あなたと同じ苗字や名前の人が全国にどのくらいいるのか気になったことはありませんか?そもそも日本には、どれくらいの名字があるのでしょうか。実は日本には、名字は27万種類近くもあります。これは、ほかの国と比べると非常に多いです。例えば、13億人という人口の中国でも500種類、韓国でも250種類ほどしかありません。

ヨーロッパ全体でみても4~5万種類ほどです。日本に名字が多いのは、「アベ」と呼ぶ名字でも「阿部」、「安部」、「安倍」などのように異口同音の名字が多いことが一因だとされています。そして名字にはそれぞれ由来があり、地域によってその勢力分布も異なります。

名字はいつから決まったのか?

【コラム】自分の名字は一体いつ決まったのか?
の中でも解説をさせていただきましたが、庶民を含め、国民の全員が名字を持つことになったのは、明治8年(1875年)定められた平民名字必称義務令が契機でした。

名字のルーツは様々ですが、地名からきているもの、昔の職業からきているもの、昔の武士の名前からきているもの、商売の屋号からきているもの等、色々なタイプがありますが、日本では地名・場所・地形からきている名字が大部分を占めていると言われています。

一見地名とは関係のない人の名前が地名として馴染むこともありますので、やはり地名にちなんだ名字が多いのです。地名にルーツをもつ名字でわかりやすいものは「田」がつく名字(田辺・田中・田代等)です。田んぼの周辺の地域を多くの人が田辺と呼ぶようになり地名として定着し、そこから名字になり「田辺」としたなど、様々な経緯で名字を名乗ることになります。

また明治8年に名字を”公称”することが義務付けられたのですから、元々庶民に名字がなかったのではありません。その為、江戸時代の前の時代からの「名字」、「姓(かばね)」、「氏(うじ)」はあったので、明治になってその元々持っていた名字にちなんだものを使う人が多かったようです。

しかし中には長く続いた江戸時代の身分制度の中で自分の名字を忘れてしまっている人も多く、そのような場合はお寺や、その土地の名士等に名字をつけてもらったそうで、その方法についても地域差があります。

ですので、都道府県や地方によっては、同じ名字が集中するということもあります。

全国レベルで多い名字

現在1番多い名字とされているのが「佐藤」さんです。次にランクインするのが鈴木さん。そして、「高橋」さん、「田中」さん、「伊藤」さん、「渡辺」さん「山本」さん、「中村」さん、と続いていきます。今上げた7つの名字だけでも、皆さんの今までの人生の中で、この名字の人と出会った経験もあることと思いますし、この名字全ての人と出会ったことがある方も多いと思います。全国的に見て多い名字ランキングですので、やはり出会う確率も高いということです。

全国の珍しい名字

全国でわずか1世帯とされている名字もあります。渡来人による帰化名字の「辺銀(ぺんぎん)」さん、京都の小路の名称からきている「勘解由小路(かでのこうじ)」さん、伝統的な名字である「奉日本(たかもと)」さん、蔵が栄えるという意味が由来の「榮倉(えいくら)」さんなどです。

ほかにも、由来の詳細は不明ですが「凸守(でこもり)」さん、「蟋蟀(こおろぎ)」さん、「邪答院(けいとういん)」さんなども、わずか1世帯とされています。もしも出会ったことのある方がいたら、とても珍しいことと思います。

名字の分布には特徴がある?

実は名字には、東日本型と西日本型があります。東日本では「佐藤」さん、「鈴木」さんが多い名字なのですが、西日本では「田中」さん、「山本」さんが多い名字となっています。ちなみに境目となる三重県の1位は「伊藤」さん、続いて「山本」さん、「田中」さんとなっています。では日本海側はというと、新潟県の1位が「佐藤」さん、富山県の1位が「山本」さんとなっているので、ここが東西の境目といえそうです。

この新潟県と富山県の間には、「親不知子不知(おやしらずこしらず)」という海辺の難所や飛騨山脈があったため、昔は人の行き来が難しかったのだと言われています。また、関所のあった関ヶ原も文化圏を隔てる垣根として機能していました。そのため、ここを境にして東西の名字の分布にパターンができたのだと考えられています。

その他の地域はというと、四国は一つの島であるにも関わらず名字の分布はバラバラです。こちらも四国山脈があったため、移動が難しかったのが原因ではないかと思われます。九州の分布もやや独特で、西日本型の「田中」さんは多いですが、「中村」さん」「山口」さんが多いのも特徴です。また、鹿児島・宮崎の南部では「~本」が「~元」に変化する特徴もあります。そのため、「山本」さんが「山元」さんになるのです。実際に、西郷隆盛が坂本龍馬に宛てた手紙で、「坂元龍馬」と書いてあるものがあるそうです。

同じ名字が集中する都道府県

北海道から沖縄まで、全体的に見てみると、やはり名字が多くなるのは、最初にご紹介させていただいた「佐藤」さんや「高橋」さん、「鈴木」さん、「渡辺」さん、「田中」さん・・・などなど、ランキングでも上位に来ている方が多く見受けられます。ただ、それぞれの都道府県がおおむね上位ランキングの名字の方が多い一方で、ランキングに特徴がある都道府県もあります。

宮崎県に多い名字、珍しい名字

宮崎

宮崎県の名字ランキングには特徴があり、佐藤さんや鈴木さんではなく、黒木」さんが1位となっています。これはなぜなのでしょうか?

黒木さんの次に「甲斐」さん、「河野」さん、「日高」さん・・・。そしてやっと、全国ランキング1位の「佐藤」さんが、第5位に登場します。宮崎県の黒木さんは、宮崎県内の中でもかなりの割合に見えます。黒木の名字も昔の宮崎の地名からきていると考えられており、黒木という氏も九州に存在していたようです。

そして反対に、宮崎県で珍しい名字は「久米」さん、「立川」さん、「池内」さん、「門脇」さん・・・などです。それぞれ、およそ150人ほどとなっています。ただ、宮崎県に黒木という名字が多い理由にも諸説あり、はっきり一つこれが理由だと断定することはできないようです。

沖縄県に多い名字、珍しい名字

沖縄

次が沖縄県です。沖縄県の名字20ランキングには、全国名字ランキング20位までの名字が1つも入っていません。

沖縄県の名字ランキング1位は「比嘉」さんとなっています。次に「金城」さん、「大城」さん、「宮城」さん(都道府県名字です)、「新垣」さん、「玉城」さん、「上原」さん・・・と続いていきます。これらの名字は、特に沖縄出身の方で使われている印象が強い名字ですね。

しかも「城」という漢字が名前に入っているのが多いのも目立ちます。
そして反対に、沖縄県で珍しい名字は「沖」さん、「田川」さん、「植村」さん、「北島」さん・・・などです。それぞれ約50人ほどだそうです。

このように調べてみると、名字の違いでも色々なことがわかります。自分のルーツを調べる上では、自分の名字の由来も調べてみると面白いかもしれません。

まとめ

いかがでしたか?
普段はあまり意識して過ごすことのなかった名字にも、さまざまなご先祖様の歴史が密接に結びついていることがおわかりいただけたかと思います。有名人や知人の名字と出身地を思い浮かべてみると、ランキングや分布に当てはまる方も多いのではないでしょうか。

歴史のロマンや痕跡を読み取ることができる名字の勢力分布、あなたの名字から自分のルーツをさかのぼってみてはいかがでしょう。世帯数から珍しさを調べてみるのもおもしろいかと思います。酒席や商談、親戚の集まりなどで盛り上がる話題になるかもしれません。