家系図作り・ルーツ探しの第一歩である戸籍調査が終わり、幕末・明治時代までの先祖を辿ることができたら、次に図書館や資料館で文献資料を調査します。全くのゼロから家系図作りを始めた方は、これまでの調査だけでも多くのことがわかったのではないでしょうか。
まだ戸籍調査や文献調査が終わってない方は、以下の解説記事を読んでチャレンジしてみて下さい。
文献調査が終わったら、残すは現地調査!ということになりますが、とても専門的な分野のため、一般の方にはわからないことだらけのことだと思います。そんな方に向けて、今回は現地でのルーツ探しの方法、準備の仕方について要点をしぼって解説します。この記事を参考に、家系図作り・ルーツ探しの最終仕上げともいえる現地調査に是非チャレンジしてみて下さい!
目次
現地調査の事前準備
現地に行く2つの意義
この情報化社会において、わざわざ現地に行く意義はどのようなものなのか、考えてみます。今の時代、現地に行かなくてもたくさんの情報が手に入ります。図書館に行けば自分のルーツの場所に関する書物も読むことができますし、Googleストリートビューを使えば現地を擬似的に散歩することもできます。でもやっぱり、現地に行くことはとても重要なことなのです。
1.現場でないとわからないことがある
どうしても現地に行かないとわからないことがあります。ストリートビューでもお寺の中には入れないので、お墓を調べることはできません。現地の図書館や資料館もルーツ探しの情報の宝庫で、東京の大きな図書館より現地の歴史・地理に関する情報がたくさんあるはずですし、何より現地の匂い・雰囲気のようなものは行かなければわからないのです。
中でも現地に行く一番のメリットは、現地の人に話しを聞くチャンスがあることです。市区町村役場であれば電話することで、一般的なことは教えてもらうことができるかもしれませんが、本家、住職、古老、郷土史家の方等は現地に行くことで初めて話を聞くことができます。
2.現場に行くこと自体が貴重な体験になる
現地に行って何をするかも重要ですが、そもそも行くこと自体に意義があります。先祖のゆかりの場所は自分の先祖が住み、生活していた場所ですから、その場所に今何もなかったとしても、貴重な思い出になることは間違いありませんし、何よりの先祖供養になるはずです。現地の何でもない普通の道でも、自分が歩く場所と同じ場所を先祖が歩いていたかもしれない!とイメージすると、きっと特別な体験に思えてきます。
自分が実際に現地に行くことで、自分の体験として家族や子供に話して伝えることができるようになる。考え方によっては、より多くの先祖を遡ることよりも、このことの方が重要とも考えられます。そのため、現地に行く計画を立てるときには、調べ物だけに集中して堅苦しく考えずに、レジャーや美味しい食事、思い出作りの要素もたくさん取り入れるようにして、旅行気分で楽しめるようにしておくことも大切です。
NHKで放送中の番組「ブラタモリ」のイメージで、現地の人と触れ合いながら和気あいあいの雰囲気で楽しみましょう!
ルーツ探しの調査対象
一言に「現地調査」といっても、現地で調べる対象物は一つではありません。調べたいこと、知りたいこと、場所や状況も人それぞれ違いますが、現地でやることは主に3つのことに集約されます。
- 現地の「もの」「建造物」「地理」を調べること
- 現地の資料館等で「文献」「資料」を調べること
- 現地の「人」に聞き込み調査をすること
このように、現地での調査対象を大きく分類すると「建造物・土地」「資料」「人物」を調べることになります。具体的にどのような品目が当てはまるのか、一覧で確認しておきましょう。
現地で調べるもの一覧
1.建造物と土地 | お墓、お寺、地形、神社 |
2.文献資料 | 本家の系譜(家系図)・位牌等、郷土誌、宗門人別帳、過去帳 |
3.人 物 | 本家、郷土史家、住職、資料館の館長、古老、元庄屋、元名主 |
聞き込み調査の注意点
現地の人に聞き込み調査をする上で覚えておきたいことが一つあります。それは、「決して自分に教えてもらう“権利”があるわけではない」ということです。そのため、礼儀と節度をわきまえた上で、丁寧に対応し、真摯に協力をお願いしていく姿勢が大切です。お寺の住職に過去帳を書き写してもらったら、謝礼(お布施)を渡すことも礼儀の一つですし、本家に対しても疎遠になってしまっている場合には「自分が何者なのか」ということについて丁寧に説明をしなければいけないでしょう。
近頃は特に個人情報の保護や高齢者への詐欺が問題となっているため、嫌われてしまったり、信用が得られない場合は貴重な情報を提供してもらえなくなってしまいます。
自分で取り組む方が協力が得られやすい!?
現地調査は一見して難しそうですから、私達のような専門業者に依頼した方がいいのではないか?と考える方も多いと思います。文献調査や「もの」への調査の場合は確かにプロの方がスムーズに行えるはずですが、現地で聞き込み調査をする場合は、業者よりもご自身で聞く方が信用され、協力してもらいやすい傾向があります。
業者の場合、①(調査の受任者としての)自分の立場、②お客様の立場の両方を明らかにしなければならず、説明が複雑で素性が疑われてしまうこともあり得ます。一方、お客様ご本人が対応する場合は自分の立場だけの説明で足り、ご先祖探しへの熱意も本人が直接伝える方が相手にも伝わりやすいケースも多く、スムーズな場合もあるので、決して不利と感じずに自信を持って進めていきましょう。
一番大切なのは十分な下調べ!
現地に行く際には、事前に十分に下調べをしておくことが大切です。流し読みでも構いませんので、郷土誌は一度読んでおくことをオススメします。その土地の歴史の概略だけでも知っておくことで、情報の吸収がかなり変わってきますし、旅行気分で行く場合でも、郷土誌を読んでおくことで旅がもっと楽しめるようになります。
現地での調査は下調べをどの程度行っておくかによって大きく変わってきます。しっかり文献調査をして、万全の状態にしておきたい場合は、調べ漏れがないか、もう一度文献調査の記事から確認しておいて下さい。ご先祖の職業によって調査対象が変わってくるため、現地に行く前にご先祖の職業が武士かどうかだけでもある程度判断はつけておきたいところです。
古い地番から現住所を割り出す方法
現地調査で必ず立ち寄りたいのが、自分の先祖がそこで生活していたかもしれない、いわゆる「先祖のゆかりの場所」です。人それぞれ文献調査の進行度合いも違うと思いますが、多くの場合は戸籍調査で判明した最古の本籍地のはずです。その場所に行ってみようと思っても、古い戸籍は昔の住所表記のままのため、現在どの場所にあたるのかすぐにはわからないケースがほとんどです。
そんな場合、図書館に行って現地の地籍図(古い地図)と現行の地図を照らし合わして検証してみるのも面白いと思いますが、最も早く簡単に知りたい場合は現地の役所に電話等で確認する方法がオススメです。
役場に尋ねるのが一番の近道
市区町村役場には住居表示実施前の古い地番から現在の住所を割り出すことのできる部署が必ず存在していますので、電話で「明治時代の〇〇町〇〇番戸は現在の住所表記のどこにあたるのか」を問い合わせてみましょう。不当な目的が疑われてしまうと、個人情報の関係で教えてもらえないケースも考えられますので、あえてルーツ探しをしていること等は伝える必要はなく、土地・住所に関する一般的な質問として問い合わせる方が教えてもらえる可能性が高まります。経験上、ほとんどの役所で対応してもらえますので、調べ物を始める前にまず問い合わせてみましょう。
現地に持っていく荷物を確認
ルーツ調査の持ち物一覧
品 目 | 備 考 |
---|---|
1.ノート・筆記用具 | メモをとるためのバインダーも持っていくのがオススメ |
2.カメラ | 高画質じゃなくても可。思い出作りも含めて写真はたくさん撮るのがオススメ ※スマホ・タブレットでも代用可能 |
3.辞典・地図類 | 崩し字辞典・日本史辞典・日本史年表・地図等 ※PC・スマホ・タブレットでも一部代用可能 |
4.集めた資料一式 | これまでに集めた戸籍や資料を全て持参。PC・タブレットでデータで持参する方法も |
5.ボイスレコーダー | 聞き取り調査で使用。先方が嫌がる場合は使用せず、メモをとる方法に切り替えること |
6.身分証明書 | 図書館の利用証発行・自分の身分証明で使用。運転免許証等の顔写真付きのものがベスト |
7.お金 | 神社へのお布施や取材料、滞在費等 |
上の通り、なるべく万全の準備をして現地に行きたいところですが、家から車で行く場合でないと、全ての持ち物を持参するのは大変です。そんな場合はパソコンやタブレット端末を持参し、データで持ち歩く方法もオススメです。上の持ち物のうち辞典・地図は現地で検索する方法や、アプリを活用することで代替でき、スマートフォンやタブレットをお持ちの場合はカメラや地図の代わりにもなります。
お金をかける必要はありませんが、今あるもので可能な限り工夫してみましょう。また、現地では車がないと移動が不便な場合も多いので、必要に応じてレンタカーや宿の手配もしておきましょう!
さあルーツの場所へ出発!
江戸時代の先祖探しで特に重要な資料
戸籍で辿れる限界は江戸・幕末時代までですから、すでに古くから続く家系図をお持ちの場合を除いて、現地調査では江戸時代の調査から行うことになります。この江戸時代のルーツ調査で特に重要な記録は3つあります。
江戸時代で重要な3つの記録・資料
品 目 | 保管場所 |
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過去帳 | 自分の家、本家、お寺 |
分限帳 | 図書館・資料館・本家 |
宗門人別帳 | 図書館・資料館や元庄屋、元名主 |
この3つについては、江戸時代のご先祖探しで最も重要な資料ですので、現地に行く前に閲覧できるものは閲覧しておくことをオススメします。文献調査を十分に行っておくことで、現地調査を効率的に行うことができます。
現地調査で重要な4つの調査対象
- 本家
- お寺(菩提寺)
- 郷土資料館・図書館
- 郷土史家・古老
何から取り掛かっていいかわからない場合は、まずこの4つを対象にしておけば問題ありません。この4つを実際に調べることができたら、必ず何かの成果があるはずです。
本家の調査
「本家」は、分かれる前の本(もと)の家という意味で、武家社会の家制度からきた呼び名です。今の時代では、自分の家が本家か分家か知っている方は少ないかもしれません。「家制度」と聞くと、随分昔の慣習のように感じてしまいますが、旧民法で戦前(約80年前)まで現役の制度でした。戦前は実際にその「家」の戸主権(家長権)・財産権を引き継いでいくための家督相続が行われ、本家は祭祀・系譜(家系図)を承継する義務がありました。
戦後に制定された旧民法から家制度に関する部分は廃止され、「家」への意識は時代とともに薄れてきていますが、まだ慣習が根強く残っている地域もあります。その本家が今でも系譜や家に関する書物・資料を保管していて、閲覧することができれば一気にルーツ探しが進展することになります。さらに、本家では代々伝わる家の歴史に関する言い伝え等も聞ける可能性も高いため、できる限り訪れたいところです。
本家がわからない場合はどうする?
戦前の戸籍をみると、かなりの確率で「家督相続」「分家」という単語は出てくる一方で、「本家」という単語は出てきません(本家は法律用語・戸籍用語ではない)。戸籍の記録を辿ることで、自分の家が分家かどうかはわかることが多いですが、戸籍の記載だけでは「本家」は確定できないということを覚えておきましょう。
つまり戸籍で判明した最古の本籍地が本家である可能性は高いものの、戸籍が編成される前の江戸時代に分家していた場合は、もっと遡らないと本家は確定できないということになります。戸籍で判明する範囲では、「本家に最も近い家」と考えておき、裏付けをとっておくようにしましょう。
本家と連絡をとる方法
自分の家が本家の場合は家族や親戚に聞き込み調査をすれば事足りますが、自分の家が分家の場合で、かつ本家の関係が希薄になっている場合は、上の「本家に最も近い家」に連絡をとってみることから始めます。事前の調査で住所がわかる場合は手紙を出してコンタクトをとる方法が一番スマートです。
住所がわからない場合は、最後の本籍地の実際に行き、同じ名字の表札を見つけたらその家の場所をメモしておきます。後日趣旨の説明、連絡をとりたい旨を書いた手紙を郵送し、連絡を待ちます。突然押しかけると困らせてしまうこともあるため、「自分に教えてもらう権利があるわけでない」ことを忘れずに礼節をわきまえて行動することが大切です。切手を貼らずに手紙をそのままポストに投函する方法もありますが、直接投函は少し威圧感が感じられる場合もあるので、なるべく避けた方が無難です。
本家での聞き取り項目一覧
- 先祖に関する言い伝えはないか
- 先祖の職業について
- 氏神・菩提寺・墓の場所について
- 家に系譜(家系図)等の書物は残っていないか
- 家紋は何を使っているか
- 先祖の位牌や過去帳は残っていないか
- 名字の由来について
- いつ頃からこの町(村)に定住しているのか
- 地域の役職についたことのある先祖はいるか
本家の聞き込みがしっかりとできた場合、それだけでルーツ探しは飛躍的に進展するはずです。ご先祖の職業、菩提寺の場所、家に過去帳や家系図があればご先祖の名前がハッキリと確認できる可能性もあります。ただ、調査対象が人や個人宅ですので、迷惑にならないように注意しましょう。
もちろん本家が見つからない、本家に何も情報がない、本家が全然協力的じゃない!なんて場合も十分考えられるため、そんな場合はとりあえず深追いせずに違う調査対象に切り替えるようにしましょう。
お寺で江戸時代の調査!
江戸時代の調査を行う上で重要なのが「寺院(お寺)」です。寺院はインドや中国から伝わった宗教である「仏教」の教えを説く僧侶(住職)が住む場所をいいます。お寺は江戸時代から、今でいう役所のような役割を果たすようになっていたため、ご先祖の情報がたくさん残されている可能性があります。お寺の住職に話を聞くことも大切なことですが、過去帳と墓(墓誌)が資料として重要になります。自分の家の菩提寺がすでにわかっている場合はそのお寺に連絡をとって、相談しに行ってみて下さい。
過去帳を調べる
江戸時代の調査での重要資料である「過去帳」は仏具の一種で、その家で亡くなった方の情報が書かれた帳面のことです。過去帳といっても「1.家の中(仏壇)で保管される過去帳」と「2.お寺で保管されている過去帳」の2種類があり、後者の過去帳をお寺で調べることになります。
お寺の過去帳の特徴
- 亡くなった方の戒名・俗名・死亡年月日・行年等が書かれる
- 宗派ごと・お寺ごとに形式が大きく違う
- 家ごとではなく、全ての家がまとめて1つの過去帳に書かれる
- 家族ごとではなく亡くなった日順に記録される
- 没年月日・戒名の情報があると探しやすい
- 名前(俗名)まで書かれていないことも多い
過去帳は見せてもらえる?
お寺が管理している過去帳は当然お寺のものですから、見せてもらえるかどうかも完全にお寺(住職)次第です。さらに過去帳自体が戦災や天災、明治初期の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)運動等で消失していることもよくあります。さらにお寺の過去帳は家ごとに書かれているわけではなく、1つの過去帳に全てまとめて書かれているため、個人情報の関係で寺以外の人には見せてはならないとしている宗派もあります(浄土真宗等)。仮に運良く見せてもらえたとしても、筆で書かれた昔の手書きの字を解読するのが難しいという事情もあります。
過去帳を調べる現実的な方法とは
そのため、過去帳は見せてもらおうとするのではなく、先祖供養を理由として過去帳の写しを作ってもらえないか相談する方が賢明といえます(お布施も必要)。菩提寺との関係が今でも続いている場合は相談しやすいですが、関係が途切れてしまっている場合は丁寧な手紙を出す等、礼儀・節度をわきまえた対応が必要です。
過去帳は家系図ではないので、戸籍以上の先祖の戒名や没年月日はわかったとしても、その情報だけで家族関係まで明らかにしていくのは難しい場合が多いです。そのため過去帳を調べて書き写した後にもさらなる検証が必要になるものだと考えておきましょう。
お寺の歴史に着目することも大切!
菩提寺のお寺で話を聞く機会があれば、自分の先祖のことばかりではなく「そのお寺の歴史」も教えてもらうようにしましょう。そのお寺が菩提寺であることにも理由があるでしょうし、そのお寺が誰によって作られたのか(開基)、有力な檀家は何家だったのか、を教えてもらうことで、ルーツ探しのヒントが得られることも多いからです。過去帳には辿り着けなくても、お寺の歴史を調べることはできるので、文献調査の範囲でも取り組んでおきましょう。
お墓の調査
お寺の調査と合わせて、お墓の調査もしておきましょう。お墓はお寺の境内にあるいわゆる「境内墓地」もあれば、本家の敷地内にあったり、お寺とは離れた場所にある「共同墓地」にある可能性もあります。先祖の墓の場所は、本家に聞くのが一番確実ですが、わからない場合は同性宅への聞き取り調査等が必要になります。
お墓は簡単に移動することができない建造物ですから、お墓の大きさよりも位置が重要な意味を持つこともあります。そのため、お墓の写真だけではなく墓所全体の写真を撮り、余裕があれば墓地図も作成する等し、墓石からわかることは全て記録しておくようにしましょう。
墓碑からは、戒名・家紋・俗名・没年の4つ情報を読み取り、他の先祖に関する情報と照らし合わせてみる作業が必要になります。昔のお墓は戒名と没年だけ刻まれているものも多いので、全ての情報が刻まれているとは限りません。
墓石の文字が読めない場合
昔の墓石は硬い石が使われていなかったという事情もあり、経年劣化が原因で墓碑に刻まれた文字が読みづらいケースもあります。お墓の写真を様々な角度で撮って検証したり、管理者の同意を得てから墓石洗いをする方法もあります(墓石洗いの専門業者も存在します)。
それでも読めない場合は墓石の拓本をとることで、読めるようになることがあります。拓本セットは市販されていますので、持参してない場合は購入することをオススメします。しかし拓本は多少の技術が必要であり、失敗すると墓碑を傷つけてしまう可能性もあるので、慎重に取り組んで下さい。
先祖の墓が見つからない場合
今の時代では、人が亡くなったらお墓や納骨堂に入ることが当然のことのように思えますが、江戸時代はそうではありませんでした。実際に江戸幕府は庶民には墓を作ることをすすめず、庶民が墓石を建てるようになったのは江戸時代の後期からといわれています。墓を建てるのは当然財力も必要ですから、江戸時代から続くお墓が残っている家は、その時点で裕福な家柄・武士だったと考えられます。つまり、一般的に江戸時代のお墓が残っているケースは少ないということです。
江戸時代の状況も考えながら、お墓が見つからない以前に、元々現存しない可能性も高いということを覚えておきましょう。
現地の資料館・図書館でじっくり調査
現地の調査で一番行きやすく、探しやすいのが図書館・博物館・郷土資料館です。全国の市区町村自治体が運営しているため、インターネットで検索してもすぐに見つかりますし、役場に問い合わせることでも施設の場所を教えてもらえます。
資料館は普段の生活で頻繁に行くような場所ではありませんので、存在自体知られていないことも多いですが、実は全国のどんな場所にも郷土資料館は存在しています。郷土資料館は小学生の社会科見学のためだけではなく、ルーツ探しでも貴重な情報が得られる可能性が高いので、必ず足を運ぶようにしましょう。
特に博物館や資料館は、文献だけではなく江戸時代に実際に使われていた道具や衣類、歴史的価値のある資料・模型も多く展示されています。現地の資料館はその土地の元庄屋や元名主、旧家等が所有していた史料が寄贈される受け皿の役割も果たしているケースも多いため、施設に行くだけで効率よくその土地の歴史を調べることができます。郷土誌を事前に読んでいる場合は、より一層深く楽しめるはずです。
館長・古老・郷土史家に話を聞く
現地の資料館では歴史的な史料の展示を見ることだけではなく、施設の館長等から話を聞くことで、ルーツ探しに役立つ情報を得ることができます。経験上、こういった施設の館長がその土地の郷土史に精通しているケースが多いため、実際に会って色々なことを教えてもらいましょう。社会科見学の予定等が入っていない場合は時間を持て余していることも多く、親切かつゆっくり対応してくれることも多いです。
郷土史家から聞きたいこと一覧
- その土地の歴史・主要産業
- 江戸時代の藩や大名に関すること
- その土地で重要な歴史上の人物
- 元庄屋・元名主はどの家だったのか
- 宗門人別帳は所蔵していないか
- 自分と同じ名字の家が密集している場所はないか
- 最古の本籍地が江戸時代どんな場所だったのか
資料館の館長や郷土史家の方には上のような事柄を聞いてみるべきでしょう。さらにその場を借りて、もっと郷土史に詳しい人がいたら紹介してもらえるように交渉してみることも大切です。こういった地元の人との触れ合いが現地調査を思い出深いものにしてくれますので、億劫にならず必ず話しかけてみましょう!
神社の調査
「神社」は古代日本からの伝統的な民俗信仰である神道(しんとう)の神を祀るための建造物で、お正月の初詣や夏のお祭りでもお馴染みのことと思います。「神社」と「寺院」は混同しがちですが、根本的に違うものなので区別できるようにしておきましょう。
日本には八百万の神(やおよろずのかみ)という言葉があり、日本神話をもとに神様がたくさんいる国としても有名です。最も有名な神社である三重県の伊勢神宮には天照大神(あまてらすおおみかみ)と呼ばれる日本国民の総氏神が祀られています。天照大神は神話の上では日本の皇室の祖先とされている、今の日本人の在り方ととても関わりの深い神様であるとともに、八百万の神の中でも最も尊いとされている神様です。
江戸時代は神仏習合(しんぶつしゅうごう)と呼ばれる神道と仏教が融合するような状態が続いていましたが、神社はお寺のような役割(寺請制度)はなかったため、残念ながら寺に比べると家系や先祖の情報は少ないことが通常です。
氏神とは元々何だったのか?
神社が祀る「氏神(うじがみ)」は、元々苗字とは違う「氏」という古い氏族社会の中で氏族達(氏子)が子孫の繁栄を祈った対象で、おおむね氏族の祖先を神様として崇めていました。その後、氏族制度が崩れて武士の時代になると、氏族以外の人もその土地に移り住むようになり、氏族よりも同じ土地に暮らす人達の連帯感の方が強まっていくことになります。そんな時代を経て、氏神は「氏族達の神」ではなく、「その土地の守り神」と位置付けられるようになった歴史があります。
神社・氏神を探し出す方法
自分の先祖と関連のある神社(氏神)は本家から教えてもらうのが一番確実ですが、わからない場合は地元の郷土史家に自分の先祖のゆかりの場所(本籍地)から手がかりを得る方法が考えられます。さらにその神社の歴史や氏神、御神体、神紋等について調べておくと何らかのヒントが得られる可能性があります。
先祖を調べる上で直接的に神社が役立つとすれば、その神社へ寄進(寄付)をした「寄進者」として資料や石柱に残っている可能性がある程度です。神社はその地域の人によって支えられていたため、先祖が地元の有力者だった場合等は、多大な寄付をしていたかもしれないためです。
御利益にあずかるためにも参拝はしておく!
自分の先祖のゆかりの場所の氏神・鎮守(ちんじゅ)が祀られている神社は、もしかしたら江戸時代に自分の先祖もお参りしていた神社かもしれません。当然ながら自分の祖先とゆかりがある可能性もあるので、先祖の調査は抜きにして、子孫繁栄の御利益にあずかるためにも、一度は参拝に行っておくべきで、訪れた記念に御朱印ももらっておきましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。現地調査は少し難しい!と感じた方も多いと思います。この現地調査が一通りおわったら、また文献調査に戻って情報を照らし合わせながら検証をしなければいけません。1回の現地調査で全ての調査を完了させることは困難なので、検証をした後にまた現地に行かなければいけないことも多いはずです。
こうして見てみると、自分のルーツを調べるためには大変な手間がかかることがご理解いただけると思います。ゴールの見えない「ルーツの旅」で一番大切なことは、「前向きな気持ちで楽しみながら取り組むこと」です。頑張って調べ物をしても成果が全くないこともあるはずですが、その自分のご先祖を見つけようとする行動こそが何よりの先祖供養になるはずですので、決して結果にとらわれない、思い出深い旅になるようにしましょう!
ルーツの旅|遥か昔の先祖の街へ
突然「行きたい場所がある」と妻を連れ出す夫。順番に先祖のゆかりの場所を巡っていく物語です。