子供にとって夏休みといえば、お祭り、花火、プール、海、川遊び、スタンプラリーなど、巷では楽しいレジャーが目白押しですが、大人にとっては学校の休みに子供の面倒を見なければならなかったり、実家への帰省があったりと、何かと忙しい時期でもあります。

さらに小学生や中学生の子供がいる家庭では、夏休みの自由研究を何にするか親も悩んでしまうことがよくあるかと思います。「お盆に帰省もしなければならないのに、子供の自由研究にも協力しないといけない…」と考えてしまっている方もいるのではないでしょうか。そんな中、いつもの帰省を子供の自由研究にも活かすことができたら…まさに一石二鳥だと思いませんか?

そこでこの記事では夏休みの自由研究に家系図作り・ご先祖探しをするメリットや、その具体的な取り組み方について紹介します。

夏休みに子供と先祖探しをするメリット

夏休みにご先祖を調べることにはどのようなメリットがあるでしょうか。家系図作りには一般的に次のような特徴があります。

  • 時間と手間がかかる
  • 友達と一緒に家系図作りはできない
  • ふるさとの歴史を調べることが重要
  • 先祖のお墓にたくさんのヒントがある
  • 一家の言い伝えをたくさん聞くことができる
  • 青少年の精神育成に良い影響を与える

この特徴こそが夏休みにご先祖調査をするメリットになります。それでは順番にみていきましょう。

かなりの時間と手間がかかる

家系図作りは、一朝一夕で完成するようなものではなく、かなりの時間と手間がかかります。子供にとっては夏休みというまとまった時間を使って家族のルーツを調べることではじめて、今まで知らなかった遠い昔のご先祖を深く知ることができるようになります。

まとまった時間が必要という点において、普段できないこと=家系図作り、という考えに辿り着きます。この点で、夏休みは家系図作りに最適な期間だと考えられます。また、ご先祖探しには終わりがないものですから、毎年毎年の夏休み恒例のワイフワークにして取り組むこともできます。

友達と一緒に家系図作りはできない!?

お祭り、プール、海、川遊びなど、夏のイベントは盛りだくさんです。そして、そのほとんどは友達と一緒に楽しむことができるものです。一方、家系図作りはどうかというと、とても個人的な自分の家の歴史を調べる作業ですから、友達と一緒に取り組むことはできません。これは裏をかえせば、親子や祖父母、親戚で一緒に取り組むしかない、親子だけの時間を過ごすことになることを意味します

また、親世代にとっても家系図を作ることはエキサイティングな新しい発見の連続になるに違いありません。自分の先祖を知ることは、自分自身を知ることにつながりますから、家系図作りは親にとっても自己研鑽になるのです

大人になると日々の生活に追われ、「今」を考える機会がどうしても多くなりがちなものですが、子供と一緒に我が家の歴史を振り返り、共通の先祖を調べる体験は、親子の絆をより一層深めることになりますし、きっと親にとっても子供にとっても大変意義のある時間になるに違いありません。

ふるさとの歴史を調べることが重要

故郷

家系図作り・ご先祖探しでは、ふるさとの土地の歴史(郷土史)を調べることがとても重要になります。日本の苗字の8割程度は地名に由来していますし、郷土誌にご先祖の名前が載っていることも珍しくないからです。東京・大阪・名古屋などの都市部でも大きな図書館であれば全国の郷土誌を閲覧することができますが、やはりもっとも蔵書が充実しているのはその故郷(現地)の図書館や文書館になります。

そのため、実家への帰省に合わせて故郷の郷土資料館や図書館、文書館などを訪ねてみることによって、歴史の勉強と自分の先祖探しが一緒にできてしまいます。このような場所はそのためだけに出向くにはちょっとハードルが高い場所でもありますので、帰省のついでに施設を巡ってみるのがオススメです。

このような活動を通して、子供が「自分の家の歴史」と「日本の歴史」を並列に捉えられるようにサポートしてあげることがとても重要です。「他人ごとの歴史」を「自分ごとの歴史」にしてあげることで、子供が歴史に興味を持ち、自分の意志で歴史の勉強をするキッカケを与えることができるからです

先祖のお墓にたくさんのヒントがある

ご先祖探しの第一歩は戸籍収集ですが、実は先祖に関する情報はお墓にも集約されています。ご先祖が亡くなった年月日、戒名、家紋など、ご先祖を調べる上で重要な情報はお墓や過去帳にたくさん刻まれています。戒名には、ご先祖の人柄を表す文字が含まれていることもあるので、戸籍の記載より深い情報を得ることができるのです。

8月のお盆の際には、ご先祖のお墓に行って花を手向けるだけでなく、写真なども撮っておいて、ご先祖調査の手がかりを集めてみることをオススメします

一家の言い伝えをたくさん聞くことができる

帰省

どんな家にも、ちょっとした言い伝えくらいはあるものです。

  • ウチの先祖は武士だった!?
  • 歴史上の人物〇〇とウチは関係があるらしい!?
  • この辺りの土地は昔はウチの土地だった・・!?

などなど、大きなものから小さなものまで色々な言い伝えがあります。さらには毎年帰省するたびに同じ話を聞かされるパターンも…。このような話も、ご先祖を調べる上ではとても貴重な情報になります。さらに子供から尋ねれば、祖父母や親戚のおじさんまで、喜んで色々な話を聞かせてくれるに違いありません。

このように、帰省時には、一家の言い伝えをたくさん集めるチャンスでもあるのです

青少年の精神育成に良い影響を与える

中学生

家系図作りをすることが教育の一環にもなるということであれば、小学生の子供と一緒に先祖探しをする意義は十分にあると言えるのではないでしょうか。実際に子供への教育の意味も含めて家系図を作る親が増えているといわれています。

親子で家系図作りに取り組み、家族の物語を共有することが、青少年の教育に良い影響を与えるとする海外の研究発表もあります。アメリカの名門大学の一つであるエモリー大学心理学部のロビン・フィブシュ博士とマーシャル・デューク博士は、独自に研究を実施し、次のように発表しています。

より首尾一貫した家族の物語を語る家庭の子供たちは、自尊心が高く、社会的能力が高く、友人関係の質が高く、不安やストレスが少なかった。また、両親の報告によると、問題行動も少なかった。

エモリー大学のページ(英語)How family stories help children weather hard times

この研究の対象となった家庭は、すべて同等の中流階級の二人親家庭とされていますので、いわゆる名家とされるような家に限定された話ではありません。この研究結果は、どんな家であろうとも、家族の歴史や物語を家族間で共有することは、子供にとってよい影響を与える大切なことだということを示唆しています。

心理学的な観点からみても、親と子供が家系図作りをすること、先祖探しをすることは、大変意義深いことだということがご理解いただけたのではないでしょうか。

親子で取組む心構え

これまで夏休みの自由研究テーマを家系図作りにするメリットを多く紹介しましたが、実際に取り組むとなると「少しハードルが高いのでは?」と懸念される方もいると思います。

確かに子供が完全に自力で家系図作りに取り組んでいくのは少し大変な作業になりますが、親が適切にサポートしていくことが大切です。さらにいえば、親だからといって家の歴史をすべて知っているわけではないケースがほとんどだと思いますので、あくまで子供と一緒に歴史を勉強していくような姿勢でチャレンジすることが重要です。

自分の家の家系図を作るということは、ひいては自分がどのような過程で誕生し、今を生きているかを知ることに直結していきます。親から子供へバトンを渡すようなイメージで、作業を進めていくうちに、親自身も「いつか自分も先祖になる」ことを再認識できるのではないでしょうか

戸籍家系図の作り方

戸籍から作った家系図

家系図作りのメリットや心構えの次は、肝心の具体的な家系図の作り方について解説していきます。家系図作りの第一歩は、基礎資料である戸籍の収集です。その戸籍の情報を書き起こして家系図にすれば、その家系図がご先祖探しの「地図」代わりになります。

「戸籍の取り方」の解説記事家系図の調べ方・戸籍の取り方をプロが詳しく解説します!

詳しい方法については上の「家系図の調べ方」の記事をご覧下さい。この記事で実際に使える「戸籍謄本等郵送請求書」もダウンロードして使用することができます。家系図作りは奥が深いので、一度で全部の知識を網羅しようとするのはなかなか大変です。当サイトの記事を辞書代わりに参照しながら、自分のペースで家系図作りを始めてみることをおすすめします。

戸籍家系図は3ステップで完成

自分の子供に簡単にでもその手順が説明できるように、まずは親自身が家系図作りの方法について大まかに知っておく必要があります。家系図作りには主に3ステップあり、①取る、②読む、③書く、の順に進めていくことが大切です。

  1. 取る→市役所等の役所から戸籍を取得する
  2. 読む→取得した戸籍を読み込み、判読する
  3. 書く→戸籍から得た情報を元に家系図を書く

基本的には①〜③の手順が一巡で終わることはなく、これらの手順を何往復もして家系図を完成させることになります。戸籍制度は明治時代にできたものですので、明治時代の最も古い戸籍まで取れればとりあえずのゴールとなります。本籍地が実家近くの場合は、帰省時に役所に出向いて戸籍の請求をするのもオススメです。

また、作業量を計算する上では「どの範囲までご先祖様を調べるのか」という点が重要になります。家系図作りは調べる家系(名字)が多くなればなるほど、作業量が多くなるからです。父親の家系もあれば、母親の家系もあり、さらには父親の母親(祖母)の家系などもあるので、平均して10つ以上の家系(名字)が交わって、今につながっているからです。

せっかくならご先祖様を全員調べて記したいという欲が湧くでしょうが、まずは小手調べとして自分の名字の家系の戸籍を辿り、それから別の名字の家系の戸籍を順に取得していくのがオススメです

目標設定はとても重要!

家系図作りは想像以上に奥深いもので、戸籍以外にも様々な資料を調べる必要があります。最初から目標を高く設定してしまうと、挫折してしまう可能性が高まります。そのため、まず達成可能な目標を設定し、小さな成功を積み重ねていくことがモチベーション維持のコツになります。

「戸籍の取り方」の解説記事家系図の調べ方・戸籍の取り方をプロが詳しく解説します!

小学生の夏休み自由研究の場合は、上の記事を参考に戸籍から1家系分(自分の名字)の家系図を描いてみることを目標に取り組んでみるのがオススメです。さらに同時に、戸籍だけで調べることができない従兄弟(傍系)の情報、家紋、お墓の写真、言い伝えなどの情報を整理しておくと、後々役立ちます。

まとめ

夏休みの自由研究で家系図を作るメリットについて、ご理解いただけたのではないでしょうか。お子様にとってもよい思い出になると思いますし、祖父母や家族とコミュニケーションを図るキッカケにもなります。

子供だけでは多すぎる作業量も家族で分担すればそれほど苦ではないため、夏休みに家族全員で楽しく自分のルーツを調べてみると、きっと新たな発見があるはずです。

本記事では小学生向けの戸籍から家系図を作る方法のみをご紹介しましたが、さらに深い調査に挑戦してみたい方は、本格的な家系図の作り方を解説した記事も是非読んでみて下さい。

「家系図の作り方」のまとめ記事家系図の作り方をプロが解説。自分で作るポイントまで