空前のブームを巻き起こした、ドラマ『ルーツ』

『ルーツ(Roots)』というテレビドラマをご存知でしょうか。1977年に制作されその年に放送されたアメリカのドラマ作品です。全米ネット局ABCで放送されると平均視聴率は44.9%(エーシーニールセン調べ、全米視聴率)を記録。なんと1億3,000万人が視たという計算になるほど、空前のヒット作となりました。

日本でも半年遅れて放送されましたが、日曜日から8夜連続ゴールデンタイムという集中的な放送で、平均視聴率23.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、最終回は28.6%(同)という高視聴率を記録しました。にわかに『ルーツ』ブームが巻き起こり、主人公「クンタ・キンテ」の名前を知らない人はいないほどでした。ビデオ録画がまだ一般的ではなかった時代だけに、1話たりとも見逃してはならぬと家路を急がなければならず、定時退社組が増え見事なまでに「働き方改革」が実現したという逸話があるほどです。

『ルーツ』を知ろう

そんな社会現象まで巻き起こした『ルーツ』とは、いったいどんな作品だったのでしょうか。

原作はアフリカ系アメリカ人作家のアレックス・ヘイリー。原題は『Roots: The Saga of an American Family』です。自身の一族の歴史を辿るドキュメンタリーとフィクションをミックスした構成となっています。

西アフリカの小国ガンビアに生まれ、1767年にアメリカ合衆国に奴隷として連れて来られたヘイリーの6代前にあたる先祖クンタ・キンテを始祖に、子孫の人間模様が描かれています。舞台となる時代は1760年代から1870年代頃までの約100年。

奴隷制下にあったアメリカ合衆国の暗い時代に南部の農園で暮らす黒人奴隷の苦労、葛藤、人間愛が交錯する中、クンタ・キンテの娘キジー、その息子のチキン・ジョージ、さらに息子のトム・ハービーとその子供まで5世代が登場します。クンタ・キンテを始めとする一族が、差別や迫害に遭いながらも誇り高く生きていく様子が描かれています。南北戦争終結とともに1865年に奴隷制は廃止され、少しずつではありますが黒人たちにも自由が与えられました。しかし、白人至上主義の過激な秘密結社による迫害があるなど、物語が終わった後も黒人にとっては近年に至るまで辛い時代はまだまだ続きます。

作者のアレックス・ヘイリーは幼い頃に、祖母でありクンタ・キンテの曾曾孫にあたる、シンシアから家族の歴史の話を聞かされていたことを回想します。その記憶を呼び戻して1963年から12年間掛けて執筆したのが『Roots: The Saga of an American Family』であると語り、ドラマはフィナーレを迎えました。

続編やリメイク版にも注目

『ルーツ』の大ヒットを受けて、すぐに続編が制作されます。『ルーツ2』(英語題:Roots The Next Generations)は、アメリカ合衆国では1979年2月に、日本でも同年の9月から10月に掛けて放送されました。舞台は奴隷解放後、チキン・ジョージが買ったテネシーの土地に家族で移り住むところから始まります。その間の世界大恐慌、2度の世界大戦といった激動を乗り越えて、クンタ・キンテの子孫たちがどうやって自由と人権を勝ち取って行ったかが、作者アレックス・ヘイリーの目線で描かれています。今の時代となっては信じられないような出来事やシーンも多く登場するため、フィクションに思えてしまいますが、事実に若干のフィクションを加えた作品ということで、基本的には実際の出来事が大半とのことなのです。「自由」とは、「平和」とは、「人種差別」とはどういうものなのか。今を生きる日本人にとっては意識することが少ない事柄について多くを考えさせられる作品になっています。

『ルーツ』は2016年に新たなキャストでA&Eネットワーク、ライフタイム、ヒストリーのケーブルテレビ3社によってリメイクされました。オリジナル版でクンタ・キンテを演じたレヴァー・バートンが共同制作責任者を務めています。日本でも同年8月にCSヒストリーチャンネルで放送されました。それに先立って、前年と同年1月にBS放送でオリジナル版の『ルーツ』が再放送され、話題になったのも記憶に新しいところです。

作者ヘイリーのルーツ探しがキッカケに

『Roots: The Saga of an American Family』執筆にあたって、アレックス・ヘイリーのルーツを探る旅は遠い祖国であるガンビアへと渡ります。キンテ一族の語り部や遠い親戚を辿って聞き取りを重ねて、一族の姿を形にしていったとされています。当然、戸籍や家系図といったような文書がなかったことで、その取材は困難を極めたのではないでしょうか。まさに先祖に出会うための執念と言っていいと思います。

わたしたちは日常的に家系のことや、何かの起源のことを「ルーツ」と言葉を使うようになっています。それもこの作者ヘイリーのルーツ探しに始まり、テレビドラマ『ルーツ』の大ヒットが社会現象となって定着した背景があったことを覚えておきたいものです。この作品を通して、自分のルーツに興味を持つ方も多かったといわれています。日本人は、戸籍を辿ることでアメリカより簡単にルーツ探しができますので、自分のルーツに興味を持った方はまず戸籍を辿って作る家系図作りを始めてみることをおすすめします。