈」「姓氏家系大辞典」は実際に国立国会図書館デジタルコレクションで公開されています。図書館に行かなくてもパソコンやタブレット端末があればその場で文献調査が可能で、とても便利なサービスですので、積極的に活用してみて下さい。
▼参考サイト▼(外部)
国立国会図書館デジタルコレクション
3.なるべく現代語化された文献を読むこと!
ルーツ探しの文献調査にあたっては、江戸時代以前の文書を読むケースが多くなります。歴史的な資料はくずし字で書かれており、内容の確認以前に文字を読み解く時点でつまずいてしまいがちなものです。重要な資料であればあるほど、研究者による現代語訳が発行されているものですので、レファレンスでも必ず現代語化されたものがないか確認しておくべきでしょう。
ルーツ探しに必要な5つの要素とは?
最後に、自分のルーツを探す上で重要な、5つの技術・要素をご紹介します。
必要な5つのもの
- 歴史に関する知識
- 名字・家紋に関する知識
- 古文書を読む技術
- 動く足・健康な体
- 知的好奇心・情熱
ルーツ・家系を調べる技術はとても奥深く、一朝一夕で極められるような性質のものではありません。しかし、自分のルーツを調べる過程で、様々な研鑽を積むことができる学びがいのある分野といえます。明治時代・江戸時代に関する知識や戦国時代の武将の知識等、幅広い知識が求められますが、こういった知識が第三者的な視点ではなく、自分の家の歴史と絡めて、自分のこととして学ぶことができるということが最大の魅力といえます。
文献調査・勉強を進めていくと、今まで自分と無関係だと思っていた歴史上の人物との関連や、学生時代に日本史で学んだような出来事がリアルに自分の家の歴史の一部に感じられることもあるはずです。家系図作り・ルーツ探しのスタート地点は全員違うため、判明することもとても個人差がありますが、自分探しや自己研鑽としてもオススメなのがルーツ探しです。
文献調査が進んできたら、今度は現地調査の計画を立ててみましょう!