今風に言えば、「家のロゴマーク」

近頃はあまり見る機会がなくなってしまった家紋。じつは名字と同じで先祖から代々伝えられてきた家を象徴する紋章なのです。 「紋章」あるいは時代劇の台詞ように「紋所」と言ってしまうと、格式高く重厚な印象になってしまいますが、これを今風に言えば「家のロゴマーク」といったことになるでしょうか。

そもそも家紋とは、公家に始まり平安時代頃から江戸時代にかけて大名や武家に広がり、庶民のだれもが家紋を得たのは、戸籍制度が始まった明治の初頭からとされています。

ということで家紋は、名字とセットのような関係、と考えていただけるとわかりやすいかと思います。結婚して名字が変わると、一般的には相手方の家紋を引き継ぐことになります。ただし、家紋には法的な根拠がありません。名字と家紋が決定的に違うこととは、戸籍に登録しているかいないかという点です。

自分の家紋は何だろうと思っても、役所に行けばわかるものではなく、家紋を使う習慣が薄れてゆく中でそれを探し当てるのは難しくなってきているように思います。

自分の家紋を探る旅路

それでは自分の家紋は、どうやって調べたらいいのでしょうか。

①両親、父系の親戚に聞いてみる。
嫡男(最初の男子)家系によって継承される本家が有力情報を握っているはずです。また、父親に兄弟が多ければ判明する可能性も高いでしょう。

②父親の実家を捜索
特に仏壇・神棚周り、さらに結婚式などの古い写真、着物や風呂敷にも家紋が残されていることがあります。昭和30年代頃までは、結構いろいろなところで家紋は使われてきました。そう、屋根の瓦にもヒントがあるかもしれません。

③父系のお墓を調べる
墓石やその周辺に家紋を刻印することは、とても一般的でした。特に寺院の墓所にあるお墓にはほぼ確実にあると言っていいでしょう。もし見当たらなかったら、お寺で尋ねてみればわかると思います。

④古い戸籍から親戚を辿る
父親の本籍から戸籍謄本を取り寄せてそこから辿って行くのも有効です。特に昭和23年の戸籍法改正で書き変わる以前の戸籍「昭和改製原戸籍」には、大きなヒントがあると思います。

⑤父系の実家があった場所を訪ねる
家の菩提寺がわかれば、そこで尋ねるとすぐにわかるでしょう。墓所には親戚のお墓も多いと思います。同じ名字の墓石を見るなどして探るのも一つの手です。

とまあ、ここまで頑張って捜索すれば、いつの間にか家系図が書けてしまうかもしれませんね。

どうしてもわからなければ、新しい家紋って作れるの?

八方手を尽くして調べたけど、どうしてもわかりませんでした。でも自分の家紋が何としてでも欲しいのです。ということであれば、自分の家の家紋を新たに作るという方法もあります。先ほど説明した通り、名字とは違って家紋は法の下で管理されておらず、戸籍にも記載されていないので、届け出る必要がありません。自分が気に入った家紋を使うことは、法的には自由が認められているのです。

誰でも自由に、家紋を作ってOK

そもそも家紋とは、明治時代になるまである程度身分が高い家の人しか身に付けていませんでした。庶民の隅々にまで広まったのは、すべての国民が名字を得て戸籍制度が敷かれるようになった明治初期の頃からとされています。その土地を司っていた大名や領主、名字の由来となった家の家紋に、枠の形などちょっとアレンジを加えて自分たちの家紋としてきたようです。

そういったことから、家紋を決めることについてはかなり個人に自由が与えられていました。それは現代においても同じこと。もし、自分の家紋がどうしてもわからなくなってしまい、これからの子孫のために家紋を作って継承していきたい、自分のアイデンティティとして家紋が欲しい、ということであれば家紋を新たに自由に作ることができるのです。

それでも決める前には、同じ家紋を付けているはずの当事者、つまり両親、配偶者、兄弟姉妹や子ども、家系の立場によっては父親の兄弟あたりまでには「一生懸命調べてもわからなかった、でもこういう理由でどうしても家紋を欲しい、新たに家紋を作っていいでしょうか」というお伺いは立てておいたほうがいいかも知れません。家紋を作る上ではいくつかの注意点があります。それをおろそかにしてしまうと、のちのち後悔することにもなってしまいますので、気をつけたいものです。

家紋を作る上で注意を払わなければならないポイント

本家・分家といった家制度がなくなってしまった現代では、家紋はイコール名字の系譜ということで子孫に継承されていきます。あまり安易に「カッコいいから」とか「有名だから」という理由で家紋を決めてしまと、子や孫、その先の子孫が恥ずかしい思いをしてしまうことがあるので、慎重に吟味して決めたいところです。

たとえば徳川家の「三つ葉葵」や、天皇と皇室の「十六八重菊」といった超有名な紋は避けるべきです。また「独占家紋」という、ある人物が自分だけの家紋として主張している家紋も同様です。もし使ったとしても一般的には法律上問題ないことの方が多いのですが、もし家業を営んでいて独占家紋を商標登録していたら、無断使用で訴えられる場合があります。

さらに、何より大切なことは家族の同意を得ることです。家紋である以上、両親や兄弟、子どもや孫といった同じ名字を名乗る家族に関わってくる話です。家紋を新たに作ること、どういう家紋にしようと思っているかについてしっかり話し合って決める必要があるでしょう。

昔であれば、違う家紋を付けるということは本家から出て分家することで、一族にとって重大なできごとでした。軽く考えて行動してしまうと、思わぬ感情のもつれに発展しかねません。

また、どんな家紋にしたいのかも、事前に示したほうがいいでしょう。

こうした相談を経ても家族の同意が得られないようなことがあったとしたら、自分だけの「個紋」とか、第二の家紋として「副紋」にするという方法もあります。

新しい家紋は先祖をリスペクトしてじっくり作ろう

ではどうやって新しい家紋を作ればいいのか。せっかく作るのですがから、ご先祖さまへの感謝の気持ちを込めて、自分の家系に何らかの関連性がある家紋にしてはいかがでしょうか。

古い戸籍を調べてご先祖さまが暮らしていた場所がわかれば、その土地を治めていた大名の家紋を調べることができます。また地域に多い名字から家紋の候補をピックアップしてもいいでしょう。

さらには土地の名産品や景勝地をヒントに家紋を作成するのも妙案です。家紋の元となるモチーフが決まれば、自分でデザインするのでも、あるいは家紋をデザインしてくれる業者に依頼することもできます。じっくり時間をかけて当事者となる家族が納得できる家紋を作りましょう。そして、自分の世代から始まる新しい家紋。ぜひ大切に繋いでいってください。