「戸籍の編製」というワードをご存知ですか?「戸籍の編制っ?」「えっ、唐突に何なのっ…?!」と、感じられる方、聞きなれない言葉に不安感を覚えられる方、まったくイメージがわかない…と思われる方、今このコラムを読んでくださっているあなたも何かしらの抵抗感があったりするのではないでしょうか?
しかし、そんなに難しいことではないので、ご安心頂けたらと思います。そもそも「戸籍の編制」とはこの文章の半ばにも記されていますが、シンプルに「新しい戸籍を作ること」です。「あらっ?そうだったの?なんだ、簡単じゃない…!!」と思わるのではないでしょうか?では、さっそく「戸籍の編制」について見ていきたいと思います。
目次
戸籍が日常的に活用される場面は減少
戸籍とは日本国民各個人の、生まれてから死ぬまでの出来事を記載した公的な文書のこと。というのは以前にも、このコラムでご紹介しました。
家族集団単位で国民を登録することが目的の制度ですが、戦後になって住民登録制度が開始され、住民基本台帳が戸籍と連携するようになると、日常的に活用される場面は少なくなってきました。時代の変化というものなのでしょうか。因みに住民基本台帳とは氏名、生年月日、性別、住所などが記載された住民票を編成したもので、住民の方々に関する事務処理の基礎となるものです。ただし先述したとおり、戸籍は遺産分割の際の相続人特定や婚姻・離婚といった場面、家系図作成などで家系を過去に遡って調査する際に必要となってくる、大切な公文書であることに変わりはありません。
もし戸籍が先祖から一貫して1枚のものであったとしたら、家系の裾野はどんどん広がる一方で、やがては分厚い本のようになってしまうでしょう。
管理する役所は唯一なので膨大な人数となった一族の子孫は、自分の戸籍が必要なたびにその役所から写しを取り寄せなければなりません。役所も戸籍全部の謄本を複製したり、必要な一部分の抄本を複製するのに大変な手間がかかってしまうでしょう。戸籍が一族単位ではなく家族単位でよかったです。
もし、一族単位であればあまりにも膨大な量の文献を役所から取り寄せなければならないため「ちょっとその辺まで!」といった「どこかに寄って帰ろう」に似た考えでふらっと入手するわけにはいきませんね。日本の役所の整備が整っていること、また利用する人たちのことを考えていてくれて、非常に良かったと思います。
また、戸籍制度には「三代戸籍禁止の原則」というものがあり「親・子」の二代までという原則が民法によって定められています。つまり、結婚などで新しい家族ができるたびに、新しい戸籍が増えてゆくということになるわけです。
そこで、「戸籍の編製」つまり新しい戸籍ができること。それがどんな時なのか、主な例をあげて紹介してまいりましょう。戸籍の仕組みがわかってくると、家系図作りがとてもはかどるようになります。
戸籍が編成される原因は?
戸籍の改製
国民側の事情ではなく、法改正やシステム変更などに伴って記載内容や表記が変わることです。以前の戸籍のことを「改製原戸籍」といいます。昭和23年制定以前の戸籍が「昭和改製原戸籍」。昭和23年制定の戸籍で近年電算化が進んでいるために使われなくなったのは「平成改製原戸籍」で、これは150年間保存されることになっています。
婚姻
結婚、すなわち新しい家族が構成されるわけですから、戸籍を編製します。当事者となる夫と妻は、それ以前の戸籍から除籍となります。よく結婚することを「入籍しました」と言いますが、入籍とはすでにある戸籍に入ることで除籍の対義語となるため、未婚者同士の婚姻の際、法律的には正しくない表現です。「婚姻届を出しました」が正しい言い方です。
話しが若干脱線しますが「そんなこと全然知りませんでした」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?よく、テレビなどで「某タレントさんが某女優さんと婚約会見を開きました」という情報番組を見かけることがあるかと思います。そうすると、ふたりは金屏風の前に晴れ晴れした出で立ちでお互いの左手の薬指に光る指輪を報道陣に見せて、大量のフラッシュを浴びながら「僕たち、私たちは本日入籍しました。」と幸せいっぱいに語っていたりしますよね。あれは、法律的に正しくない表現だったんですね。そのタレントや女優さんのはファンの方は声を大にして「その表現は間違いですよ!」と言いたい悔しい気持ちの方もいるのではないでしょうか。
転籍
戸籍謄本にいる者すべてが、現在の本籍地から他の市区町村に移った際に戸籍を編製し、以前の戸籍は除籍というかたちで保存されます。
分籍
読んで字のごとく戸籍を分けることをいい、分籍届けを出した届出人本人を筆頭者とする新たな戸籍が編製されます。たとえば、子どもが親の戸籍から出たい事情がある場合などです。
復籍すべき戸籍が除籍されている
離婚などによって以前の氏に戻す際に、復籍すべき戸籍がすでに除籍(誰もいない状態の戸籍)になっていたら、新たな戸籍の編製を申し出ることになります。
分家
これは、現代では行われていない旧民法の家制度に関わることです。よく時代劇や昼ドラ、主婦の間でもっぱら人気を博していた韓流ドラマでもよく見かける場面ですが、本家(宗家)と分家との間で発生するいざこざストーリーがあるかとは思います。一家の主人である戸主の嫡男(最初の男子)家系によって継承されるのが「本家」であり、次男以下や2番目以下の子が、戸主の同意を得て新たな家を設立して戸籍を継承することをいいます。
家督相続
これも旧民法の制度なので、現在は廃止された相続形態です。戸主のすべての財産と権限である家督を長男のみが相続し、同じ本籍で新たな戸籍をつくるというものです。これもまた現代では通用しない、もしかすると差別やハラスメントにも該当するような時代錯誤な話ですよね。長男のみが家督を相続するなんて、次男坊や三男坊は納得できませんし、それに女児なんて生まれた瞬間にがっかりされていたという話も聞きます。そのような時代だったのかも知れませんが、なんだかやるせない気持ちになってしまいますよね。もしその長男が家督を継ぐにふさわしくない人柄であったとしても、その者に家督が継がれるのが習わしだったとか。次男、三男からしたらさぞ不公平な話であったろうと思います。
編製以前の戸籍を辿ると、先祖が見えてくる
古い制度によるものもありますが、戸籍には家族のライフイベントが刻まれています。戸籍が編製された痕跡が見つかれば、その前の戸籍を調べることで先祖を知る道は広がってゆくでしょう。その広がった家族の戸籍を基に今、家族間にやや問題を抱えている人にも、話題作りのひとつとして「家系図」を作成してみてはいかがでしょうか。もしかすると、「その問題」に何か光りが差し込むかも知れません。
もちろん簡単に出来るものではなく、労力がかかる作業ではありますが、苦労も楽しめる方であれば、戸籍をもとにご自身で家系図を作成してみることもオススメです。
まとめ
いかがでしたか?戸籍の編製とはどんな原因で編製されるのか、少しばかりはおわかりになりましたでしょうか?日本は古来より「家」を大切にする文化が浸透しており、「家族」「血縁」の繋がりが非常に強いと感じます。「そんなに家柄ばかりこだわらなくてもいいのでは?」と思うこともありますが、それが一方では日本人の良さなのかもしれません。しかし現代社会は「個」が評価され、人々も「個」の成長、「個」の成果に視線が向きがちです。「自立」という意味では、「個」の成長は非常に大切な事です。ですが、そのような時代だからこそ「個」の成り立ちをより深く知り、これまで以上に「個」を引き立たせるために「家族」「血縁」をまずは大切にし、そのルーツをたどってみてはどうでしょうか?その方法や、答えはきっと「家系図」が教えてくれると思います。この記事を通して、あなたの人生がより豊かになるための気付きやお力添えになれたなら、とてもうれしく思います.