はじめに
日本人である誰もが持つ名字ですが、実は海外のどの国よりも日本が断トツで種類が多いことを皆さんはご存知でしょうか。例えば世界でも有数の人口数で知られる中国でも500種類、韓国ではわずか250種類しかないとされています。しかしその一方で日本にはおよそ27万種類近く名字の種類があることが分かっています。アジア圏の国と比較しても日本の名字がいかに多種多様であるか想像できるはずです。
また種類が豊富なだけではなく、日本国内の地域によっても名字の種類に地域特有の傾向があることも分かっています。そこで今回の記事では東北地方の都道府県の一つである、青森県に焦点を当てて青森県に多い名字をその由来とともにランキング形式で紹介してみました。
青森県とはどんな地域か
青森県と言えば日本でも有数のりんごの産地として知られていますが、青森県がどういった経緯で今の都道府県の名前になったのかについてはあまり知られていません。本題である青森県で多い名字について見ていく前に、まずは青森県とはどんな地域であるかという内容から確認していきましょう。
青森県の成り立ち
青森県には縄文時代の遺跡である三内丸山遺跡があり、その遺跡内から複数の土器などが見つかっています。このことから青森県では縄文時代から高度な文明が築かれていたことが想定されます。
そもそも青森県は8世紀から9世紀に入り律令国家としての政策が構築されるまで、政権統治では対象外の地域にされていました。それが13世紀後半には北条氏の領地となり、それが地頭代である津軽安藤氏が青森地方を支配することになりました。そして時代が進み室町時代に突入すると青森県には港が作られ、海上交易が盛んに行われるようになっていきます。
そうして時代が進み15世紀半ば頃に南部氏が勢力を青森県まで拡大し、1597年に南部信直が盛岡に築城、また1611年には津軽為信が弘前に築城します。そしてその二城を中心として日本海側を津軽氏の弘前藩が、太平洋側を南部氏の盛岡藩が統治することになりました。
この後すぐ青森県という名前が登場する訳ではなく、まず明治維新の廃藩置県によって弘前県が誕生します。歴史的かつ経済的にも藩主と関わりの深かった弘前という名前でしたが、初代県大参事に任命された熊本藩出身の野田豁通(ひろみち)は、弘前という名前よりもそれより歴史の浅い青森という名前をいたく気に入りました。そのため県庁所在地が弘前から青森へと移転される運びとなり、現在の青森県に至ります。ちなみに、青い森が見渡す限り広がっていたことから青森という地名が生まれたというのが定説のようです。
青森県の人口
そんな青森県にはおよそ126万人の方が住んでおり、県内の市町村数は合わせて40あります。また青森県の全人口のうち52%が青森市、八戸市、弘前市に住んでいます。
ここで同県の統計分析課が作成した「「平成29年 青森県の人口」について(概要)」を参考に人口推移についても確認しておくと、平成29年の時点で前年よりも15,100人が減少、かつ転出者は25,908人いたことが分かります。人口の自然増減については昭和51年以降減少傾向が続いており、平成12年以降から県外からの転入者数が格段に減っていることや出生数が伸び悩んでいる点が要因であると言えそうです。
ここまでざっくりと青森県の歴史的な成り立ちや人口について見たところで、次章ではいよいよ青森県に多い名字をランキング形式で見ていきます。
青森県に多い名字ランキング100
冒頭で各都道府県によって名字の種類に傾向があることに触れましたが、この章では具体的に青森県に多い名字を1位から100位まで発表します。
(※電話帳にて集計)
100位:大沢
99位:棟方
98位:白戸
97位:高谷
96位:赤坂
95位:後藤
94位:小川
93位:馬場
92位:小山
91位:種市
ソフトバンクのCMでもお馴染みの白戸は青森県だと第98位にランクインしています。また青森県の他には福島県や岩手県といった、東北地方でも太平洋側の都道府県に見られる名字でもあります。
90位:森
89位:長尾
88位:林
87位:小泉
86位:中田
85位:福井
84位:原田
83位:久保田
82位:田沢
81位:杉山
ここでは全国ランキング19位の林が第88位にランクインしました。名字の由来については諸説あり、中臣鎌足が天智天皇より賜ったために生まれたとする説もあれば、桓武天皇の子孫で平の姓を賜った家系が源流であるとする説などがあります。
80位:上野
79位:高田
78位:川口
77位:安田
76位:畑中
75位:桜庭
74位:外崎
73位:大久保
72位:熊谷
71位:西村
全国的にもあまり多くない外崎はここでは第74位にランクインしています。同じくあまり見ない戸ヶ崎という名字と出自が同一であると言われています。清和天皇の子孫であり源姓を賜った足利氏に端を発する名字と言われています。
70位:久保
69位:松崎
68位:横山
67位:渋谷
66位:花田
65位:柴田
64位:蝦名
63位:和田
62位:中野
61位:下山
後述するランキングにも登場する、同じ響きでかつ異なる漢字を持つ蝦名が第64位にランクインしました。実は神奈川県が発祥の地であるとも言われる蝦名は、えび型の台地などが語源になっています。青森県の他にも北海道で見られますが、北海道の名字ランキングでは蝦名は100位以内にはランクインしていません。
60位:福田
59位:秋本
58位:橋本
57位:小田桐
56位:斉藤
55位:野呂
54位:竹内
53位:蛯名
52位:石田
51位:鎌田
先ほど紹介した蝦名と別の漢字が当てられた蛯名が、ここでは第53位にランクインしています。またこれも漢字の違いではありますが、汎用漢字を当てられた方の斉藤が第56位にランクインしています。青森県では同じ響きの異なる漢字を持つ名字が、それぞれ100位以内にランクインしていることも特徴的です。
50位:石岡
49位:山崎
48位:奈良
47位:渡辺
46位:菊池
45位:沢田
44位:前田
43位:長内
42位:鳴海
41位:山内
青森県とは別の都道府県名である奈良が第48位にランクインしています。奈良の由来についてはさまざまなものがあり、中臣鎌足が天智天皇より賜ったことが発祥であるとする説もあれば、平氏や多々良氏の流れであるとする説などもあります。奈良県の名字ランキングでは、そもそも奈良という名字が100位圏外である結果も踏まえると、名字の分布にはユニークな特徴があることがうかがえます。
40位:一戸
39位:田村
38位:長谷川
37位:村上
36位:小林
35位:加藤
34位:千葉
33位:神
32位:山口
31位:小山内
2015年に「マイナビニュース」でなりたい名字ランキング1位に輝いた神が、ここでは第33位にランクインしました。一文字のみの珍しい名字である神には、出雲大社から出た諏訪神家の子孫であるという説や、三輪氏と起源を共にする氏族が神氏を呼称したという説などがあります。
30位:福士
29位:相馬
28位:阿部
27位:古川
26位:対馬
25位:須藤
24位:今
23位:小野
22位:太田
21位:伊藤
神と同じく一文字のみの名字である今が、ここでは第24位にランクインしました。東北地方に多い名字でもある今ですが、岐阜県や熊本県など全国的にも今という地名が分布しています。
20位:川村
19位:藤田
18位:山本
17位:坂本
16位:吉田
15位:山田
14位:鈴木
13位:小笠原
12位:葛西
11位:三浦
小笠原諸島として地名にもなっている小笠原が、ここでは第13位にランクインしました。この小笠原という名字は山梨県の甲斐国中巨摩郡小笠原村が起源であるとされており、小笠原長清の子孫が全国的に散らばりこの名字が分布したとも言われています。
10位:高橋
9位:三上
8位:田中
7位:斎藤
6位:中村
5位:成田
4位:木村
3位:佐々木
2位:佐藤
1位:工藤
青森県の名字ランキング第1位に輝いたのが、漫画の「名探偵コナン」でもお馴染みの工藤という名字でした。この工藤という名字については、中臣鎌足が天智天皇より賜ったことが発祥であるとする説や、藤原南家為憲が木工助に任じられた際に工藤と名乗るようになったとする説などがあります。工藤については全国的にも見られますが、特に東北地方で多く見られる名字になります。
全国的にもよく見る田中や佐藤という名字を抑え、青森県の名字ランキング第1位に輝いたのは、有名ミステリー漫画の主人公の名字にもなっている工藤でした。
青森県の名字では上記のようなランキング結果となりましたが、100位圏内であなたの好きな響きや漢字の名字は見つかったでしょうか。
青森県でよく見られる珍しい名字
ここまで青森県にまつわる名字について紹介しましたが、この章では最後に青森県でよく見られる珍しい名字の一部を紹介しておきます。
・近江屋(おおみや、おうみや)
・平埜(ひらの)
・渥味(あつみ)
・安渡(あんど、やすわたり)
・安堵城(あんどしろ、あんどじょう)
・千年(ちとせ、せんねん)
・津内口(つないぐち)
・猪ノ口(いのぐち、いのくち)
・櫻川(さくらがわ、さくらかわ)
・椚原(くぬぎはら) など
これ以外にも珍しい名字はたくさんあるので、興味のある方は一度インターネットで検索してみてもいいでしょう。またこの中で紹介した名字の方に出会ったことがあるという方は、ある意味ではとても貴重な経験をしているのかもしれません。
まとめ
今回は青森県の名字に焦点を当てて紹介しましたが、青森県以外でも名字の傾向はそれぞれで違います。自分の住んでいる地域やその近隣などでも名字の傾向は全く異なる可能性もあります。時間がある時にでも調べてみると、きっと自分の知らない世界を知る良い機会になるはずです。