戦国武将のことが好きな方であれば、その武将ごとに違う家紋を掲げていることを知っているかと思います。あの家紋は各武将のトレードマークとして知られ、有名な武将ほどその武将が掲げる家紋も周知されています。しかし、実は家紋というのは戦国武将だけに限らず、庶民にまで普及していたものであることはあまり知られていません。武将以外の場合では割と自由に家紋を決められたようで、有名な家紋以外でもユニークで珍しい家紋は割と多いものです。あなたの家も調べてみたらまだ見ぬ家紋が眠っているかもしれません。

そこで今回は、面白くて珍しい家紋について解説します。

珍しい家紋は意外と多い!

家紋は色々なものをモチーフにして象ったものが数多く存在しますが、その中でも大まかに分類すると以下のような種類が見えてきます。

・植物紋
・動物紋
・天然紋
・文様紋
・建築紋 など

日本人は農耕民族としてのルーツがあるため、全体的に見ると植物紋が多い傾向にあります。戦国武将でも花や葉を象った家紋が多くあり、あなたが知っている戦国武将の家紋でも植物紋があるはずです。

また日本国内では実に5,000種類以上もの家紋があり、その中でも特に使用されていることの多い家紋のことを五大紋と呼びます。そして五大紋よりは使用された機会が少ないものの五大紋に次いで使用されることが多かった5つの家紋を併せて、十大紋と総称することもあります。実際に十大紋の種類においても植物紋の割合が高いという傾向はみられるのですが、これについてはまた別の記事にて解説します。

家紋の由来って?

本題である珍しい家紋について話を移す前にここで少しだけ、家紋とは何かという点についても触れておきます。家紋は各家のロゴマークと言い換えることができますが、その始まりは昔の貴族である「公家(くげ)」か「武家(ぶけ)」かでも微妙に違います。武家の家紋は源頼朝の時代以前にはなかったとされており、始まった時代についても実は詳しく分かっておらず、公家の家紋もその始まりは明らかになっていません。

公家と武家では家紋のルーツにも違いがあるといわれています。公家の場合では牛車(ぎっしゃ)に使用していた文様を家紋にした説、公家の衣服にあった文様を家紋にした説が有力です。その一方で武家の場合では、自陣の旗や幕に描かれた文様が家紋になった説もあれば、公家同様に衣服の文様がそのまま家紋になった説があります。
以下のコラムでも家紋のことについて詳しく解説しています。家紋の知識を身に付けたい方は参考にしてみてください。

「家紋の由来」の解説記事家紋の由来とは?そのルーツから現代までの歴史を解説します。

珍しい家紋はなぜ生まれたか

 家紋の由来については上で述べたように諸説ありますが、珍しい家紋がなぜ生まれたのかを知るためには、家紋そのものの歴史について少し知識をつけておく必要があります。

 鎌倉時代になり武家社会の構図が出来上がると、家紋を見ればどの武将がその家紋を使用しているのかが分かるほど、家紋と家名とは深い関連性を持つようになりました。また戦国時代にもなると家紋の種類は急速に増加し、功績のある武将に対しての褒美としての意味合いを持つようになります。これを「拝領紋(はいりょうもん)」と呼びます。

 そして時代が進み江戸時代になると、家紋の使用は一般庶民にまで普及します。さらに元禄時代では庶民の生活ぶりもより華やかなものへと変化しており、それに伴い家紋の図柄もより優美でかつユーモアのあるものに発展していきました。

 家紋と聞くと一家に一種類だけというイメージがあると思いますが、実際には武家でも複数の家紋を使用することは一般的でした。もちろん公式に使用する家紋を「定紋(じょうもん)」、それ以外の場で使用する家紋を「替紋(かえもん)」や「裏紋(うらもん)」としてそれぞれ使い分けていました。またこれは関西地方に限定されますが、代々女系の家にしか伝えられない「女紋(おんなもん)」という特殊な家紋まであることが判明しています。

 特に珍しい家紋ほど一般庶民の中から生まれたものが多いため、生活様式の多様性や「家」としてのアイデンティティが独自性の高い珍しい家紋を生み出す要因となったと考えられます。

珍しい家紋の例

家紋の種類は数多くありますが、その中でも普段目にする機会のない家紋というのも多いです。ここではそんな珍しい家紋の一部を紹介しておきます。

朝顔枝丸紋

朝顔枝丸紋
朝顔自体は奈良・平安期に園芸品種として渡来しましたが、家紋としては新しく明治以降に使用されたと言われています。そのため家紋としての記録はあるもののどの系譜書にも記載がないことが特徴的です。

糸巻紋

糸巻紋
織物用の糸を巻き付けた糸巻が家紋にされたもので、主に使用していた家は明らかではありませんが生活密着型の家紋であることから庶民の間で使用されたと推測されます。

海老の丸紋

海老の丸紋
海老の外見から老人を連想するため、長寿の願いを込めておせち料理には海老が使用されています。そんな正月飾りとして欠かせない海老を用いる風習が出来たことにより、家紋が作られたとされています。

銀杏枝丸紋

銀杏枝丸紋
中国原産の落葉樹であることはあまり知られていない銀杏ですが、銀杏の葉をモチーフにしたのがこの家紋となります。その長寿から徳川の替紋としても用いられることがあり、多く使用される機会があったと言います。

今回はほんの一部だけを紹介しましたが、実際に調べてみると珍しい家紋が多数見つかるはずです。マニアックな家紋の種類や実際の構図を知りたいという方は、一度インターネットで検索してみることをおすすめします。

自分の家紋はどんなもの?名字から調べる方法

前章では家紋の種類やルーツなどに触れましたが、この章では次に自分の家紋の調べ方について解説していきます。庶民の間でも広く普及したとされる家紋ですが、自分自身の家の家紋を調べるにはどのような方法があるのでしょうか。

江戸時代の庶民でも家紋を持っていたことは前述しましたが、きっとあなたの家にも家紋があるはずです。自分の家の家紋を調べる簡単な方法は自分の家の墓石に刻まれた家紋を確認することです。墓石がない方や、わからない方は本家がある方では親族に聞いたり、本家の神棚や古い書物を見ることで家紋を見つけられる可能性があります。ただ本家が遠方の方や上記の方法では分からない方の場合では、名字から家紋を調べる方法が有効かもしれません。具体的にどうすればいいのでしょうか。

検索ツールの紹介/実践

最近では家紋をインターネット上で調べることができるのですが、主な家紋検索サイトとしては以下の三つがあります。

・家紋ワールド
・家紋の図鑑
・家紋検索

ここでは家紋検索を例にとって解説しますが、家紋検索サイトの使い方はとても簡単です。検索窓に自分の名字を入力して検索するだけで、あなたの名字だとどのような家紋が使われていたか、傾向を調べることができます。家紋検索では刺繍で家紋の文様が見られたり、スマホカバーに自分の家紋を描いてくれるといったサービスがあるサイトもあり、別の楽しみ方もできそうです。
ただ使い方は簡単にしてもいくつかの欠点があることも。まず全国的に多い名字だと家紋検索した時点で、複数の家紋が検索結果として出てくる場合があります。そのためどの家紋が自分の家の家紋なのか、そこまで正確には分かりません。しかし自分の名字でどういった家紋が使用されているのか大まかには確認することができますので、何かのヒントは得られるはずです。

それならば全国的に見て少ない名字の方であれば家紋が一つだけに絞れるのかと言えば、実際はそういうわけにもいきません。少し珍しい名字の方が検索すると、恐らくですが検索結果が0件になってしまう可能性が高くなってきます。少し珍しい名字で検索すると、検索結果は0件となり名字だけでは家紋が見つけられないケースも多いです。日本の名字の種類は30万種類ともいわれますので、全ての名字で家紋を調べるのはそもそもとても困難なことなのです。
家紋検索ができるサイトはいくつかありますが、それぞれに何かしらのメリットとデメリットがあります。興味のある方は複数の検索サイトで調べてみることも大切といえます。

また以下の記事でも家紋の調べ方について解説していますので、そちらも参考にしてみて下さい。

「家紋の調べ方」の解説記事自分の家紋の調べ方のまとめ!

家紋は作れる!?家紋の調べ方

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仮に前述した方法を駆使しても自分の家紋が調べられなかった場合でも、だからと言って家紋を調べる方法がなくなってしまうわけではありません。上記の方法に比べて少し時間と手間がかかりますが、戸籍を取得して自分の家のルーツを辿ることで、あなた自身の家紋を調べられる可能性があります。

「戸籍の取り方」の解説記事家系図の調べ方・戸籍の取り方をプロが詳しく解説します!

例えば本家も家紋も一切分からない場合、自分の家の最も古い戸籍を取得してみます。戦前の日本は「家制度」と呼ばれるルールの中で家族関係が成り立っていましたので、戦前の戸籍を取得すると自分の家が本家か分家かのヒントを得ることができます。取得した最も古い戸籍の本籍地が本家である可能性が高いです。その近辺に自分と同姓の方が住んでいないかを電話帳や住民地図から探し連絡をとり、家の家紋を尋ねてみましょう。家紋は個人情報等の類のものではないため、自分の身分を明らかにすれば簡単に教えてもらえることもあるはずです。

それでも同姓の方が見つからなかった場合には、その地域の墓所やお寺に同姓の方がいないかを広範囲にわたり探していきます。同姓の方同士ではどこかのご先祖様の時点でつながりがある可能性も高く、その地域一帯で同姓の方が複数いる場合にはそれらの家全てで同じ家紋が使用されていることもあります。

これがより正確な家紋の調べ方ですが、そうした方法を駆使しても家紋が見つけられなかった場合にはいっそ自分自身で家紋を作ってしまうというのも一つの方法です。
明治時代以降は庶民でも自分の好きな家紋を自由に作れたと言われています。自分の家の家紋が見つけられなかったからといって落胆せず、どうせなら世界に一つだけのあなた自身の家紋を作ってみてもきっと楽しいはずですよ。

関連記事どうしてもわからない自分の家紋。新しく作っていいの?

まとめ

家紋にも歴史がありそのルーツを紐解けば家紋に込められた想いや、なぜ家紋が生まれるに至ったかが見えてきます。武家以外でも珍しくて面白い家紋は多数あるので、興味のある方は家紋の種類を一度調べてみてもいいでしょう。きっと家紋の奥深さにハマること間違いなしです。