自分の名字って、いつ誰が決めたんだろう?

普段は空気のような存在として付き合っている、自分の名字と名前。ふとしたことをきっかけに、名字のルーツや漢字の由来について知りたい、と思ったことはないでしょうか。いったいいつ誰が名字を決め、なぜその漢字で自らを名乗ることになったのか。名前についても、両親はいったいどんな思いを抱いて付けたのか。漢字の由来はちゃんと調べたのだろうか。ひとたび気になり出したら、好奇心は尽きることなく深まってゆくことでしょう。

名字のルーツや漢字の由来

一つ一つの漢字には由来があります。ものの形をルーツとする象形文字、ビジュアル化しづらい物事の状態を表した指事文字、漢字二文字以上の形や意味を組み合わせた会意文字、意味と音それぞれを表す文字を組み合わせた形声文字、日本で作られた国字などに大別されますが、美しく楽しげな意味を持った漢字ばかりではありません。恐ろしく残酷な形や意味を由来とする漢字もたくさんあります。

ではそんな漢字が名字や名前に使われていたらどうでしょう。まずはそんな怖い漢字を紐解いていきたいと思います。

名字や名前に使われる怖い意味の漢字

名前に使える字というのは、実は法律で決められていることをご存知でしょうか。戸籍法施行規則第60条で定められる①常用漢字表に掲げる漢字、②別表第二に掲げる漢字、そして③片仮名又は平仮名とされています。

これに相当する漢字の数は2,999字なのですが、縁起が悪いとか怖い由来の漢字が除かれているわけではありません。この中には実は恐ろしい漢字が含まれているので、名付けの候補として考えた漢字は、由来を調べることをオススメします。

一方、名字は簡単に替えることができないため、法規制などはなく様々な漢字が付けられています。そのため、見たこともないような漢字や、難読の漢字、あるいは縁起が悪い、怖い意味がある漢字が使われているケースがあります。

怖い意味が由来となっている漢字

多くの漢字は古代中国に誕生のルーツがありますが、その由来となっている意味には、人の生き死にを表す恐ろしいものがたいへん多いです。それらの漢字は、戦や侵略・征服・紛争・処刑・埋葬といった生々しい現場を表現しています。さっそく、そんな怖い漢字をご紹介しましょう。

『方』は、木に吊るされる人の死体を象っています。古代中国の風習で厄除けや魔除けとして行われていました。『政』は、相手を力で征服してただす「正」と右手でムチを振るう攵』が合体しており「強制的にただす」という意味があります。

『久』は、死者が起きるように、添え木で支える様を表しているという説があります。

『若』は、髪を振り乱して踊り祈る巫女の姿です。

『取』は、戦争で殺した敵の左耳を切り取ったことを表す会意文字です。

『荒』は、草原に打ち捨てられた死体に、髪が残っている状態を象っています。

『赤』は、処刑される者が下から火に焼かれて血が噴き出し垂れている姿を表しています。

『幸』は、「手かせ」を表した象形文字です。処刑ではなく手かせで済んだということで「幸せ」という意味でになっているという説があります。

『賢』は、古字では下の貝はなく、「目を手で刺す」仕草を象っています。才人の目を潰し神に仕える奴隷としたことが転じて「賢い(かしこい)」となりました。

『道』は、異族の首をはねて持ち道に潜む邪悪な霊を祓う、という意味が込められています。

『憲』は、目を削り取る刑を意味しています。

『残』は、殺人犯の処刑方法として最も残酷だったという、肉を刃物で削ぎ取って骨だけにされた姿。骨と髪が少し残っただけの状態で、なんとも痛い漢字です。

『真』は、旧字では「眞」と書くきますが、ヒは「小刀」、そのほかの部分は「ぶら下げられた生首」で、「行き倒れの死者」を表す象形文字です。

『童』は、刃物で両目を突き刺して盲目にされた男の奴隷を意味しています。

『押』は、亀の甲羅を剥がしている状態を表しています。亀の甲羅は引いて剥がしそうなものですが、中国で「押す」を意味するのは「推」です。「押」は護送とか拘留という意味があるので、なるほどと納得がいきます。

『号』は、生き埋めにされた人の姿。口を大きく開いて泣き、その悲しさからかがみこんだ状態を表しています。

名字や名前に使う可能性がありそうな怖い漢字をセレクトしてみましたがいかがでしたでしょうか。目を潰されたり、耳を削がれたり、首を切られたりと陰惨な戦や処刑の残酷なシーンが並んでしまいました。ほとんどは古代中国という遥か昔が由来ということですから、ここはあまり気にせずに次に進んでいきましょう。

意外に多い!怖い漢字の珍名字

名字の由来とは、主に土地や一族、占い、職業、宗教、民話などをルーツにしたものがあります。多くの名字は地名に由来すると言って間違いないでしょう。良く知られているところでは『藤』が使われている名字は藤原氏を先祖に持つとされていて、藤の一文字と地名の一文字で構成されています。例えば「佐藤」は佐渡・佐野、「伊藤」は伊勢、「加藤」は加賀、「後藤」は肥後・備後、「近藤」は近江、「武藤」は武蔵といった具合です。

このように「藤原氏の子孫」とは、ある種のステータスに感じられることもありますが、中には怖い漢字が使われていたり、少々蔑まされるような意味の名字もあるものです。ここでは珍名の中でちょっと構えてしまうような名字を並べてみました。

『鬼』さんは全国に40人ほどいらっしゃり、そのまま「おに」と読んだり「きさらぎ」と読まれることもあります。「鬼」の字が含まれる名字はたいへん多く、日本にたくさんの鬼伝説があることを証明していると考えていいでしょう。野球漫画『ドカベン』の名キャラクターといえば『岩鬼』。この名字は全国に120人ほどいらしゃいます。地名としても有名な『鬼怒川』さんは東北地方を中心に50人ほどいらっしゃいます。

『鬼』の字が使われる名字の中でも『五鬼助(ごきじょ)』さん、『五鬼上(ごきじょう)』さん、『五鬼継(ごきつぐ)』さんはいずれも関西地方を中心にわずかにいらっしゃいますが、実際に鬼の末裔であるという言い伝えがあります。

鬼の字が入った名字は、現代において怖いというより勇ましくてカッコイイと感じさせてくれるのではないでしょうか。

『霊』さんは、「みたま」と読みます。奈良県にルーツがある名字で全国に約10人いらっしゃいます。

『霊園』さんはそのまま「れいえん」と読みます。千葉県に多くいらっしゃいます。

「霊」の文字がつく名字は意外にも多く、20以上が確認されています。怖いということでいうと『霊場(たまば)』さん、『霊群(たまむら)』さん、『霊界堂(れいかいどう)』さんといった名字が実際には存在しています。

『忌部(いんべ)さんは全国に約220人、主に奈良県・山陰地方から福井県にかけて多くいらっしゃいます。そのルーツは祭祀をつかさどる職業でした。

人間が最も恐れることは死ぬこと。『死』が含まれる名字はあるでしょうか。

『不死川』さんは、「しなずがわ」と読みます。奈良県にごくわずか存在する珍しい名字です。

『不死原』さんは、「ふしはら」または「ふじわら」と読みます。

いずれも死を否定しているわけですから、怖いどころか長寿を象徴する縁起のいい名字と言っていいでしょう。

『苦』の字が使われる名字もいくつか存在します。「くるしい」ではなく「にがい」という意味で使われることの方が多く、例えば『苦瓜(にがうり)』さん、『苦木(にがき)』さん、『苦竹(にがたけ)』さんといったような名字が存在します。『苦水(くみず)』さん、『苦瀬(くるせ)』さんは、少々怖い名字ということになるでしょうか。

『魔』の字がつく名字としては『破魔(はま)』さん、『降魔(ごうま)』さんが確認できています。いずれもごく少数の方が受け継いでいる名字です。『破魔』は神社で求める魔除けの破魔矢からわかるとおり悪魔を打ち破ることなので、パワーを持ったいい名字。『降魔』は岡山に存在する名字で由来は定かではありませんが、そのままの意味だとするとちょっと怖い名字ですね。

『瀬屑』さんは「せくず」と読み、『屑』の字が使われている名字としては唯一です。

『馬鹿』さんは「ましか」と読みます。

『牛糞』さんは、「うしくそ」「こごえ」「うぐそ」と読みます。

『禿』さんは、「とく」「かむろ」と読むことが多いのですが、ごくまれに「はげ」と読むことがあります。

読みの響きが怖い名字

漢字を見れば特に驚くことはないのですが、読みで聞くとちょっとびっくりしてしまう名字もあります。そんな珍名を集めてみました。

『大波加』さんは「おはか」さんと読みます。漢字を見ればすぐに「お」にアクセントがくることがわかります。

『保智』さんは、「ほち」「やすとも」と読むこともありますが「ぼち」と読む方もいます。「智」という漢字が「神様に通じている」という意味ですので、とてもいい名字です。「ぼち」という響きでは他にも『暮地岩(ぼちいわ)』さん、『暮地本(ぼちもと)』さんという方がいらっしゃいます。

『ようかい』さんは、7つの名字が確認できました。『容貝』『用皆』『用階』『要海』『要堺』『養会』『養會』です。文字を見れば「妖怪」とはまったく結びつきません。

『えんま』さんとくれば、冥界の主である閻魔大王がひらめくことでしょう。さすがに『閻魔』さんはいませんが、3つの名字があります。『円間』『円馬』『塩満』です。

『目倉(めくら)さんは、北海道を中心にごくわずかにいらっしゃいます。もしこの名字の方に会う機会がありましたら、「め」に強めのアクセントで呼ぶようにしたいものです。

偏見や差別に導かれるデリケートさも兼ね備えているのが名字です。自分以外の名字に対しては相手を尊重する気持ちを忘れずに、慎重に接していきたいものです。

自分の名字が解き明かすルーツの世界に目を向けましょう

名字は一人一人の顔の一部。自分で選ぶことはできず、遠いご先祖様から代々受け継いできた贈り物のようなものです。珍名・奇名・希少名など、どんな名字であってもその背景には深い意味が込められていて、大切にしていかなければなりません。

また、名字をヒントにそのルーツを探れば、ご先祖様が暮らした土地や職業などが見えてくるかもしれません。自分のルーツを知るということは、人生と心が豊かになります。名字が繋いだ糸を手繰って家系図を広げてゆき、ご先祖様に出会う旅路をスタートさせてはいかがでしょうか。

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