NHK大河ドラマ『西郷どん』で注目される、西郷隆盛の実像

まずまずの視聴率で好スタートを切った、2018年NHK大河ドラマ『西郷どん』。主演・鈴木亮平が扮する西郷隆盛は下級武士の家系に生まれました。1年間のドラマを通じて、素朴な人柄の隆盛の愛・友情・野望を描き、明治維新を成し遂げる革命家へと進化する姿を追った物語となるようです。 隆盛のイメージというと、あの肖像画とどっしりとした銅像が印象深いでしょう。ただし肖像画は、本人を見ながら描かれたものではなく、隆盛死後に親類・知人から特徴を聞きとりをしてイタリア人の画家が描いたのだそうです。当時の証言者によると、かなりリアルな隆盛を描いているということがわかっています。

人柄は、座右の銘「敬天愛人」が表す通りだったとのことです。貧しかった若い頃から困っている人がいれば自分の持っている物を施していたそうで、この行いは政府の要職に就いて高給を受け取るようになってからも変わることはなかったといいます。常に強い信念を持ち、人を憎まず受け入れる懐の大きな人物だったということが伝わってくるのではないでしょうか。

家系図から読み解く隆盛の生涯とは

さて、激動の時代をエネルギッシュに生きた隆盛はいったいどんな家系に支えられていたのでしょうか。さっそく家系図を広げてみましょう。 西郷家のルーツは肥後国菊池郡(現在の熊本県菊池市)に本拠を持つ菊池氏の末裔とされています。祖父は龍右衛門。父・吉兵衛と母・満佐子の間に七人兄弟の長男として隆盛は生まれました。

隆盛は鹿児島に敵なしと言われた伝説の先祖「無敵斎様」(西郷九郎兵衛昌隆)の再来と信じられていたそうです。3人の弟、3人の妹の中で三男の信吾は後の海軍大臣・西郷従道。ちなみに『西郷どん」には実際に従道の孫の孫にあたる女優・西郷真悠子さんが、従道の娘・桜子役を演じる予定になっているそうです。縁(えにし)を感じますね。

隆盛は生涯に3度の結婚をしています。最初の妻は薩摩藩士・伊集院家から嫁いできた須賀。貴族院議員を務めた伊集院兼寛姉です。この結婚はわずか2年でジ・エンドとなり二人の間に子どもはできませんでした。

2度目の結婚は奄美大島の村娘・愛加那です。3年ほど一緒に暮らし、長男の菊次郎と長女の菊子が誕生します。菊次郎はのちに京都市長を務めました。また、菊子は隆盛の従兄弟・大山誠之助と結婚しますが、夫の借金とDVに苦しめられ最終的には菊次郎の元に身を寄せ、京都で亡くなったそうです。

3度目の結婚は隆盛37歳の時。妻の糸は薩摩藩士・若山家から嫁いできて隆盛が亡くなるまでの約12年間添い遂げました。寅太郎・牛次郎・酉三と3人の息子を授かりますが、3人とも若くして父・隆盛を亡くしたことになります。

寅太郎はドイツ留学を経て陸軍少尉となり、その後は貴族院議員として活躍し、西南戦争で敗れた父・西郷隆盛の名誉を回復したとされています。次男の牛次郎は日本郵船に務め、兄の死後に母が亡くなるまでの3年間を共に過ごしたのだそうです。隆盛の心優しいDNAを引き継いだような人柄だったのでしょうか。三男の酉三は結核のため残念ながら30歳で早逝しています。

子孫や親戚には驚きのあの人も

続いては、隆盛の子孫や遠縁の親戚を家系図で見ていきましょう。
隆盛と糸の長男・寅太郎の妻・ノブの父・園田実徳は薩摩藩士で、のちに北海道開拓の功労者となった実業家でした。その弟・武彦七も函館に移り住み馬術を学び多くの弟子を残したそうです。とくればもうおわかりでしょう。彦七のひ孫が武豊・幸四郎の兄弟騎手ということです。

その寅太郎の三男・西郷吉之助は戦後自民党参議院議員を4期務めた政治家です。第2次佐藤内閣では法務大臣を歴任しました。
隆盛と愛加那の長男・菊次郎の孫・西郷隆文氏は「現代の名工」に選ばれる著名な陶芸家として現在も活躍されています。日置島津家縁の地に「日置南洲窯」を開いて代表を務めています。見学もできるそうです。

さらに寅太郎の孫の西郷隆夫氏は、鹿児島の鶴丸城二の丸にある「西郷隆盛銅像展望ホール K10カフェ」を経営しています。隆文氏による器でいただく松花堂御膳が人気だそうです。


西郷隆盛ゆかりの地を訪ねてみましょう。まずは「生誕の地」。鹿児島中央駅からほど近い、甲突川左岸の下加治屋町が生誕の地で石碑があります。

鹿児島中央駅の駅前通り「ナポリ通り」に面した共研公園にあるのが「西郷南洲翁宅地跡」。安政2年から明治2年までの10年間を過ごした場所です。上竜尾町の南洲公園内にある「南洲墓地」は、隆盛以下西南戦争で散った薩摩軍2,023人が眠っています。

公園の北側にある「南洲神社」は隆盛が祀られている神社。さらに公園内の「西郷南洲顕彰館」は明治維新における薩摩藩士の偉業を伝える資料館になっており、隆盛の遺品やジオラマが展示されています。

征韓論が叶わず鹿児島に戻った隆盛が設立した「私学校跡」は、城山町の現鹿児島医療センター前にあり、石塀には西南戦争の弾痕跡が残っており戦いの激しさがうかがえます。

近くの鹿児島市立美術館の敷地内に「西郷隆盛銅像」も見逃せないスポットでしょう。前出の「西郷隆盛銅像展望ホール K10カフェ」は通りを隔てた二之丸ビル5階にあって、窓から銅像を間近に臨むことができます。

西郷隆盛のルーツから現代まで、家系図を辿ってきました。家系図を広げながら大河ドラマ『西郷どん』を観るのはきっと2018年の楽しみになることでしょう。

さあ、あなたのルーツはいかがでしょうか。家系を調べて家系図を作ってみると、思わぬ歴史ロマンへと世界が広がってゆくかもしれませんよ。