果たして、江戸時代のご先祖さまには辿り着けるのか?

家系図を作る際には、ご先祖さまをどこまで辿ることができるか、というのが重要なポイントになります。三代遡って曾祖父母については、実際に会ったことがあったり、両親や祖父母から聞いたりしてどんな人だったかとか、どんな仕事をしていたかといったようなことを知っているのではないでしょうか。

ところが、さらにもう一代、二代と遡ると名前すら怪しくなってきてしまいます。ご先祖さまは幕末の頃どこで何をしていたのだろう、江戸時代はどんな仕事に就いていたのだろうといったことに思いを馳せれば、それはもう否応なく知的好奇心が掻き立てられるはずです。

戸籍の収集は、行く手を阻む壁の連続?
では何世代前のご先祖さまに出会うことができるのか、早速戸籍を辿ってまいりましょう。

まずは自分が結婚して除籍した戸籍、つまり自分が誕生して入籍した戸籍から見てみます。平成16年(2004年)以降順次デジタルデータ化が進んで、戸籍の表記が変わっている自治体が多くなってきましたが、両親が結婚前に誰の戸籍から除籍したのかがわかります。一般的には父方の祖父、母方の祖父ということになるので、次にはその本籍地にある戸籍を取り寄せましょう。

こうして代々辿ってゆけばいいのですが、昭和23年(1948年)の改正戸籍法で大きく変わる以前の戸籍(除籍・改正原戸籍)は、現在のように夫婦を基本単位とするものではなく、かつての風習の家を基本単位とするものでした。また、このあたりからは旧字体や難読の仮名が出てくるので、徐々に解読が難しくなってゆきます。頑張っていきましょう。

戸籍の保存期間の問題
もうひとつ気をつけなければいけないのは、除籍と改正原戸籍には保存期間が決められています。平成22年(2010年)の法改正で保存期間は150年に延長されましたが、それ以前は80年でした。そのため、法改正前に除籍や改正原戸籍が破棄されてしまっている可能性があるということになります。それでも多くの市区町村では自主的に破棄は行わず、保管している自治体がほとんどですので、早々に諦めずまず戸籍を取り寄せてみましょう。

運良く大正時代、明治時代の除籍や改正原戸籍を手に入れることができても難関はまだまだあります。明治5年に日本初の本格的な戸籍として登場した「明治5年式戸籍(通称:壬申戸籍)」は、身分に関する差別に繋がるような表記があるものも含まれているということもあって、各地方法務局の倉庫で厳重に管理されているため、閲覧ができない状態になっています。

江戸時代の家系図は要注意!

こうした幾多の壁をくぐり抜けて家系を遡り、江戸時代のご先祖さまに出会うことができればラッキーです。

江戸時代の戸籍制度は文政8年(1825年)に初めて長州藩で戸籍法を施行したのがその後の戸籍制度の基礎となったとされています。それまでは幕府や寺社が記録した宗門改帳や人別改帳、それらを合体させた宗門人別改帳、戒名・俗名・死亡年月日・行年を記録した過去帳で管理していました。

江戸時代のご先祖さまを辿るのは、これらの台帳が重要な資料になります。本籍地や暮らしていた場所から菩提寺を探してゆけば見つかるかもしれません。さらに当時作成された家系図が出て来るかもしれません。これはお宝、家系を辿るには最強の武器です。でも安易に喜んでもいられません。この家系図には重大な落とし穴が潜んでいるかもしれないからです。

その家系図、家系を盛ったニセ物かも
明治以降の戸籍制度というのはしっかりしていて、それらを基に作成する家系図はかなり正確と言っていいでしょう。が、江戸時代に作られた家系図には結構怪しいものがあるようです。家系図を作成するような家は教育水準が高い、せいぜい人口に対して1割くらいでした。

中でも武士にとって家系図とは今で言うところの履歴書のようなもので、さらに江戸時代では出自や家柄も出世にあたっては重要なものでした。そうなると、出世のために有利な色よい家系図が欲しいところです。そこで「ニセ家系図」という、名家や将軍家、公家との血筋があるように""盛った""家系図が流行したのだそうです。こうしたねつ造、改ざんを得意とした「家系図屋」という職業も存在していたということですから驚きです。

このような色よい家系図を手にして有頂天になっていたら、とんでもない家系図になってしまいます。そういった事情もありますので、江戸時代の家系図は鵜呑みにせず、できる限り古文書で探るようにしましょう。

明治維新の頃まで辿れればラッキー

家系図作りのためにご先祖さまを辿る旅とは、荒波の海に小舟で漕ぎ出すようなものです。穏やかな湾内を進む平成から昭和の頃は順調でも、外洋に出る大正から明治からは大波に行く手を阻まれることも多くなります。江戸時代まで航海できることはごく稀であることを覚悟しておきましょう。

うまく波を乗り越えて進むことができれば平安時代のご先祖さままで出会うことができるかもしれませんが、その確率はごく僅かと言っていいでしょう。そんなことを胸に、家系図作りは気軽に取り組むことが大切なようです。