家系図を作る際には、「心構え」が必要

家系図を作るということは、とても楽しいこと、とても夢のあることです。自分のご先祖さまとは一体どういう人だったのだろう、どの土地に縁があるのだろう、それぞれの時代でどんな暮らしを営んでいたのだろうか。馳せる想いはさまざまですが、考えて調べることは、何よりの先祖供養になります。

 このようにご先祖さまを大切にしようという意味からも、家系図はぜひ作っていただきたいものです。しかし、中には作らない方がいい、という人もいます。それは作ってはいけない、ということではなく「家系図を作る際の心構え」というべきことかもしれません。今回は、これから家系図を作ろうと考えている方にはぜひ読んでいただきたいお話です。

 有名人の子孫という「一族伝説」に気をつけよう

家族や親戚から「ご先祖さまはこんな人だった」という話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。例えば祖父母にとっての祖父母や、さらには曾祖父・曾祖母といえば、自分から見ると4代・5代前でずいぶん昔の世代ということになります。 

実際に同じ時代を生きたご先祖さまについて語られることは、多少の思い違いや時間的な誤差はあってもほぼ正確な情報と言えるでしょう。もちろん、戸籍に記載してあるような詳細のデータは得られなくても、こうした身内の証言は家系図作りの際に大いに参考になるものです。

その一方で「わたしたちは江戸時代の○○の子孫らしい」とか「武士の△△家の末裔だよ」という話を家族や親戚から聞かされたことがあるという方もいると思います。さらには「□□さんは遠縁の親戚」ということで、歴史上の人物、文豪、芸術家などの名前を持ち出されることもあるでしょう。こういった情報がしっかりとした裏付けのある信憑性の高い根拠があれば、家系図作りの貴重な情報ということになりますし、まったく問題ありません。

しかし、その接点を証明する確固たる物的証拠もないそういった「言い伝え」、ここでは「一族伝説」と言うことにしますが、散々聞かされ続けて、しかも家族・親戚全員がそのことを信じている中では、自分だけが疑うこともないでしょう。実は「家系図を作らない方がいい人」というのは、こういった「自分の家系について”根拠の乏しいポジティブな言い伝え”がある人」のことなのです。

 「一族伝説」が真実ではなかったら?

テレビのお宝鑑定番組で、家族全員が歴史的な価値のある骨董品であると信じている展開。これも「一族伝説」です。希望鑑定価格は1千万円と大きく出たところ鑑定結果は贋作で1万円でした。といったシーンはよく見られます。当事者はテレビなので悔しさを全面に出すことはなく、むしろ笑ってごまかしていますが、落胆ぶりは隠せません。

家系調査もこれと同じような展開になるというわけです。しかし「一族伝説」が事実でなかった時の落胆は骨董品の比ではないに違いありません。家族や親戚の間でも気まずい暗い雰囲気になってしまい、その果てには「家系図を作ろうと言い出したお前が悪い」とか「家系図作成業者が悪い、発注したお前のせいだ」、「余計なことをするな」といった具合に吊るし上げられてしまうことになってしまうかもしれません。

 ではなぜ、このような「一族伝説」が広まってしまったのでしょうか。恐らくご先祖さまの誰かがちょっとした見栄を張ってしまったことによる部分が多いと思います。戸籍や家族の在り方が家単位だった時代、婚姻や養子縁組などの場面では「家」をついつい虚飾してしまいがちだったのかもしれません。ふとした勢いで話を盛ってしまったがために、その後も修正されることなく現代に至るまで「一族伝説」として継承されてしまうことになるのです。

 家系図作りは身内の理解を受けて気軽に

もし「一族伝説」があり、家族がそのことを信じ切っている場合、家系図作りには慎重になるべきといえます。どうしても家系図を作りたいというのであれば、事前に家族や親戚にしっかり説明して、「もし言い伝えられている情報が間違いであったとしてもその事実を受け入れること」という約束を取付けてからスタートしましょう。そういった間違いや見栄も家族の歴史の一部として受け入れられる心構えが必要になるということです。

家系調査というものは、想像できない結果を招くこともあります。もちろんこの逆に、特に家柄のことは伝えられていなかったのが、調べてみると名家や武家の出身だった、という可能性も十分にあります。家系図作りやルーツ探しに取組むにあたっては、決して過度な期待はせず、何が出てきても動じないような気持ちで取組むことが大切です。そもそも家系図は、そういった身分調査のために作るものではなく、純粋に自分のルーツを知り、先祖に感謝するために作るべきものであるといえます。結果に動揺することなく、気軽な心構えをもって始めましょう。