アイスランドでは国をあげて、家系情報を管理している!?

アイスランドという国をご存知でしょうか。サッカー好きはピンとくるでしょう。2018年のワールドカップロシア大会に初めて出場することで注目を集めています。実はこの国、家系図と深い関わりがあるのです。国をあげて国民の家系情報を管理しているというアイスランド。今回はそんなお国の事情を探ってゆきましょう。

人口35万人の島国の生い立ちに秘密が
まずは、アイスランドという国についての基礎情報です。「火(火山)と氷(氷河)の国」アイスランドは北大西洋上の北緯63度から66度に位置する島国で、島の北部は北極圏にかかっています。さぞかし寒いのだろうと思いますが、メキシコ湾から流れてくる暖流の影響で冬季の最低気温は氷点下5度程度までしか下がらないのだそうです。

北極に近いこともあって、夏は白夜、冬にはオーロラが見られることから観光客に人気の島国となっています。面積は北海道と四国を合わせたより少し大きいくらいで、人口は約35万人です。この北欧の小さな島国で、なぜ家系を重んじるようになったのか。それは人間が入植する歴史を遡らなければなりません。

今なお200以上の火山が活動を続けているとされる火山の島アイスランドは871年に大きな火山活動があり、島全体が火山灰に覆われてしまいました。本格的な入植はその後の874年のこと。ノルウェーの圧政から逃れて移住してきた北欧民族、いわゆるヴァイキングによって建国されました。当時のヴァイキングは海賊のごとく海路を制して各地を征服していましたが、その独特の文化や言語が根付き現代に繋いでいるのは、ここアイスランドだけとされています。

街には、まだ見ぬ親戚で溢れている

アイスランド国民は、そのほとんどがヴァイキングをルーツにしています。そのため血縁が近くならないように、近親婚を避けなければならない事情がありました。これは国が主導していた伝統的な政策だそうです。

すでに18世紀にはアイスランドの役所で国民の家系に関する記録簿があり、交際する相手との血縁を無料で調べてくれるサービスがありました。もし我々が暮らす日本に置き換えてみると、役所で管理しているのが戸籍ではなく家系図、といったところでしょうか。個人の家系データを管理する目的が日本とアイスランドでは大きく違う上、個人情報保護に厳しい日本においてこの制度は馴染まないかもしれませんが、役所に行けば家系図を閲覧できるというのはちょっと羨ましいような気もします。アイスランドでは「初デートは役所に」というのが合言葉なのでしょう。

家系の情報を国が管理する事情にもうひとつ、アイスランドには独特な命名の慣習があって、ルーツがわかりにくくなっているのです。アイスランド人の名前には名字がありません。男性も女性も名前の構成は「ファーストネーム+父親の父称」となります。つまり「誰の息子」「誰の娘」ということしか名前からはわからないので、会ったことがなければ近い親戚でも、血縁に気がつくことがないのです。

国が管理する、驚異的な家系のデータベース
紙で管理していたデータが近年デジタル化されるのは、世界共通の進歩です。アイスランドの家系データも1997年にはデータベース化され、ウェブを通じて調べることができるようになりました。今や国民は誰でもデータベースにアクセスできて、瞬時に30代くらいまで遡ってご先祖様を調べることができるのだそうです。

30代前とはものすごい歴史です。単純に計算すると先祖の数は10代遡れば1,000人を越え、14代で1万人、17代で10万人、20代で100万人、27代では1億3400万人という数になりますが、まさに「人類は皆兄弟」の境地でしょう。アイスランド人の30代前といえば、北欧全体を制してしまうくらいではないでしょうか。

いずれにしても膨大なデータベースですが、もともとは遺伝子研究をする企業が中心となって収集したとのことです。なんと、ヴァイキング入植時から1703年に最初の国勢調査を行うまでの間に生まれたアイスランド人の半数以上と、それ以降に誕生した国民の95%以上の家系データが含まれているのだそうです。

出会ったら、スマホで血縁チェックが常識

そして時代はスマートフォンアプリ。これから交際しようという男女がスマホをぶつけ合い、もしふたりの祖父母が同じだったら警告音が鳴るという、画期的なアプリが大人気なのだそうです。バーやクラブで出会って意気投合したら、さっそくこのアプリで調べるのが今や常識なのだとか。

でもこのアプリ、ゲーム感覚で血縁を調べるだけではなくて、辿れるところまで先祖を辿り、ご先祖様の職業や家族までがわかるというのだからすごいです。12~13世紀に書かれたとされる日本の古事記のような「サガ」を大切に継承してきた、アイスランド人特有の民族性に通じるものを感じます。